夢と希望と

そして力と意志と覚悟があるなら、きっと何でも出来る。

えっちなロール

2007-05-31 | 中身
 今更申し上げるような事でも無いのかも知れませんけれど、私は憎み憎まれ殴り殴られ、斬って斬られて殺して殺されるというようなロールは得意です。これはロールの技量が優れているという事では無く、単に私の性格に適合しているが故に「やりやすい」という意味です。
 逆に、色恋や情事のロールは極めて苦手な部類になります。特に初対面の御相手と、こういう系統のロールを行う事は至難を極めます。
 つまり闘争心は初対面であろうと自分の意志で自由に発生させる事が可能なのですが、恋慕の情を意図的に生じさせる事が出来ない、という事ですね。

 人それぞれに得手不得手という物が存在しますから、自分を卑下する心積もりはありません。ただ、自分には出来ない事をやってのける人というのは私にとって敬意の対象であり、また苦手だからと諦めるというのも美学に反する事でもあり……何とかしたいと思う今日この頃です。

殺る気満々を絵に描いたような……

2007-05-23 | 中身
 自慢ではありませんが、私は音楽関係にはとことん疎いという自負があります。
楽譜さえ満足に読めませんし、ショパンとモーツァルトの区別も出来ませんし、和田アキ子とTUBEのボーカルと富士サファリパークのCMの歌は全部同一人物の声に聞こえますし、兎にも角にも音楽を語る資格なんて無い事は重々承知しています。
 しかし。
 そんな私でも「大乱闘スマッシュブラザーズX」の新作に参加するメンツは凄いというか、異常だと思うのです。現在公表されているだけでも

本田 晃弘(コナミデジタルエンタテインメント)
Metal Gear Solid 4 Guns Of The Patriots / Metal Gear Solid Portable OPS
飯吉 新
ポケモン不思議のダンジョン / beatmania II DX
太田 あすか(任天堂)
Newスーパーマリオブラザーズ / キャッチ!タッチ!ヨッシー!
若井 淑(任天堂)
ピクミンシリーズ / スターフォックスシリーズ
福田 淳(グラスホッパー・マニファクチュア)
キラー7 / コンタクト
戸高 一生(任天堂)
どうぶつの森シリーズ / ヨッシーシリーズ
尾崎 景吾(ゲームアーツ)
プロジェクト シルフィード
おおくま けんいち
メルティランサーシリーズ / Pia キャロットへようこそ!! 3
伊藤 賢治
ロマンシング・サガシリーズ / カルドセプト サーガ
山本 健誌(任天堂)
スーパーメトロイド / メトロイドプライムシリーズ
石坂 健太郎(ハル研究所)
葉山 宏治
超兄貴 / サルゲッチュ2
近藤 浩治(任天堂)
スーパーマリオシリーズ / ゼルダの伝説シリーズ
岩崎 正明
MOTHER3 / チェルノブ(メガドライブ)
高田 雅史(グラスホッパー・マニファクチュア)
キラー7 / ゴッドハンド
甲田 雅人
モンスターハンター / デビルメイクライ
なるけ みちこ
ワイルドアームズシリーズ
濱野 美奈子(任天堂)
メトロイドフュージョン / もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング
桜庭 統
スターオーシャンシリーズ / ヴァルキリープロファイルシリーズ / バテンカイトス / 黄金の太陽シリーズ / マリオゴルフ&テニスシリーズ
岩垂 徳行
グランディアシリーズ
吉冨 亮二(任天堂)
メイドインワリオ
桃井 聖司
メテオス / ヘラクレスの栄光III~神々の沈黙~
酒井 省吾(ハル研究所)
大乱闘スマッシュブラザーズDX /MOTHER3
景山 将太
ルミナス アーク
西 隆宏(ゲームアーツ)
グランディアシリーズ / プロジェクト シルフィード
ササキ トモコ(東京ハイジ)
ナイツ
峰岸 透(任天堂)
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
須戸 敏之(任天堂)
しゃべる!DSお料理ナビ / みんなで投票チャンネル
増子 司
女神転生シリーズ / マジカルバケーション
福田 康文
かまいたちの夜2
光田 康典(プロキオン・スタジオ)
クロノ・トリガー / ゼノギアス
下村 陽子
ストリートファイターII / キングダムハーツシリーズ
辻横 由佳
ファイアーエムブレムシリーズ
高濱 祐輔(ターゲット・エンタテインメント)
デジタルピンボールシリーズ
伊良波 穣(ゲームアーツ)
シルフィードシリーズ
古代 祐三(エインシャント)
アクトレイザー / イース / イースII / ベア・ナックル / ドラゴンスレイヤーⅣ

 という普通ありえない面々ですし、メインテーマはファイナルファンタジーでも有名な植松 伸夫。
 ゲームミュージックの愛好者なら、このリストを見ただけで予約確定という程の布陣です。あとはエンディング曲にすぎやまこういちを起用すれば完璧ではないでしょうか。
 発売日が極めて楽しみです。個人的には是非、ソリッドスネークで背後からピカチュウの首を絞めたいなぁ、と。

獣の戯れ言シリーズ

2007-05-21 | 中身
 傍若無人を自負する私ですが、自分が歩んできた道に後悔が全く無いとは言えません。ああしていれば良かった、こうしていればもっと素敵だった等と埒もない思考に歯噛みする事は良くあります。
 しかし、そんなモノは所詮結果論であり仮定の域を出ないという事も、同時に理解しています。
 そしてたとえ何度繰り返したとしても、きっと私は同じ行動を選択したであろう、と確信してもいます。
 その時その瞬間、己の矜持を曲げずに拓いた道ならば、結果がどのようなモノであろうと問題ありません。敵が生じたならば闘えば良いし、友が生じたならば誇れば良い。もしも進退窮まり矢尽き刀折れ爪が剥がれ牙が砕けようと、それが自分の闘争の結果ならば受け入れて死ぬだけの話です。弱ければ負ける、負ければ喰われて死ぬ、そんな事は至極当然であり一々嘆くような事ではありませんから。

 結局、何を申し上げたいのかと言えば。
 全てを諦めて手に入れる精神の平穏よりも、自我を突き詰めた先にある野垂れ死にの方が、私は好きだという事です。

ゲーム検定

2007-05-16 | 中身
http://ent.nikkeibp.co.jp/ent/game/index2.html
 ……なるモノを紹介されましたので、やってみました。
結果は以下の通り。

+++ ゲーム検定 成績発表 +++

あなたの総合得点は98点  全国平均 52点

全国順位(5月16日 3時現在)
1310位(160545人中)

--ジャンル別得点表------------
            0_________50__________100%
ハードウェア       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ゲームシステム&テクニック■■■■■■■■■■■■■■■■■■
キャラクター       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ビジネス         ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
雑学           ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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--講評---------------------
あなたは「ゲームの神様」
テレビゲーム誕生期から現在にいたるまで、さらにはハード、ソフトの両面について、幅広くカバーした知識は完璧!これでゲームプレーのテニックも備え持っていれば、もはや無敵の存在と言えよう。
貴方がもっとも詳しいゲームのジャンル:
   ハードウェア
   キャラクター
   ビジネス
   雑学
貴方がもっとも詳しいゲームの年代:
   80年代後半までのゲーム誕生期
   90年代前半を中心としたゲーム発展期
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 結果として間違えたのは二問ですが、勘で答えて正解だった問題が10問くらいありましたし……どうにも未熟ですね。
 皆様も死ぬほど暇なら、試してみては如何でしょうか。

眦を決して その3

2007-05-12 | 中身
 流全次郎と神竜剛次、二人の決闘は両者の肉体のみならず精神をも衝突させ、交錯する拳と刃の狭間に両者の意志を煌めかていきます。
「俺が間違っている等と生意気な事をぬかしおって……貴様のようなふやけた男に人間の本質など解りはせん!!」
 実体験を基底とする自身の人間論を否定された神竜剛次は、流全次郎を「ふやけた男」と称します。厳しくも温かな父親と師に恵まれ、そして今も肉親以上に信頼し合う仲間と共に生きる流全次郎。そんな環境は、ぬるま湯でしか無いと断じたのです。これに対して流全次郎は叫びました。
「なるほど、お前の体験した事はまさに地獄だ。しかしだからといって、そこで見た物が人間の本質とは言えない!確かに人間にはブタのような面があるだろう。人間は愚劣で貪欲で卑劣な生き物だ。だが人間はブタではない!」
「ブタとどう違うと言うのだ!?」
「ブタは自分がブタである事に気がつかない!人間は自分が人間である事を知る事が出来る!知ろうと努力する事も出来る!だから人間は希望を抱く事が出来るんだ!!」
「希望――?」
「そうだ!人間はいつか、平等で平和な社会を作る事が出来るという希望だ!誰が支配する事もなく支配される事もなく、争う事もない、自由な社会を作る事が出来るという希望だ……!」
「貴様の甘ったるい理想主義には反吐が出るわ!希望を抱く事の出来る人間が、いったいどれだけ居ると言うのだ!?俺はこの世の90%以上を占める、大衆という生き物について言っているのだっ!奴らはブタだっ!百年経っても千年待ってもブタのままだっ!!この世にはほんの僅かの人間と、圧倒的に大多数のブタがいるだけだ!」
 自らが無知である事を知る事が知を得る為の第一歩であるように、自分自身と真っ直ぐ向き合う姿勢こそが人間を人間たらしめる第一歩なのだという主張、しかしこれも神竜剛次の心を動かしません。そんな事は、既に神竜剛次も理解しているのですから。その上で、自らを厳しく律する事の出来る人間は全体の10%に満たないのだから、残りの9割以上はブタと変わらない、と言っているのです。人間の歴史を振り返るなら、大衆というモノに対する認識において、それは真実に近いと私も考えます。
「奴らを見ろっ!人より良い大学に入ろうと受験勉強に青春を浪費している!それは人より良い会社に入って出世する為なのだ!そんなものが人生の真実かっ!!大学を卒業する迄には人より少しでも多くのエサを取る事しか考えぬ、利己的で強欲で卑劣なブタに仕上がっているという訳だ!そんな連中に希望をかけられるかっ!!故に人格的に優れた人間がブタどもに秩序を与えてやり、間違いを起こさぬよう指導してやるのだ!!」
 最高学府たる大学は、学問を修める事こそが目的である筈ですけれど……現実には神竜剛次の言う通り、単なる学歴取得機関となり果てているモノが殆どです。大学に入学する者の内、純粋に学問を求める人間がどれだけ存在するでしょうか。大多数は目的とする人生のレールに乗る為か、或いは単に惰性で進学するかでしかないような現状では、彼の言葉に私は有効な反論を行う事が出来ません。
それでも、流全次郎は退きませんでした。
「……それがお前の理想社会か!?」
「ブタどもに汚された社会を建て直し、高貴な人間性を回復した理想社会に作り上げるにはそれしかない!!」
「神竜、お前は人間に絶望している。そんな人間に社会を語る資格は無い!!」
「なに!?」
「人が子を産み子に希望をかけるのは、人間は無限に素晴らしいものになる事が出来るという希望があるからだ!!お前のやり方は、その希望を否定し、人間を鎖で繋ぐ事だ!希望を実現するのは難しい!しかし、その希望を否定する者とは徹底的に闘う!その強い意志こそが歴史を動かして来たんだ!」
「ふ……青臭い事を……」
「神竜、人間に絶望する事は、自分自身に絶望する事なんだぞ!自分に絶望しながらよく生きて来られたな!」
「重ね重ね生意気な事をっ!!」
 古今東西を問わず権力者達が最も怖れるモノがあります。
 それは、暴力です。特に若者達の、捨て身の暴力。
 権力者は飴と鞭を駆使して社会システムを構築します。民衆を家畜のように管理しつつ、誰もがある程度の幸せを得ているという幻想を与え、家畜である事を意識させないように騙す事こそが、自身の権勢を維持する為には必要です。そして民衆というモノは理想よりも保身を優先する性質がありますから、今現在得ている僅かな権益を失うリスクと引き替えにしてまで権力に楯突こうとはしない物。市民に王は討てないのです。
 王を討つのは奴隷、即ち持たざる者、若者です。失う物を持たぬが故の捨て身の暴力の前には、いかなる社会システムも崩壊するしかない事は、幾多の歴史が証明しています。そしてその若者達を駆り立てるモノこそが、理想であり希望。
 流全次郎は、それを信じます。人間の可能性に賭け、明日に望みを託すのです。
 神竜剛次は、ただ自分自身を信じます。可能性という曖昧なものよりも、確実な己の能力で明日を拓こうと。
 確固たる信条と自身の流儀が存在するならば、馴れ合いや妥協は極めて困難です。二人の主張は平行線を辿りますが、肉体的な戦闘の技量においては神竜剛次が一枚上手でした。流全次郎を決定的な窮地に追い込み、語りかけます。
「今までお前は自分を犠牲にし仲間の命も犠牲にし、俺と影の総理を相手に闘ってきた!そんな事に意味があったのか!?」
「当然だ……」
「お前は負けるんだぞ!このまま命を落とすんだぞ!それでも意味があったと言えるか!?」
「俺にはまだ大勢の仲間がいる!仲間の輪は更に広がる!俺が倒れても仲間達は闘いを続けるだろう!最後の勝利は俺達のものだ!!そして真の仲間を作るのは、闘いを通じてのみ可能だったのだ!」
 己のみを頼りとする神竜剛次にとって、敗北や相討ちには意味がありません。自らが勝ち残り、生き残り、他ならぬ我が手で理想世界を構築してこそ全ての行動は報われます。そんな彼にとって流全次郎の返答は、青臭く夢見がちな戯言であると同時に……どこか、憧憬を禁じ得ないモノでもありました。
「なるほど、命も惜しくないと言うのだな!では死ぬが良い!!」
 そう叫んで必殺の一太刀を繰り出しますが、微かな迷いは剣先に顕れてしまいました。流全次郎を文字通り一刀両断する筈の真向唐竹割は、手錠の鎖を断ち斬り顔面に大きな裂傷を与えましたが、死に至らしめる事は出来なかったのです。
「どうだ流、手錠の鎖が切れて自由になった気持ちは……鎖で両手が縛られたまま死なせるのは哀れだと思って情けをかけてやったのだ。有り難く思うがいい。」
 これまで敵に情けをかける事も、闘いの最中に迷う事も全く無かった神竜剛次の言葉とは思えませんが、自身の内に敵である流全次郎への憧れが生じている事を認める事は出来ません。自らを叱咤し意志を統制し、間髪入れず渾身の一閃を放ちます。
 それは、左胸を狙った神速の突き。シンプルながら人間を絶命させる為には極めて効果的な技術です。その刺突は狙い違わず流全次郎を貫いた……かに、見えました。
「流全次郎、仕留めたりい――っ!」
 死闘の結末を確信して、勝ち誇る神竜剛次。肉体の闘争で勝利を収めたからには、残る闘争……精神においても相手を屈服させようと迫ります。胸を刺し貫いた刃を捻り苦痛を与えながら、先程の言葉を撤回させようと。
「さあ言ってみろ!もう死ぬというこの時になっても、人間に希望を抱いていると言えるかっ!」
「ど、どんな死に方をしようと、お、俺の考えは変わらない!お、俺は希望をもっている……人間は、い、いつか必ず平等で公正で平和な社会を作る事が出来るだろう……だ、誰もが支配したり支配される事の無い社会を……」
「強情な奴め……これこそ虚仮の一念というやつか…!」
 死の淵にあっても希望を失わない流全次郎の言葉に、優勢であった筈の神竜剛次は気圧されました。相手の腕が、自らの刃を掴む事にさえ気が付けない程に。
「神竜、お前の負けだ……」
「なに!?」
「俺は、お前の凄まじい刀の動きを封じる手を発見したのだ!それがこれなのだ!残念ながら、お前の刀の動きは、俺の拳法技で封じられるような物では無かった。だが、たった一つ、残っていた。我と我が身で封じる道が……」
 そう、流全次郎は刺される刹那、完全に回避する事は望まず、致命傷を避ける事だけを念頭に動いていたのです。いかに神竜剛次の剣技が圧倒的でも、勝利を確信した瞬間ならば必ず隙が生じると……その可能性に賭け、そして彼は賭けに勝ちました。
「皮を切らせて肉を斬り、肉を斬らせて骨を断ち、骨を断たせて命を奪う――!南条五郎直伝・八極拳猛虎硬爬山!!」
 互いに徒手空拳ならば、拳法の使い手である流全次郎には及びません。神竜剛次は八極拳の絶招により肋骨を砕かれ、その肋骨により心肺を貫かれ、仰向けに倒れました。

 二人の肉体的な決闘は、こうして流全次郎の勝利により幕を閉じるのですが、まだ完全な終わりではありません。地に背を預け天を見上げる神竜剛次は、大の字になったまま流全次郎に言葉を向けます。
「俺の上着の釦を外して胸を開けてくれ……早くしろ!俺はもう、そう長くは保たんぞ……」
「血が……じ、神竜お前、怪我をしていたのかっ!どうも動きがおかしいと思ったら……」
 言われるままに上着を開いた流全次郎が目にした物は、普通なら動く事さえ難しい程の深手。しかし神竜剛次という男は、怪我を言い訳にして自らの敗北を取り繕うような甘ったれた精神の持ち主ではありません。
「俺が負けたのはこの怪我の所為では無い!天が俺に味方しなかったからだ……それよりも、晒布の間に短刀が入っている…」
「短刀……!」
「神竜、どうしてこれを使わなかったんだ……?俺が最後にお前目掛けて突っ込んだ時、お前がこれを出していたら、俺はやられていた筈だ。」
 そう。そこには、一振りの短刀がありました。勝利を確信して隙が出来ていたのは流全次郎も同じ事であり、これを使われていたならば、猛虎硬爬山を繰り出した腕は宙を舞い、返す刀で確実に息の根を止められていた筈です。
「本当に、そうすれば良かったな……」
「お前は俺に勝ちを譲ったのかっ!い、いったいどうして!?」
「流……俺とお前は同じカードの裏表だったのかも知れんな……お前は光を見つめ続け、俺は闇を見つめ続けた。闇とは人間に対する絶望であり、光とは人間に対する希望だ。どこまでも人間に対する希望を失わぬ、お前のその強さが俺を圧倒したのかも知れぬ。」
「じ、神竜……」
「それは、俺の母親が自殺するのに使った短刀だ。だから、それは影の総理を刺す為の短刀なのだ。流、それをお前にやろう……」
「……!」
「その意味は解るな……」
 自分の能力だけを信じ、誰かに希望を託すという行為を惰弱と断じて生きて来た神竜剛次が、流全次郎に短刀と遺志を託す。これこそが彼の敗北宣言であり、決闘の終結でした。直後に神竜剛次は絶命しますが、その表情は凛々しく満ち足りた物。思いのままに生き、闘い、そして敗れて死ぬという……私の理想とも言える生涯を全うしたのです。
 そして勝者である流全次郎は、自らに問いかけます。呼吸も食事も思考さえも、勝者にのみ許された特権です。
「神竜、お前の見つめ続けた闇は、どれだけ深かった事か……人間の本質については、神竜の方が正しいのかも知れない。だが、俺は絶望よりも希望を選んだのだ。生きる力のある限りは希望を持ち続けようと心に決めたのだ。神竜は最後の土壇場で俺に勝ちを譲る事によって、希望に賭けようとしたのではなかったか……そうだったのなら、もっと早く別の出会い方をしていれば……神竜は人間の醜さゆえに汚れ果てたこの社会を建て直そうと真剣に考えていたのだ。二人で協力して、この社会を支配している巨大な腐敗した権力を倒す事が出来たのではなかったか……だが、俺と神竜は闘い合う以外に互いを理解し合う道は無かった。何れにせよ、神竜の分も俺は闘わねばならぬ――!」
 この思考の帰結には、私も大いに頷きます。勝者は敗者を喰らい、自分が喰らわれるその日まで闘い生きなければなりません。
 神竜剛次と決闘を行った流全次郎は、闘い、勝ち、そして決しました。ならば、それで良いのです。敗者を悼む暇があるのなら、敗者を己の糧として全力で生きる事こそ勝者の責務です。それでこそ、敗れ喰われた者も報われましょう。少なくとも私なら、一億リットルの涙を流されるよりも、私を糧に強く生きて欲しいと勝者に望みます。


 と、いう訳で。
 3回に渡って紹介させて頂いたこの決闘、私の筆力が絶望的に不足している為に随分と冗長になってしまいましたけれど、好みの要素だけで構成されていると申し上げても過言では無い程に素敵です。もしも機会がありましたならば、是非御一読下さいませ。

 決闘は読んで字の如く、決する闘い。何かを決める為に闘うという意味に於いては、日々是決闘と呼ぶ事も可能です。
 誰にでも必ず敗北と死は訪れるモノですけれど、だからこそ……その時に笑って死にたいと願いますし、愛する人の糧となりたいと、望んでやみません。

眦を決して その2

2007-05-08 | 中身
 二人の死闘は当初、神竜剛次優勢に始まりました。
 神竜剛次は剣の達人であり、その腕前は途轍もなく凄まじい物です。鏡の上に敷いた和紙一枚を難なく斬ってのける切っ先の見切りを発揮して、流全次郎を着実に追い詰めて行きます。
「お前の技は俺に見切られてしまっている!お前は捕らえられたネズミ同然、俺の刀で一寸刻み五分試し、いたぶり殺されていくのだ!!哀れだなあ流……!お前はこうしてズタズタになって死んで行くというのに、お前が命を張ってまで助けてきてやった生徒達は、恩知らずにもお前を見捨てるばかりか、お前を厄介者扱いしているようじゃないか!」
 対する流全次郎は太極拳と八極拳の使い手です。彼もまた達人と呼ぶに値する使い手ですが、男の誓いの証として両腕を手錠で封じている為に手技に制限があり、これまで数回神竜剛次とは直接対決を行い、尽く敗北して来ました。しかし辛うじて致命傷を避けながら、神竜剛次の言葉に対して叫びます。
「俺は他人の為に闘ってきたのでは無い!全て自分の為に闘ってきたのだ!!人を虐げ支配する人間を倒す事は、俺自身の主義を貫く事だからだ!!」
 私はこの漫画を初めて読んだのは4歳くらいだった筈ですが、当時はかなり衝撃を受けました。自分の為では無く他人の為に何かをする、それこそが「良い事」なのだと親からは教えられていましたから。
 しかし、考えてみれば当然の事で……「他人の為」というのも結局は自らの心を満たす為でしかありません。それを自覚して、甘ったるい感傷に浸らず真正面から受け止め、歩む。それは今でも私の指針の一つです。
「うるわしいじゃないか!お前を裏切ってばかりいるあの生徒達を、まだ庇おうと言うのか!?」
「彼等を裏切り者とは呼びたくない!我々が闘い続けていれば、彼等もいつか必ず闘いに戻ってくれるだろう!」
 流全次郎の仲間を信じる意志。それに応じる事も無く気まずそうに目を伏せる生徒達を指し示し、神竜剛次は嘲笑しました。
「あの連中が闘うだとっ!?流っ!貴様にはまだ解らんのか!!奴らはブタだっ!!ブタが本当に闘うと信じているのかっ!!奴らは人より多くエサを喰おうと人を押し退けたりするが、信義や理想の為に闘ったりはしない!!奴らは欲深で下劣なブタなのだっ!!大衆はブタだっ!そのブタどもによってこの社会は汚されてしまった。高貴な人間の為の理想社会に建て直すのだっ!!」
 これに負けじと、流全次郎が返します。
「何が理想社会だっ!!お前のする事は、世の人々を虐げ冷酷に支配する事ではないかっ!!」
 神竜剛次は、鼻で笑います。
「ブタに人間の言葉をかけてやっても無駄だ!ブタに必要なのは鞭だ!鞭で叩いて判らせてやるのだっ!」
「許せんっ!その言葉っ!!」
 神竜剛次の言葉は正論ですが、これに激昂した流全次郎は突進し、その蹴りは幸運にも腹をかすめる事になります。普段ならば問題にもならない浅手ですが、実は神竜剛次は直前に腹を刺されており、その傷が開いてしまう事に。気取られないように間合いを取り仕切り直す神竜剛次に、流全次郎は毅然と言い放ちました。
「大衆はブタだ等と、人間を侮辱する権利は誰にも無い!」
「俺にはある……何故なら、俺はこの目で地獄を見たからだ…!」
「人間に対してそれ程絶望的な考えを抱くようになるまでに、いったいどんな地獄を見たというのだ!?」
 開いた傷口がもたらす激痛を鎮める為、神竜剛次には時間が必要でした。その時間稼ぎの意味もあり、彼は対峙したまま自らの過去を語り始めます。
「良かろう……貴様の冥途の土産に俺がどんな地獄を見たか話してやろう。お前達が薄々察しているように、俺の真の父親は影の総理と呼ばれているあの男だ!俺の母親には結婚を誓った恋人がいた。それなのに影の総理は母親の両親に圧力をかけ、自分の物にしてしまった。それも正式な妻としてでは無い。あの男にはそのような女が十人以上もいたようだ。その中で、あの男との間に男児を産んだ女七人が、あの広大な敷地内に一緒に住まわされた。影の総理は七人の女に総数十三人の男児の内、最も強い者を自分の跡取りにすると宣言した。という事は、十三人の男児は互いに争い合えという事だ。」
「自分の子供達を争い合わせよう等とは惨い事を……!」
 流全次郎は憤りますが、しかし影の総理の行いは至極当然の事。この世界は、生きるという事は……突き詰めたならば闘い奪い合う事でしかありません。自らの強大な権力を引き継ぐに相応しいか否かを測る為には、この宣言は極めて有効な手法です。
「十三人の中で俺は最年少だった。六歳になるまでは闘いに加わる事は免除されていた。だが、それまで俺は他の十二人の異母兄弟の醜い争いを毎日見せつけられて育ったのだ。全員本当に命懸けで争っていた。俺の母の他の六人の母親達も自分の息子を影の総理の跡取りにしようと血眼になった。考えてもみるが良い!十三人の男児と七人の母親が一つの屋敷内に住んで命懸けで争い合う姿を……!夜も昼も油断は出来ない!廊下を迂闊に歩く事も出来ない!誰かが廊下の角で待ち伏せしているかも知れないからな!俺が六歳になるまでに三人が死に、五人が再起不能の大怪我をして屋敷から出ていった!」
「む、酷すぎる……」
 これまで自らの過去を一切語らなかった神竜剛次の話に対して、流全次郎は聴き入り、踏み込むチャンスを逃します。この辺りの甘さが彼の弱点であり、同時に魅力なのですけれど。
「俺の母は俺が六歳になったら闘いに巻き込まれ、殺されるに違いないと怖れていた。そして俺も子供心に確信していた。争いは上から二番目の兄が、ほぼ勝利をおさめていた。六歳になる一ヶ月前、俺は何週間も鋭く研ぎ上げた果物ナイフを隠し持って……兄が学校に出かけるのを玄関の外で待ち伏せしていた。そして兄が玄関から出てくる所を、俺は果物ナイフを持って体当たりした。果物ナイフが兄の腹に突き刺さって行く時の感触を俺は未だに忘れられない!俺は六歳になる前に、母親が違うとはいえ実の兄を殺したのだ!その時兄は十六歳……地獄だった……」
「跡取りの座を巡って兄弟同士殺し合いまでして争うのを散々見せつけられた挙げ句……まさに地獄としか言い様がない……」
 流全次郎の仲間が益体もない呟きを発しますが、当時の神竜剛次少年の行動は実に理に適った物です。
 そもそも非合法極まりない存在である影の総理、その跡取りになろうというのに、定められたルールを後生大事に遵守する等という姿勢は、後継者として不適格。私ならば六歳に満たなかろうとイの一番に抹殺してしまう所ですが、それを怠り慢心するようでは刺されて死んでも当然というもの。
「兄を刺した後、仰天して我を忘れている母親の手を引いて、俺は屋敷から逃げ出した。その日に母親の昔の恋人だった男の元に逃げる事は前から決まっていたのだ。男は俺達を暖かく迎えてくれた。俺が兄を刺した事を嘆き悲しみ、俺が報復を受ける事を怖れて半狂乱になっていた母親を宥め労ってくれた……しかし、俺は全然後悔していなかった!!影の総理の跡取りの座が欲しいばかりに争い合う兄達は、反吐が出る程醜かった!!刺したのが当然だと今も信じている!!」
「神竜のこの非情さは、そんな幼い頃に培われたのか……!」
 刺さなければ自分が消された筈ですし、これも理に適った言葉です。自らの信条に則って行動したのだから後悔もしていないし、慰めなんて不要。これこそ毅然とした態度というものではないでしょうか。
「母親の恋人だった男は教師で、中央から遠く離れた地方の学校に勤めていた。俺達三人は地方の街でひっそりと暮らした。男は俺を可愛がってくれた。俺は生まれて初めて母親が嬉しそうに笑う顔を見た。俺の今までの人生の中で、心安まる日々を過ごしたのはその時だけだ。幸せそうな母親の姿を俺は今でも思い浮かべる事が出来る。今になって考えれば、母親は捕らえられる事を覚悟していたに違いない。だからこそ、束の間の幸せを思い切り味わいたかったのだろう。その男は貧しかったが、善良で優しかった。俺が母親以外の人間を愛したのは、後にも先にもその男だけだった。後で裏切られるとも知らず……! 俺達の幸せな日々も永くは続かなかった。三ヶ月もたたぬ内に居所を発見され、三人は捕らえられてしまった!影の総理は母に対する罰として、俺を母親の手から奪い神竜家に預けた。母親は屋敷内に閉じこめられ、男はどこかに連れていかれた。影の総理は男を殺しはしない、いつか会わせてやると言った。母親は信じた。それしか母を支えるものは無かったからだ。母親は男が必ず救いに来てくれると信じるようになった。ひたむきに男の愛を信じ、それに全てを傾けていた。だが、子供と愛する男を奪われ、閉じこめられている内に、母親の神経は弱っていった……。俺は時々神竜家を脱出しては母の元に忍び込む事を繰り返した。会うたびに母親の精神状態がおかしくなっていくのが、子供心にも解った。これも地獄だった……」
「そんな目に遭わされれば、誰でもおかしくなる……!」
 影の総理は極めて巧妙です。自分に背いた女への仕置きとして、まず心の支えを奪う。そして完全には壊れないように、微かな希望を与える。人間は、ほんの僅かな希望があれば、それを頼りに生きて行ける物だからです。しかし、その希望に全てを託してしまうと人間は視野が狭窄して精神が非常に脆くなってしまいます。
「そしてある日……影の総理は言った!あの男に会わせてやると…!信じられぬ思いで、屋敷内の一室に行った。確かに男は居た!だが以前の男とはまるで変わってしまっていた!金のかかった贅沢な身なりをし、脂ぎった顔をしていた!貧しいが善良で優しかった男の面影は無かった!傍らに若い女を連れていた!!訝しむ俺達に男は言った……影の総理のおかげで有名私立学園の教頭に抜擢してもらった。地方の教師とは比較にならぬ地位と収入を手に入れたと……そして女を新しい妻だと紹介した!母親の恋人だった男は言った。自分は影の総理に感謝していると……俺達母子も影の総理に感謝して仕えるべきだと……!男は影の総理に力で脅され、同時に世俗的な地位や収入という甘いエサを差し出され、俺の母親を裏切ったのだ!!闘う意志も無く下劣な欲に目が眩み、男だけを頼りにしていた俺の母親を……!これが、影の総理の俺の母親に対する決定的な罰だったのだ!!母親の愛した男がどんなに下らぬ人間なのか、いや人間の本質がどんなに卑しい物なのか見せつけたのだ!!母親は部屋を飛び出した。俺は慌てて後を追った。だが間に合わなかった……母親は短刀で胸を突いていた…………地獄だった……」
 男をただ殺すだけでは、想いは永遠に美しいまま、胸に刻まれる事になるでしょう。死者というモノは、無限に美化出来る存在でもあります。そしてその想い出を礎として歩み続ける事も可能だった筈です。
 けれど影の総理は、そんな事は許しませんでした。
 この罰は、人が人に与え得る最大級の仕打ちだと、私は考えます。全てを捧げ愛した存在を作り替え、想い出さえも踏み躙らせる……それを可能とする力を持っていると示し畏怖させる直接的な効能以上に、生きてきた時間そのものを否定するのですから。
「兄を刺した事で俺を高く評価した影の総理は、他の兄弟達と離して特別の英才教育を施す為に、俺をそのまま神竜家に預けて育てさせた。そして人間と社会について様々な事を学ぶにつれて、俺は、あの地獄の日々に人間の本質を掴んでいた事を知った!醜く争う兄達の姿!俺の母親を裏切った浅ましい男の姿!それこそが人間の本質なのだと……!!」
「それは違う!」
「人間は下らぬ欲望の為に醜く争い合うのだ!!人間は力に屈し易いものだ!!浅ましい欲望に高貴な人間性などわけなく放棄するものだ!!それが大衆の真の姿だっ!大衆はブタだっ!!」
「違うっ!神竜、お前は間違っている!!」
「この愚か者がっ!貴様もブタの群の中でくたばるが良いっ!」
 神竜剛次の人間に対する考察は、正鵠を射ていると私は考えます。ただ生きているだけで人間は素晴らしいとか、ありのままの存在そのものに価値があるとか、そういう人の心に砂糖を擦り込むようなフレーズが昨今では幅を利かせていますけれど、笑止の極み。常に自身を磨き研鑽する意志を持たぬなら、人もミジンコも同じようなモノ。命なんていう物は、それ自体は人も他の動植物も等しく無価値であり、そこに価値を見出すのはあくまでも主観の問題です。そして主観は甘やかせば甘やかす程に、醜さを許容する方向に傾くモノですから、常に自身で律する必要があります。それを放棄するならば、神竜剛次が言うように、人はブタと同じという事です。
 流全次郎は、あくまでも神竜剛次の言葉に抗います。仲間を信頼するに留まらず、「大衆」さえも信じようとするのが流全次郎という男の流儀だからです。彼自身、「大衆」には裏切られてばかりです。どれだけ流全次郎が力を尽くし誠意を示しても、少しでも自身に危害が及びそうになれば保身に走り、平然と彼を売り渡す……そんな仕打ちばかりを受けてきました。
 が、しかし。彼は他者からの酬いが欲しいから大衆を信じた訳ではありません。信じたいから、それが自身の信念だから、信じたのです。
 特筆すべき点として、神竜剛次が「貴様もブタの群の中でくたばるが良い」という言葉を使っています。
 つまり流全次郎という男は神竜剛次にとって、青臭い綺麗事を並べる目障りな敵ですけれど、それでもブタでは無いのです。これまでの闘いにおいて流全次郎は下らぬ欲望の為に争うのでは無く、力にも屈さず、浅ましい欲望を跳ね退けて人間性を示し続けて来たのですから。

 ブタではない、対等の人間と認めるが故に、だからこそ闘う。二人の決闘は、いよいよ佳境へと突入します。

眦を決して その1

2007-05-05 | 中身
 万里の記事に触発され、私も心に残る一戦を紹介してみようと思い立ちました。素敵な闘いというのは数多く存在しますけれど、どれか一つを選ぶなら……やはり「男組」における流全次郎と神竜剛次の決闘しかありません。
 「男組」という物語について本気で語り出すと私は三日三晩でも喋り続けてしまいますが、まず今回は二人が決闘に至る過程を御説明させて頂きます。

 戦時中の物資横流しにより莫大な冨を築き上げ、政治家達を金と暴力で支配する「影の総理」と呼ばれる男。流全次郎は影の総理に謀殺された父親の闘いを引き継ぎ真に平等な社会を実現する為に、そして神竜剛次は実の父親である影の総理を打ち倒し理想社会を構築する為に、それぞれ死力を尽くします。
 ちなみに影の総理がどんな人間であるか、神竜剛次と交わされた以下のやり取りに集約されていると言えましょう。
「お前が何をしても社会問題にならぬよう、お前の父や山際に警察を抑える力を与えたのも、お前にどれ程の事が出来るか力を試す為だった。その結果、僅かな期間に関東の全学園を支配下に置き、一般大衆をお前の意のままに動かす教育システムを作り上げた。お前の能力はただ事では無い、100点満点の試験で200点以上も取ったも同じ事。試験で100点を取る男は有能で役に立つ。しかし200点以上取るような男は、優れ過ぎていて危険だ。このまま放っておけば、お前は学園から社会に力を向け、ワシの権力の基盤である今の社会を、関東の全学園と同様に根こそぎひっくり返そうとするだろう。それはワシの権力の座を危うくする事になる。ワシの権力の座を脅かす者に対して取る道は一つ。その者を滅ぼすだけ。剛次、お前はあまりに優れ過ぎている事が命取りになった。」
「私は、自分の力をあなたを倒す為に使う気はありません!!一般大衆のブタどもに秩序を与え、このドブのように汚れ果て、乱れ果てた社会を、理想社会に作り替える為に使うつもりなのです!!」
「剛次、それだ。それがいかんのだ。理想などというものが一番いかん。大衆はブタのままで良い。ドブ泥のような社会に放し飼いにしておいて、エサにつられて、どんな事でも聞くようにしておく事が、権力を保つコツだ。ワシが影の総理などと呼ばれ巨大な力を保っていられるのも、この社会がドブ沼に浸かっているからだ。お前のやり方では、ドブ沼をさらってワシの力を奪う事になる。だからお前を許してはおけん。」
 ……つまり素晴らしく、率直な大人という事です。
 この影の総理を打倒する唯一の手段と互いの命を賭けて、流全次郎と神竜剛次は雌雄を決すべく闘います。場所は因縁の地、二人の学舎である青雲学園校庭。かつて神竜剛次が本拠地として支配し、流全次郎が立ち上がった地です。
 誰にも邪魔されずに決闘を行う為、神竜剛次は校長を恫喝して青雲学園を臨時休校とします。登校してきた生徒達は色めき立ち、口々に文句を言い立てました。
「臨時休校だなんて、どうしてですかっ?」
「昨日までそんな話は何も無かったのに……」
「何をいい加減な事を言ってるんですかっ!三年生にとっては、大学入試の為に大事な時期なんですよっ!」
 コレに対する、神竜剛次の反応が白眉です。
「下衆どもが……休校が不服だと大騒ぎする程、学校で何を学んでいるというのだ!人間にとっての真実とは何の関係も無い受験技術…!人を出し抜く技術!!貴様達が学校で学んでいる事は、自分達の父親どもが作り上げたこの汚らしい社会に入って行く為の準備でしかない!卒業する時には父親どもとそっくりのブタだ!!」
 歯に衣着せぬ物言いは影の総理譲りですが、彼は非常に潔癖な人間であり、こんな事も言っています。
「これからは俺達の時代なのだ!!お前達の父親どもを見ろ!勤め先での出世競争、小金を貯めて家を建てる事、人の裏をかいて金を稼ぐ事ちっぽけな目先の欲に追い回されて何の理想も無く毎日をあくせく送っている!!お前達の父親はブタだ!!利己的な欲に固まって泥に顔を突っ込み、エサを漁る惨めなブタだ!!力ある者にはへつらい、力の無い者は踏み躙り、自分の欲望を満たす事しか考えていないブタだ!!欲望を満たす為には魂をも平気で売り飛ばす!!高貴な人間性など考えた事も無く、まずいエサをまずいとも思わずたらふく喰って、いぎたなく大イビキをかいて寝る!!それがお前達の父親だ!この世を醜い物にしてしまったブタどもなのだ!そんなブタの生活はぶち破れ!!それが俺達若い者の使命だっ!!お前達の父親どもが作ったブタの社会を理想社会に作り直すのが我々の闘いだ!!その為には我々に敵対する者どもを叩き潰さねばならん!!」
 そして、一方の流全次郎。彼は校門の前で生徒達に詰め寄られます。かつては共に闘い、友だと思っていた生徒達に。
「流くん、帰ってくれ!せっかく平和を取り戻した青雲学園を、再び騒ぎに巻き込むのはやめてくれ!!流くんが帰れば神竜も立ち去る!闘いを放棄するなんて言っていない、だけど僕達は学生だ、まだ無力だっ!!だから、うんと勉強して立派な社会人となって力をつけて、それから闘う道を考えると言っているんだ!!」
 流全次郎は、彼等に告げます。
「今ライオンに襲われようとしている時に、もっと自分が強くなるまで待ってくれと言ったら、ライオンは待ってくれるだろうか。大事なのは今だ!今、闘う事が大事なんだ!今闘わない人間が後で戦う訳が無い!!闘わない為の言い訳なんて、無限に考えつける物なんだ!!闘いを放棄する人間に一緒に闘えとはもう言わない!だが、闘う人間を妨げる事だけはしないでくれ!」
 この言葉に生徒達は沈黙し、流全次郎と神竜剛次は互いの全てをぶつけあう決闘へと臨むのです。

ファイアーエムブレム 暁の女神

2007-05-01 | 中身
 先程二週目を終え、隠しユニットも仲間にしてとりあえず一件落着です。
 さて、世間では何かと厳しい評価を受けているらしいこの作品。確かに前作である蒼炎の軌跡をプレイしていなければ話の筋は解りませんし、前作主人公が活躍しすぎている事も確かです。序盤から地道に育てた剣士や弓兵が、後半に加入するユニットに到底かなわなかったり、自軍最上級職が強すぎる等、指摘されている非難は至極もっともな事が殆どだと私も思います。何よりも、昨今のエムブレムシリーズ最大の肝である所の支援会話が味も素っ気も無く、つまらない事甚だしいのは個人的に大問題です。
 しかし、シナリオ自体は結構好きな種類の物でした。
 個人のエゴで神を打ち倒し人の世界を構築するという理念は共感しますし、電波気味で心の弱いミカヤよりも即断即決のアイクの方が遙かに好感が持てます。新作主人公が旧作主人公に美味しい所を持って行かれるという点ではどこかの運命っぽいガンダムちっくでもありますが、アレをもっと綺麗にまとめた、という感じでしょうか。
 戦闘のバランスは大雑把になった感が否めませんが、その代償として爽快感がアップしていますので、これはコレで面白いですし……総合的な評価としては「従来路線とは少し違うけれど、かなり良作」という所。Wiiを所持しているのなら、前作とセットで(←ここ重要)プレイしてみる事をお勧め致します。

 ……ミカヤとかどうでも良いですけど、漆黒可愛いですよ漆黒。DSあたりで「おいでよ漆黒の森」とか出たら買い占めますねきっと。キャッチコピーは「身の程をわきまえよ」で。