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『近代の洋画・響き合う美 ―兵庫県立美術館名品展―』

2012-02-05 | 展覧会
マイ・ホーム・ミュージアムである滋賀県立近代美術館では、新年第一弾の企画展として、『近代の洋画・響き合う美 ―兵庫県立美術館名品展―』を開催しています。何と言ってもポスターやチラシにもなっている小磯良平の「斉唱」がやって来る!それ以外にも、日本近代の洋画の流れを特に関西で活躍した画家たちの多彩な活動の歴史を広く概観する展覧会となっています。

7つのテーマで作品が展示されていますが、「洋画の始まり」では、明治時代の黎明期の洋画、本田錦吉郎「羽衣天女」が興味深いです。富士山をバックに天空を舞う天女を描いているのですが、天女には西洋の天使みたいな超写実的な翼が生えているのです!このような西洋の画題を無理やり日本的な画題に翻案した和洋折衷の作品は物議をかもし出したそうですが、写実の技量には素晴らしいものがありまして、この技術を獲得して日本人として何を描くんだ?ということろを探求した過程が窺えます。

明治~大正時代の洋画家たちは、印象派や後期印象派、フォービズムなど西洋絵画の新しい流れを積極的に取り入れながらも、日本人ならではの画題や表現、光や空気感を描こうとしました。展覧会場を見渡すと、何となく色が暗め?なのも、やはり日本の気候や、日本的な解釈、表現によるものなのでしょうか…?

さて注目のコーナーは「ふたりの巨匠 金山平三と小磯良平」。
小磯さんは、やっぱりうまいですね~。話題の「斉唱」は思ったより小さな作品。でも上品で鮮烈な雰囲気を醸し出していました。1941年に描かれたこの作品は、あえて人物を立体的に配せず、よく似た身長の人物をルネサンス期のレリーフのように並列させることで、群像の統一感に重きを置いた表現になっているとのこと。サポーター仲間の間では、「なぜ彼女らは裸足なのか?」が話題になっていました。色のバランス?ルネサンスのレリーフに倣ったのか?さてさて?

あと面白いのは「洋画から前衛へ」。ここでは、兵庫県で若手前衛美術家を集めた集団「具体美術協会」を結成した吉原治良の作品が展示されています。若き日の具象画はなかなか素敵と思いました。その後、抽象画へと移行するその時期の貴重な作品を見ることができます。

さて、この企画展にちなみ、常設展でも「滋賀の洋画」「日本の前衛」と題して作品が展示されています。
「日本の洋画」では黒田重太郎と野口謙蔵を中心に。野口謙蔵は、滋賀県に生まれ故郷の蒲生野の人や自然を描き続け、若くして亡くなったのでその名があまり知られていませんが、近年は「日本的洋画」の開拓者の一人として評価が高まってきているとのこと。私は野口謙蔵の「ヒヨドリ」が大好きです。少しマチスを思わせるような装飾的な画面には、かわいらしいヒヨドリたちが生き生きと描かれ、色も素敵で、ずーっと見ていたい気持ちになる作品です。
「日本の前衛」では、企画展の吉原治良が晩年に到達した境地「○」を描いた作品や、「具体美術協会」で活躍した白髪一雄、元永定正、田中敦子、金山明などの作品も見ることができます。

「洋画」というのも、よく考えると不思議なカテゴリーですよね~。ともあれ「洋画」をたっぷり堪能できる展覧会です。ぜひご覧ください。3月11日(日)まで。

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