from Shizuoka/name is "slide"
ささやかに雨が降り出した水曜日
庭に出て
雨や強風に備えていた母の隣りで
桔梗や睡蓮、桃の実
夏の小さな風景を眺めた
僕の母親はしょっちゅう庭や畑で土まみれ
そんな作業が好きなとこ
受け継いだかな
今年の春も桃の花は庭の主らしく輝いていた
暗い夜の中でも
窓から桃の花の方を見ると
桃の花色に夜を照らしているようだった
どんなに暗くても、そこだけは発光しているみたいで
光を放つ君のよう
その中にあるもの
強く輝くもの
仄かに輝き出すその光を見上げる時
僕は幸せの中にいて
降り出す粒子を眺めるのだ
もっと放つように染まるように
幸せが言う
何もかも父にそっくりだったら
もしかしたら今頃
お酒を酌み交わしていたのかも
お父さん、おとうさん
何度言っても足りないくらい
『STARDUST』はまた今度
下手だなぁと、
また怒りながら聴いてください
君のお父さんは
愛情豊かな、素敵な人なのじゃないかな
だって
僕の好きな君を育てたのだもの
きっと、世界中のお父さんは僕の父のように
少し恥ずかしがりながら
家族を想っているのだ
日曜日には、窓を開けた車を走らせて
よく似ているねと言われた父にもらったもの
大事にしていこうと思ったのは、
いつ頃からだったか
まだ最近のこと
おとうさん、おとうさん
何度言っても足りないな
お父さん
温度をしたため
漆黒のような光の中で
呼吸を繰り返す僕らの住み処
海から空へ
空から故郷へ
故郷から山へ
山から川へ
川から海へ
旅路の途中の風景は色とりどりで
時々
懐かしい音色も聴こえてくる
昇り渡り還り
降り流れ削り洗練され深くなる
優しい温度をしたためた肌は
漆黒のような真白な眼差しで
廻る、ほら一緒に手を結んで
耳を澄ますと聴こえてくる
時々、すぐ隣に居るような
僕の好きなあの音楽と
物音がして目覚める
点けたままのパソコン
暑い部屋
寝落ちした跡
でもまだ眠い、太陽は高いのに
眠る前、僕は何をしたのだったっけ?
詩になりそこなった日記を見る
意味の分からない言葉に
謝りたくなってしまう寝起きの部屋
どうしても昨日のうちに綴りたかったのは
『恋人の日』
カレンダーの文字を見つけて
だから急いで家に帰ったのだった
日は跨いでしまったけど
『そばにいてね』
簡単なそれが言えないような僕には、
これがせいいっぱいの背伸びの願いごと
点けたままのパソコン
点滅する夜景を見おろす流れ星
寝起きの部屋に甦る
僕一人だけの恋人の日の記憶
昨日も今日もぼくは、
相変わらずこんな僕なのだなぁ
でも、今日もゆっくりゆらゆらと
一日の始まり
6月12日水曜日
0時に近い夜の中
家路はもちろん、いつもの僕だけのホットスポット
畑の間を、誰もいない町を走る
日付変更線を渡ってしまう前に
詩を書きたかったから急いで帰ろうと思ったけど
景色を見ていたら、
0時直前
数行書いたところで日付変更線を跨ぎ
ソファで寛いでいるうちに居眠り
気付けば、たった今
誕生日の時刻(数字)となってた
6月13日木曜日
カーテンを開けるとひっそりと水色の町
穏やかに静かな窓からの風景
僕ら、同じ世界の物語の中で
6月の僕のこんなしがない一日にだって
遠い地に続く1ページ
日付変更線は、神様がめくる仕草の一瞬
君よ今日も咲いていて
日記になってしまった
6月の或る一日より