海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

大江・岩波沖縄戦裁判控訴審2

2008-06-26 15:56:12 | 「集団自決」(強制集団死)
 昨日の大江・岩波沖縄戦裁判に関する記事が、沖縄タイムスと琉球新報に載っている。原告側が証人申請した秦郁彦氏は、裁判官によって却下されている。宮平秀幸氏に関しては、「新証言」として書類提出はされているようだが、宮平氏自身の証人申請はなされていない。
 仮に宮平氏が証人として法廷に出ていれば、『小説新潮』の本田靖春氏の取材に対する発言、ビデオドキュメント『戦争を教えてください』における発言、『座間味村史・下巻』における母親の証言と「新証言」との食い違い、「新証言」自体が持つ矛盾などを被告側弁護士から厳しく追及されただろう。宮平氏本人が断ったのか、あるいは原告側弁護団が出さない方がいい、と判断したのか。いずれにしろ、藤岡信勝氏や秦郁彦氏、中村黎氏らが座間味島で〃偶然〃発見し、大騒ぎした新証言者を原告側は法廷に出すことができなかったわけだ。座間味島の「新証言」なるものを原告側がどのような形にまとめて論理展開しているか、遠からず控訴理由書や陳述書の全文が出るはずだから、じっくりと読んでみたい。
 原告側は他に教科書検定の評価や屋嘉比島の「集団自決」なども争点として出している。〇六年度の教科書検定の評価が争点とされていることに関しては、少し注意が必要な気がする。新聞記事だけでは即断できないが、原告側は政治宣伝の材料として活用するために仕掛けを行っているのではないか。「〇六年の教科書検定意見は撤回されていない。今後も撤回を求める」と沖縄から主張すれば、原告側を利するような形で争点が設定されているように見える。
 一審判決において、〇六年の検定意見をめぐる問題が、名誉毀損か否かを判断するうえで、それほど決定的な要素だったのか。原告側からすれば、この裁判を起こした目的からしても、〇六年の検定意見は生きている、と裁判所に判断を出させたいのだろう。そのために沖縄の「検定意見撤回」の声を逆利用しようとしているのではないか。そこら辺の小ずるい仕掛けについては、注意して分析したい。
 証人尋問がないぶん裁判の進行は早まるようで、琉球新報は次回弁論の九月九日で結審すると書いている。次回はぜひ大阪高裁に傍聴に行きたいと思う。

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5 コメント

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Unknown (ni0615)
2008-06-27 09:45:07
今朝にましたら、大江・岩波支援サイトにも傍聴記がでてましたね。
http://okinawasen.web5.jp/html/kousai/2008_06_24_bouchou.html
どちらの人数が多いかは、わたしも別の事件で傍聴しましたが、分かりにくいものです。
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お礼 (目取真)
2008-06-27 10:27:10
ご教示有り難うございました。
大阪を中心に支援者のみなさんが頑張っているのは心強い限りです。
それにしても原告側代理人が34人から6人に激減したのには驚きました。
稲田朋美氏も自己保身に走ったのでしょう。
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傍聴感想 (京の京太郎)
2008-06-27 18:35:35
控訴審第1回口頭弁論、原告側弁護団席の2列目、原告梅沢氏の左側に女性の弁護士が座っており、稲田氏と思っていましたが、間違いでしたか?京都在住なもので大阪の国会議員の顔のポスターもあまり見たことがないので女性の原告側弁護士と言えば稲田氏と思いこんでいましたが・・・。大阪の方々の顔を知っておられる関西沖縄文庫のkk氏の感想でも岩波側支援者は2割多くて3割という感想でしたが・・。京都の反天皇制運動の方々や関西靖国訴訟のメンバー、真宗大谷派の方々の顔も見ませんでしたし大多数が原告側と思っていました。情報が違っておりましたら、本当に申し訳ないです。
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女性弁護士 (ni0615)
2008-06-30 08:56:07
京の京太郎さん
はじめまして
>女性の原告側弁護士と言えば稲田氏と思いこんでいましたが・・・
その方は木地晴子サンという人ではありませんか。第1審でも口頭弁論読み上げをしてましたし、徳永さんと街宣行動などもしているようです。
ttp://jp.epochtimes.com/jp/2006/02/html/d95343.html
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女性弁護士の名前 (京の京太郎)
2008-07-02 09:24:43
有り難うございます。木地さんという方でしたか。彼女は一審時、要旨の陳述時に沖縄の地名を間違えて読み上げておられて、沖縄への基本的な理解が不十分な方だったことを覚えていますが、私自身の不勉強をもっと反省しなければと思いました。15年ぐらい前に2度、渡嘉敷島には調査に行きましたが、海上挺進隊だった方々が立てた碑の馬鹿でかさと曾野綾子氏の碑文内容に言葉を失ったことと、「集団自決跡地」という渡嘉敷村立?の碑(これもデカイ)の後の雑木林の中に小さく質素なコンクリート?製の白玉と刻まれた碑が横倒しにされたままうち捨てられていたことを覚えています。沖縄戦の犠牲者を本当に心に刻むとはどういうことなのか、今一度反省の上に勉強し直したいと思います。
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