誘導のコツは相手をためらわせることにあるようです。
Adbe という名の会社があります。
この単語は英和辞典に出ていません。
隅田川は広辞苑に載っても、石神井川は載りません。
創業者が住んでいた家の裏を流れていたクリークの名前では、辞書には載らないでしょう。
川の名前は知られなくても、パソコンを使う人はほとんど見かけている、真っ黒な窓に赤いマークのついたメッセージを送ってくる、あの会社です。
私たちは、パソコンでの文と絵の処理に、知らないうちにその会社に手を貸してもらっています。
すぐれたシステムがあれば、それに乗って巧みに動き回る人が現れます。
その人が新幹線のような乗り物に、どういう契約でどれくらいの運賃を払っているのかはわかりませんが、いつも改札口の中にいて待ち構えている大きな顔には、思わず足踏みをさせられます。
足踏みのあとは錯覚、[今すぐアップデート] と書かれたボタンに、マウスポインターが誘い込まれるというしかけです。
誘い込みに足踏みをさせるなら、誘いこまれないためには、黙って通り過ぎればよいのです。
またいつか、ということはあっても、そのときすぐには追いかけてきませんから。