京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

悪口の解剖学:チャールズ皇太子への皮肉な献辞

2020年12月06日 | 悪口学

『代替医療解剖』(2010 新潮文庫)はサイモン・シンとエツアート・エルンストによる代替医療学に関する総括的なレポートである。訳者は青木薫氏。

 

     チャールズ皇太子

 鍼、ホメオパシー、カイロプラティック、ハーフ療法など代替医療のほとんどがインチキであり、効果があったとしても、プラセボ効果によるものであるとしている。無知な人々が高額な治療費をこういった代替医療行為に支払っている。

 ところで、本書の表紙には、英国のチャールズ皇太子に対する献辞が掲げらえている。チャールズ皇太子が、代替医療の無意味さや危険性を大衆に啓蒙しており、その活動に対する賞賛の故かと思って読んでいったが、まったくその逆であった。

 チャールズ皇太子はつぎのような発信をしている。

「これらの代替治療法は、主流の医療と同じぐらい効き目があるのではないか?場合によっては主流の医療よりも効くのではないだろうか?」

「末期ガンで、もう一度化学療法を行っても、治療が終わるまでいきられないだろうと言われたのにゲルソン療法(食事療法とコーヒー浣腸)に切り換えた女性患者がいます。その女性は、7年後の今日もちゃんと生きています。つまりこうした例を否定するのではなく、むしろそういう治療法の効き目についてさらに調査を行うことは、生命にかかわる問題なのです」

この書の著者らは、すでに信頼を失い危険でさえある代替治療を奨励しているとチャールズ皇太子を非難しているのだ。冒頭の献辞は、その警告であった。彼は他の社会問題(環境、雇用など)には真剣でまともな発言をしているのに、代替治療に関しては眼が見えない。健康問題というのはかくも難しいという例えにあげられる話しだ。


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