この人たちの音と出会った時は、いろんな面で衝撃的で新鮮だった。
CDショップに流れていた曲に惹かれ、“Now Playing” のCDを指して、「コレください」 と買ったCDが、Del Amitriの 『Some Other Sucker's Parade』 だった。
まず、てっきりアメリカのバンドだと思っていたら、実はScotland出身だったこと。
そして、こんなムサ苦しい(失礼!)おっさん風のルックスからは、とても想像できないなんともポップで爽やかな音に戸惑いすらあった。
その前の95年のアルバム 『Twisted』 の存在も知っていた。
でも、まさかこんな音楽の人たちだとは思いもせず、ジャケだけ見ておよそHR/HM系なんだろうなと思い込んでいた。
だってコレ、かなりジャケで損してるな~と、音を聴いてつくづく思ったものだった。
特に最初に買った 『Some Other Sucker's Parade』、いくらなんでもコレはちょっとなぁ・・・。


Scotlandと言えば、やっぱり真っ先に思い浮かぶのが、BMX Bandits、Teenage Fanclubを中心としたGlasgow相関図。
Del Amitriも同じGlasgow出身と言うことをあとで知り、驚いたものだった。
彼らはUSでの人気が定着していて、TOP40なんかにもたくさんチャート・インしている。
そういうバック・グラウンドからも、USのバンドというイメージがあったのだった。
そう、人を外見で判断してはいけない・・・でも、だいたいはルックスやジャケの感じと音というのは、結びつくものがあるのは事実。
そんなモミアゲと髭がジョリジョリのJustin CurrieとIain Harvieのふたりからスタートしたバンドは、その後メンバーも定着して5人組となり、今では少しすっきりとした感じにイメチェンしている。(笑)
今回取り上げるアルバムは、98年リリースのシングル曲を中心としたベスト・アルバム 『Hatful Of Rain』。
もう、全17曲秀作ぞろいのベスト中のベストである。どの曲を聴いても、どこから聴いても素晴らしい。
Scotlandというか、UKというか、いわゆるあの辺の雰囲気はそこはかとなく漂うのだが、USギター・ポップ路線の方が濃い。
個人的に表現するなら、UKの香り溢れるFountains Of Wayneの逆パターンと言ったところだろうか・・・。
オープニングの未発表曲 「Cry To Be Found」 から、ストリングスを巧みに起用した、大人っぽい極上のポップスが流れる。
FMのヘヴィ・ローテーションにより、日本でもプチ・ヒットしたM-2 「Roll To Me」 は、落ち着いたポップ・サウンドが多いこのアルバムの中では弾けた曲で、サビのカスタネットの音が可愛い。
M-3 「Kiss This Thing Goodbye」 やM-5 「Nothing Ever Happens」 のようなブルーズ・ハープやバンジョーやアコーディオンを取り入れた、アメリカン・ルーツ・サウンドっぽい仕上がりの曲とか、Gin Blossoms辺りのサウンドを思わせる、M-4 「Not Where It's At」 やM-6 「Always The Last To Know」 なんかを聴くと、やはりUSの香りがする。
しかし、アレンジの所々にXTC辺りのポップ・センスが伺われ、USのアーティストには出せない味も感じる。
M-11 「Driving With The Brakes On」 は、とてもアグレッシヴなバラードで、感情表現豊かなVo.と厚みのあるハーモニーがじっくりと聴かせる。
ラストを飾る曲は、“Official Team Scotland Song World Cup '98” というサブ・タイトルが付けられた 「Don't Come Home Too Soon」。
Vo.のJustinはScotlandのフットボール・チームのサポーターだそうで、この曲はW杯のオフィシャル・アルバムにも収録された。
応援歌なのに意表をつく、ストリングスのアレンジが綺麗なしっとりとしたバラード。
しかもその歌詞は、チームの実情をしっかりと捉え、見つめている。
“負けて帰ってくることは最初から分かっているさ。それでも俺たちは気にしないよ。だけど、あんまり早く帰ってくんなよ。”
という何とも皮肉な内容だ。でも、ただ単に盛り上る内容のお祭りソング的な曲ではなく、こういう好きなチームへの愛情の溢れる曲が書けるというのが素晴らしい。
いつもよりちょっと早く帰宅できた今日、久しぶりに部屋で少しだけ音楽を聴く時間があった。
このアルバムを選んで聴いてみたら、彼らの落ち着いたポップな音の中に、春の足音を見つけた感じがした。
まだまだ寒い毎日だが、なんか温かい気持ちになった。