18世紀、パリ。
当時の都会は悪臭に満ちていた。
その悪臭に満ちた都会に、異常に嗅覚の優れた赤ん坊が生まれた。
母に産み捨てられた赤ん坊は、ジャン・バディスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)と名づけられ
まるで奴隷のように育てられる。
彼は愛を知らず、愛を求めず、ただひたすらに「永遠の香り」を求めるのだった。
フランス革命前のフランス。
知ることのない世界に、私たちは華やかな想像をしてしまう。
しかし、当時は入浴の習慣もなく、排泄物は道に投げ捨てられていたそうだ。
道を歩いていても、いつ排泄物が降ってくるか分からない状況で
その災難から淑女を守るために紳士のマントが流行し、ぬかるんだ道をドレスのすそを汚さずに歩くためにハイヒールが作られたのだそうだ。
そして、その悪臭や、体臭を消すために高貴な身分の人たちの間で香水がもてはやされたのだそうだ。
悪臭のなかには全ての生き物の生と死や、生活や、そんなものがごった煮になって混じっていたのだろう。
グルヌイユの優れた嗅覚は、その全てをかぎ分けてしまう。
彼にとって嗅覚だけが情報の全て、世間とのつながりの全てなのだ。
映像は、当時の混沌とした空気とともに、グルヌイユが感じているであろう「匂い」を伝えてくれる。
グルヌイユが鼻で感じてる世界を、私たちは目と耳で体験する。
それは、時にグロテスクで清浄で甘美で、あまりの濃厚さにめまいがするほどだ。
嗅覚だけが全てのグルヌイユにとって、自分に体臭がないというのは、自分の存在する意味がない、というのと同じことだったのだろう。
「究極の香り」を美少女の体臭に見つけてしまった彼の悲劇が始まる。
グルヌイユのとった行動は、とても人間のすることと思えない非道なものなのだが、
不思議なことに、怒りや嫌悪を感じないのだ。
あまりにも一つの道を追求しすぎてしまった男の「究極の純粋さ」への恐れと哀れみの感情が
胸の中にあふれてくるばかりだ。
『この香水の力の前に、世界はひれ伏す。
しかし、香水は彼を愛し愛される存在にする力はなかった。』
もし、彼が普通の青年だったら愛を語り合ったかもしれない少女達を
彼は「香り」にして閉じ込めてしまった。
「香り」という、はかないものに愛を求めた男は「香り」をまとって消えてしまうしかなかったのかもしれない。
人殺しの物語、というよりも
「香り」というはかないものに、愛と永遠を求めてしまった男の悲劇、のような気がした。
当時の都会は悪臭に満ちていた。
その悪臭に満ちた都会に、異常に嗅覚の優れた赤ん坊が生まれた。
母に産み捨てられた赤ん坊は、ジャン・バディスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)と名づけられ
まるで奴隷のように育てられる。
彼は愛を知らず、愛を求めず、ただひたすらに「永遠の香り」を求めるのだった。
フランス革命前のフランス。
知ることのない世界に、私たちは華やかな想像をしてしまう。
しかし、当時は入浴の習慣もなく、排泄物は道に投げ捨てられていたそうだ。
道を歩いていても、いつ排泄物が降ってくるか分からない状況で
その災難から淑女を守るために紳士のマントが流行し、ぬかるんだ道をドレスのすそを汚さずに歩くためにハイヒールが作られたのだそうだ。
そして、その悪臭や、体臭を消すために高貴な身分の人たちの間で香水がもてはやされたのだそうだ。
悪臭のなかには全ての生き物の生と死や、生活や、そんなものがごった煮になって混じっていたのだろう。
グルヌイユの優れた嗅覚は、その全てをかぎ分けてしまう。
彼にとって嗅覚だけが情報の全て、世間とのつながりの全てなのだ。
映像は、当時の混沌とした空気とともに、グルヌイユが感じているであろう「匂い」を伝えてくれる。
グルヌイユが鼻で感じてる世界を、私たちは目と耳で体験する。
それは、時にグロテスクで清浄で甘美で、あまりの濃厚さにめまいがするほどだ。
嗅覚だけが全てのグルヌイユにとって、自分に体臭がないというのは、自分の存在する意味がない、というのと同じことだったのだろう。
「究極の香り」を美少女の体臭に見つけてしまった彼の悲劇が始まる。
グルヌイユのとった行動は、とても人間のすることと思えない非道なものなのだが、
不思議なことに、怒りや嫌悪を感じないのだ。
あまりにも一つの道を追求しすぎてしまった男の「究極の純粋さ」への恐れと哀れみの感情が
胸の中にあふれてくるばかりだ。
『この香水の力の前に、世界はひれ伏す。
しかし、香水は彼を愛し愛される存在にする力はなかった。』
もし、彼が普通の青年だったら愛を語り合ったかもしれない少女達を
彼は「香り」にして閉じ込めてしまった。
「香り」という、はかないものに愛を求めた男は「香り」をまとって消えてしまうしかなかったのかもしれない。
人殺しの物語、というよりも
「香り」というはかないものに、愛と永遠を求めてしまった男の悲劇、のような気がした。
久しぶりに、公開してすぐに観にいってきました。
なかなか見ごたえのある作品でした。
>「香り」という、はかないものに愛を求めた男は「香り」をまとって消えてしまうしかなかったのかもしれない。
この部分はどう捉えていいか、わかりませんでした。
そうなってしまうしかなかった。。。確かにそうかもしれません。
ジョニーのリバティーンもそうですが、
私、やっぱり、こういう中世ヨーロッパのお話って好きなんです!
この作品も、少々重い部分はありましたが、
世界観にどっぷり浸ってきました♪
受け捉え方がある作品だとは思うのですが・・・。
それゆえに、いろんな方のレビューを読むのが
非常に興味深くて、参考になります。
チョコさんの記事、さすがに素晴らしいと思いました
私、この作品、今年のベスト10に入る気配が
あります(笑)。
芸術的で美しく、なおかつこれだけ嗅覚に訴える
作品も初めて観た気がしました。
ヨーロッパ古典映画のようなレトロな描写も巧い。
すごい映画だったと思います。
私は原作を読んでから映画を鑑賞しました。
グルヌイユが創作の人物であることは分かっていても、彼が何者だったのかを読後も鑑賞後も考えてしまいます。
で。。。感想が支離滅裂になりましたがTBさせて下さいね
手前勝手な理由で沢山の女性を殺したグルヌイユですが、そもそも罪の意識すらなく。。。ムムム、まったく奇怪な物語でした。
冒頭の魚市場のシーンからして思いっきりおぞましかたのですが、
逆にあれで肝が据わったというか、
どっぷりと独特の世界に浸れたような気がします。
だから、巷で話題のあのシーンも、とてもあたり前のような感じで観てしまいました。
中世ヨーロッパのお話。
私も好きですねぇ♪
臭かったんだろうな、汚かったんだろうな、と思いながらも、いつもその世界に浸ってしまいます。
早くも今年のベスト10入りですか!!
ああ~でも分かるような気がします。
私もずっと公開が待ち遠しくて、待ちきれなくて、
とうとう待ってる間に原作まで読んでしまいました。
道徳とか宗教とか良心とか、そんなものをすっ飛ばして、ただ私たちの感覚に訴えてきたような映画でした。
大きな声で言いにくいのですが(苦笑)
かなり好きな映画です。
私も原作を読んでからの観賞になりました。
原作のほうはさすがにグルヌイユの心の動きのようなものにも触れていたので、少し人間らしさが感じられたような気がします。
でも、映画も原作もどちらも素晴らしかったと思います。
『匂い』というものが文字や映像で伝わるのだということを実感させられました。
グルヌイユが何者だったのか、それは誰にも答えられそうもないですね。。。
睦月さんの所でもコメントしたのですが、
昔から本屋さんで、この本には手が伸びては置く、
ということを繰り返してきました。
非常にひき付けられる要素テンコ盛りですね♪
ちょっと劇場に足を運ぶのが今は難しいので、
取りあえず原作を読んでみますね。
早く映像から漂う香りを嗅ぎたいな。。
それにしても皆さん、ホントに素晴らしいレビューですね☆
これはまだ観てないうちから好みだと分かる、
数少ない映画のひとつに間違いありません。
「香水~ある人殺しの物語」
これでもうノックアウトっていう感じです(笑)
今までなぜ買って読まなかったのか後悔しましたが、
禁断の書というイメージだったんですよね。。
でももう解禁です(笑)
私は、この映画がすごく気になっていて、そこから原作にたどりつきました。
だから映画化されなかったら、たぶん原作を読むことはなかったと思います。
たしかに、なぜか買いにくい、ですね。
「禁断の書」(笑)そんな感じです。
うまい表現ですねぇ~ Reiさんってば。
普通、原作と映画の間にはギャップがあるから、
違和感を感じたりするのですが、今回は全くその違和感がなかったですね。
どちらからも、「匂い」が伝わってきましたよ。
ぜひ、両方とも見てください♪
ワタシもなんかダルくって・・・。
んな話はおいといて(汗)
ハイヒールって脚長効果を狙って作られたもんじゃないんですね~。
勉強になりました(^^;
この映画かなり面白かったぁ~
感触まで感じちゃうから
五感刺激されまくりで観ちゃったもん。
そそ、人殺しちゃってるのに
不思議とヤな感じがしないのよね?!
週末もう一回イク?って思ってたりします♪
娘さんの風邪がうつっちゃったのでしょうか~。
今頃インフルエンザが流行っているようで
うちも、インフルエンザではないけど娘とダンナが
絶不調です。
別に、病気になりたいわけじゃないけど、
誰の風邪も移らない私って、どんだけ丈夫なんでしょうね。
たまには労わってもらいたいってだけのことなんですけどね(爆)
さて、「パフューム」ですね。
普通、罪もないのに殺されちゃってかわいそう。。という目線で見そうなものなのに
明らかに私は犯人であるグルヌイユに感情移入してたようです。
そんな自分に気がついて、ちょっと戸惑ったりもしました(苦笑)
凡人は天才に対して恐れと憧れを抱いているのかも知れませんね。
それがどんなに異常なことだとしても。