without A trace

favorite stuff...
music, trip, cinema, art, and so on.

『パトリックは1.5歳』 @EU Film Days 2010

2010-06-25 | cinema & drama
   
「EU Film Days 2010」 で観たもうひとつの作品は、『パトリックは1.5歳』 という2008年のスウェーデン映画。
スウェーデン映画は、これが初めてだった。

新しい生活を夢見て郊外に越してきたゲイカップル。養子として1歳半の赤ちゃんを迎えるはずが、やってきたのはゲイ嫌いで犯罪歴のある15歳の少年だった――。
デリケートな題材を見事に描いた、各国で評判の話題作。(EU Film Days 2010公式サイトより)


日本の環境からは少し遠いテーマだが、セクシュアル・マイノリティが社会や文化において順応して行くことの難しさを、分かり易くユーモアを交えて伝えている。
新居を構え、養子を迎えようとする妻ゴランと夫スヴェン。条件は整っていても、ふたりの環境がネックとなってなかなか養子が決定しなかった。
そんなある日、養子が見つかったというセンターからの手紙に大喜びするふたり。手紙には “Patrik 1,5” と書かれていた。
子供部屋をおもちゃやぬいぐるみでいっぱいにし、パトリックがやってくる日までワクワクするふたり。しかし当日やってきたのは、15歳の不良少年だったのだから、さあ大変。
センターからの手紙はタイプ・ミスだったのだが、最悪な思い出しかない更生施設に戻されることを拒絶するパトリックを、ゴランは引き取ることに決めたものの、スヴェンは猛反対。パトリックを巡ってふたりの関係は気まずくなり、ついにスヴェンは家を出て行ってしまう。
その時のゴランのセリフ、「ここを出て行くのは君だよ、スヴェン。パトリックじゃない」。ふたりの愛より、ひとりの人間を守ったゴラン。このセリフにはジーンとさせられた。
それから、ゴランとパトリックの共同生活が始まり、悪ガキだったパトリックもだんだん明るくなって行き、ガーデニングやスケボーの技術を活かして、パトリックの存在が近所の人々の偏見を徐々に和らげて行くのだった。
やがてパトリックの計らいでスヴェンが戻ってくることになるのだが、結局全てパトリックがいたからこそのこと。
もし本当に1歳半の赤ちゃんが来ていたら、子育てに追われる日々の中で、本心は子供はあまり好きではないスヴェンとの仲はギクシャクして行くだけで、きっとこんな環境は築けなかっただろう。
日に日に仲良くなって行くゴランとパトリック、本当の親子のように見えて微笑ましかった。でもそんな時、パトリックに良い養子先が見つかったという連絡がきてしまう。果たしてパトリックはどうなる?どうする?(結末は敢えて伏せておく)
いろんな面で考えさせられることや共感できる部分が多々あり、観て良かったと思わせてくれるいい作品だった。

 この鋭い目つきがだんだん優しくなって行く




『湖のほとりで』 @EU Film Days 2010

2010-06-21 | cinema & drama

「EU Film Days 2010」 で観た2作目は、日本でも公開された2007年のイタリア映画 『湖のほとりで』。
先日のイタリア映画祭にも一緒に行った、イタリア好きの同僚を誘って観に行った。

のどかな小さな村はずれにある湖のほとりで発見された美少女アンナの死体。捜査が進むにつれ、住民たちの人間関係や家族のあり方が明らかになっていく――。
誰もが皆、“人に言えない悩み” を抱えて生きていた。(EU Film Days 2010公式サイトより)


舞台は恐らくスイスやオーストリアの国境に近い、イタリア北部の美しい村。
その小さな村で起こった殺人事件の話なのだが、謎を解きながら犯人を追って行くといういわゆるミステリー/サスペンスものとはちょっと違い、人間関係や人物像、様々な形の愛を描きながらやがて意外な犯人に辿り着く。
発見されたアンナの死体には争った形跡が見られなかったため、顔見知りの犯行とされ、捜査が始まる。小さな村ゆえ、住民の誰もが皆顔見知り。捜査の指揮を取るのは、この村に越してきたばかりのベテラン警部サンツィオ。しかし、村をよく知る部下と共に進めて行く捜査は難航する。
そんな中、次々と浮かび上がってくる住民たちの人間関係や家族関係。サンツィオは、そこから紐解いて事件解決に導いて行く。そして話が進むにつれ、なぜアンナは殺されなくてはならなかったのかということが明らかになって行く。
その辺の展開は、なかなか面白かったのだが、ゆっくりと話が進んで行き、人々の感情の描写を丁寧に描いているわりには、いまひとつ感情移入することができなかった。
派手さのないとても静かな作品だったが、やはりこの作品はミステリーではなく、ちょっと重たいヒューマン・ドラマだと思った。

 渋い親父デカ、彼もある悩みを抱えていた




『小さな泥棒たち』 @EU Film Days 2010

2010-06-20 | cinema & drama


ある日、何かイベントでもないかなぁと思ってアクセスした、オーストリア大使館のHPで見つけた 「EU Film Days 2010」。
EU加盟27ヶ国中、22ヶ国の作品が上映される一種の映画祭。しかも500円で観れるのだ。今回初めて知ったのだが、今年で8回目らしい。
イギリスの出品作 『スラムドッグ$ミリオネア』、アイルランドの 『Once ダブリンの街角で』 など、よく知られた作品もあったが、日本初公開の作品もたくさんあり、なかなか興味深い作品が並ぶ中、3作品観ることができた。
最初に観たのは、2009年のラトヴィアとオーストリアの合作 『小さな泥棒たち』。

父の失業でローンが返済できなくなった家族を家から追い出した銀行に仕返ししようと、5歳の少年ロビスと姉のルイーザは強盗を企てる。
無敵な2人に不可能はない! 世界各地のこども映画祭で好評を得た作品。(EU Film Days 2010公式サイトより)


とっても愉快でほのぼのとした楽しい作品で、真っ先に思い出したのが 『ホーム・アローン』。ドジでマヌケな二人組が、子供にまんまと出し抜かれるというお話。
この物語のおマヌケ二人は銀行の警備員、そして彼らの上司である支店長もなかなかのマヌケっぷりを見せてくれた。
この支店長役の俳優が、私の大好きなオーストリアのドラマ 『REX』 のシュトッキンガー警部補役のカール・マルコヴィックスだったのだ。彼がアップになった時、思わず “シュトッキーだ!” と声が出そうになった。オーストリア人なのにラトヴィア語が話せるなんて凄いなぁ・・・と感心。
この作品の主役である子供、特にロビス役の男の子がおしゃまで可愛くて、大いに笑わせてくれた。実際には有り得ない展開が続くのだが、たかがお子ちゃま向けでは終わらず、十分楽しめた。
テンポよく場面展開して行き、ベタなギャグでクスクスっと笑わせてくれるシーンが満載の、単純だがとてもよく出来た心温まる作品だった。

 威張っているが、相当おマヌケな支店長





★「EU Film Days 2010」公式サイトはこちら
  東京会場は6月20日(日) が最終日だが、その後福岡と佐賀で開催される。
★ラトヴィア ; バルト海に面する北東ヨーロッパの共和国で、1991年にソ連から独立を回復した。


"The Redwalls news flash" pt.17

2010-06-15 | music : special
 

ずーっとずっとなしのつぶてだった、The Redwalls(レッドウォールズ)。
去年の10月に “Where are the Barens? Do you know?”(バレン兄弟はどこにいる? 君たち知ってる?)という謎めいたメッセージをマイスペに残し、それに対しての様々なコメントにも応答なしだった彼ら。
この度、やっとと言うか、ついにと言うか、新しい音源の一部がUPされた。
Andrew Langer(アンドリュー・ランガー)が抜けたことろまではここで伝えていたが、実はその後、ドラムスのRob Jensen(ロブ・ジェンセン)も抜け、結局Logan(ローガン)とJunstin(ジャスティン)の兄弟だけになってしまったのだった。一体何が彼らにあったのかは定かではないが、兄弟ふたり仲良しというのは、どこかのビッグ・マウス兄弟バンドとは正反対だ。
バレン兄弟が生み出す音こそThe Redwallsの音なので、このふたりが健在なら私的には安心。今のところ正式メンバーの発表はまだないが、レコーディング風景の写真にはギタリストの姿があった。
2分弱のまだまだ未完成の音源だが、ピアノとギターが心地良いリズムを刻む、軽快なブルーズ・ロック。完成作に期待したい!


★「Shoot from the Hip」


Keane / Night Train

2010-06-09 | music : favorite


音楽ネタが少なくなっている昨今のこのブログだが、久しぶりに新譜を購入。
Keane(キーン)が昨年のツアーの合間に制作した(いつの間にって感じだ)、8曲入りのEP 『Night Train』。
このタイトル、国内盤では 『夜行列車』 というそのまんまのベタな和訳なのだが、実はKeaneは相当の鉄チャン。オフィシャル・サイトでのドラムスのRichard(リチャード)のフォト・ブログでは、以前から列車や車内のツアー写真がたくさんあったのだが、このEPはジャケットのイラストはもちろん、ブックレットの写真も電車づくし。でも、曲の内容は電車とは全く関係ない。
今回、このEPがリリースされるというニュースを、オフィで知った時に驚いたことが2点ある。ひとつはアフリカ・ソマリア出身のラッパーK'NAAN(ケイ・ナーン)とのコラボ、もうひとつはなんとYMOの名曲 『以心伝心』 のカヴァー。
K'NAANについては全く知らないので、曲を聴いてみないことにはどんな仕上がりになるのか想像もつかなかった。
『以心伝心』 は、サビの部分のみうろ覚えという程度だったので、YouTubeで聴き直した。一昨年のLive Earthなどライヴでは、英詞のコーラス部分以外はインストでプレイしているが、元々は日本語詞が入っている。果たしてその部分はどうなるのか?と思っていたら、Tigarah(ティガラ)というL.A.を拠点に活動している、日本女性ラッパーが歌うということがわかった。と言っても、そのTigarahもこの時初めて知った名前だった・・・。

オープニングは、ライヴでメンバーがステージに登場する時に流れるSEとして使用されている曲 「House Lights」。
ティンパニの音がズーンと響き、ピコピコサウンドと壮大なシンセのインストで幕が開ける。
その流れでダイナミックなイントロで始まるM-2 「Back In Time」 だが、Tomの歌に入った瞬間、優しい音になる。いつ聴いてもどの曲でも美しく透き通っているTomちんの声の後ろで、イントロと同じフレーズのシンセのアレンジが、後半になるとかなりダイナミックにとどろく。
M-2 「Stop For A Minute」 が、出来映えドキドキのラッパーK'NAANとのコラボ曲。“Oh~Oh~” とTomちんの高らかなおたけびから始まり、メロディもgood。ミドル・テンポで、ハンド・クラップが入って乗りもいい。
K'NAANのパートに入っても、最初はメロディに乗って普通に歌っているので、何ら違和感はない。サビでTomとデュエットし、2番ではTomとパートが入れ替わる。なかなかいい感じだ。そして、CメロでK'NAANのラップ登場。その後ろで、イントロのTomちんのおたけびが響く。息もピッタリで、こんなに合うとは思ってもいなかった。もう、すっかりお気に入りだ。
M-3 「Clear Skies」 は、ハンド・クラッピングとアコギのサウンドが映え、ノスタルジックなメロディ・ラインが印象的なナンバー。
さて、いよいよM-4 「Ishin Denshin (You've Got To Help Yourself)」 の始まり始まり~。アレンジは殆んど原曲どおり。この曲はサビ・メロからの始まるのだが、Keaneヴァージョンもポップで爽やかですっごくいい! 
となると、果たして日本語部分はどうか・・・。う~ん.....良くもなく悪くもなくと言った感じかな。Tigarahの声は、ちょっと舌ったらずな甘えた声で、Tomちんのパートで感じた爽やな青空が一変して、とろ~りしたシロップのようなまろやかさになるというような感覚。
YMOのように、日本語詞の部分はなしにして、インストにしても良かったかも。でも、敢えて日本語を入れるというのも、Keaneの新しいチャレンジなのかも・・・。
YMOを好きで聴いているのはキーボードのTimで、Tomは今回この曲をやるまで聴いていなかったとインタビューで言っていたが、何はともあれ、日本の曲がこんな形で発表されるというのはとても嬉しいこと。しかもUKチャート1位だし。
そのTimが、オーソドックスなエレクトロ・ロックM-6 「Your Love」 でVo.をとっている。曲を作るのはたいていTimだが、いつもコーラスばかりなので、メインVo.を聴いたのは初めて。Tomの抜けるようなVo.とはまたひと味違って、TimのVo.もなかなかいい。後半メロディ・ラインが変化して行って歌い上げるところなんて、とっても甘い声を聴かせてくれる。
初めて聴いた時はぶったまげ、やがて “おいおい” と突っ込みたくなったのが、M-7 「Looking Back」。「ロッキーのテーマ」 のほぼまんまの、あのトランペットのメロディが流れてきたのだ。まあ、最初の部分が同じなだけなのだが、インパクト強すぎ。
途中でもその 「ロッキーのテーマ」 が流れてくるので、ついついそっちに耳が行ってしまう。この曲もK'NAANとのコラボで、ラップが入っているのに流れるようなメロディで、とっても気持ちいい曲だ。
最後は、しっとりとしたナンバーM-8 「My Shadow 」 で締めくくる。この曲は、3rdアルバム 『Perfect Symmetry』 の国内盤ボートラとして収録されていた曲なので、お馴染みの人もいるだろう。これまでのKeaneにいちばん近い、ある意味最もKeaneらしいとも言えるピアノ・バラードで、「Bedshaped」 や 「A Bad Dream」 を彷彿させる。


★アルバムとはひと味違う、アコースティック・セッションの 「Stop For A Minute」 Feat. K'NAAN。