Catch the words

from Shizuoka/name is "slide"

螺旋の時間

2013-06-29 | Weblog





降っているのか降っていないのか分からないくらいの
小さな雨が降っていた。
杉並木を眺めながら歩いた。


僕は、いつも目の前の風景に足をとめては愛でてしまうので
母は、『そんなのいつものこと』と言わんばかりに歩いていく
ついつい、
どれだけ長い間生きているのだろう?と思わせられる
大きな杉の列やさまざまな植物の姿をゆっくり眺めたくなるのだ。
見上げていると、高い杉の梢から
小さな雨が降り注ぐシャワー。


雨雲からでなく、杉の梢から落ちてくる雨の雫だから
雨粒よりも数倍大きな水滴が自分めがけて落ちてくる。
落ちる速さは雨と一緒なのだろうけど、雫の方がゆっくりに見える。
何だか楽しい。(トトロ状態)
でも、はたから見たら、ただの杉の下に立っている人なのだ。


そんなことが楽しい自分って…しかも怪しい人になってる?
と少し自分に疑問を持ちながらも、見上げては歩き
見上げては歩き、
小さくなっていく母の背中を時々確かめながら参道を進んでいった。


杉並木が終わったところで母が待っていてくれたので、
坂を二人で上った。
たわいない話をしながら。
毎年、この坂の時間が気に入っている。


その昔、出逢った二人を思った。
出逢ったから二人から父が生まれ
父は母と出逢って僕たちが生まれ
姉たちはまた義兄たちと出逢い甥や姪が生まれ
いずれ、その子供たちが生まれる。(多分)
どこまでも続いていくと良いな、螺旋の時間。


螺旋の端っこに引っ掛かっている僕は、坂を上る。
時々、下っては、たわいない時間を愛でる。
小さな雨は木立が受けとめて、少し柔らかくなった雫は
僕らの頭上に降り注ぐ。


そしてそんな話を君にする僕、とても良い時間だったんだよ、と。


書き始めは詩にしようと思ったのだけど、また日記になってしまった。
『そんなのいつものこと』
ふいに、軽やかに言う母の声が浮かぶ。

いつものこと。
二人のことや僕らのこと。
いつも、君をも想っているんだから。
いつものことは、
『いつも』のこと。














コメント
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