京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

孫子の兵法とウクライナ戦争

2022年05月21日 | 評論

 2月24日、プーチン大統領がウクライナへの軍事作戦を行うと述べた演説の後、ロシア軍によって砲撃や空襲が開始された。これを受けてウクライナのゼレンスキー大統領は同日、戒厳令を発布。さらに、18歳から60歳の男性を出国禁止にする「総動員令」に署名し、戦争状態に入った。ところがロシアは短期間で首都キエフを占領する予定が、ウクライナ軍の予想外の抵抗に合い、撤退せざるを得なくなり、いまや東部地区の専守防衛といった情勢になっている。プーチンは何を間違えたのか? 中国の兵法書『孫子』を読んで考えよう。

 『史記』によれば兵法書『孫子』の著者孫武は、斉の人、兵法書13編を著すとある。春秋時代の人で呉王闔閭(在位前515~前496)に仕え、西は楚を破り、北は斉、晋を脅かして天下にその勇名をとどろかせた。呉王が諸侯の覇となりえたのも、孫武の力に負うところが多かったという。「孫子」は単に兵法書というよりも、深い人生訓を含んだ哲学書として読まれている。

  兵法書「孫子」の著者孫武

 

 兵は国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからず

<戦争は国の一大事であり、人民が生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれることが多い。国家の存亡を左右するものなので、最も慎重に考慮すべき事である>

プーチンは米国やNATOに挑発され、追い込まれるようにして戦端を開いたが、ウクライナ側の軍事体制を含めた情報不足や、クリミヤでの成功の驕りで、相手をなめきったために、とんでもない危機に陥ってしまった。ロシアは国内的にも国際的にもただではおさまらにだろう。真珠湾攻撃の奇襲で米国に開戦した大日本帝国の状況とよくにている。一国の命運を左右する決定をプーチンは安易に行ってしまった。もとKGBの中佐は大国を率いる器ではなかった。

 

兵は拙速を聞く。未だ巧みの久しきを聞かず。

<戦いは、たとえ拙速でも速決が大事である。いかに戦争巧者でも、長引いて成功したためしはない>

ロシア軍は、奇襲をとらず開戦前に演習と称してダラダラと時間を過ごした。その間、ウクライナ側は準備をととのえる事ができた。一点突破でキエフに奇襲突入し、主要施設を占拠しておれば、指揮系統が混乱してウクライナは相当にピンチだったろう。

 

兵を用いるの法は、国を全うするを上と為し、国を破ること之れに次ぐ。

戦争は敵国を滅亡させないで勝をおさめるのが最上である。敵国を破滅させるのはやむをえない場合だけである>

ロシア軍はいまや無差別に市民を殺戮し、施設や家屋を破壊する戦術を取っている。これでは、ウクライナ市民の怨嗟と怒りでもって、軍はますます苦境に陥るのは目にみえている。

 

百里にして利を争えば,即ち三将軍を虜にせらる。

<無理して遠くに攻め込めば、結局、将軍を3人も捕虜にされてしまうほどの敗北を喫する>

ウクライナではロシアの将軍クラスの軍人がスナイパーによって何人も戦死している。それだけでなく敗勢の責任をとらされて罷免された将軍が何人もいるといわれる。これでは士気は落ちる一方だ。

 

始めは処女のごとく、後には脱兎のごとし

<始めは処女のように静かだが、時期がくれば野兎のように行動する>
ウクライナ軍はロシア軍を防衛ラインまでひきよせ、隠し持っていた最新兵器でつぎつぎと撃破した。

 

軍に輜重なければ即ち亡び、糧食なければ即ち亡ぶ

<軍隊に十分な軍備品がなければ、戦いに敗れ、食料の準備がなければ敗北する事は必定である>

ロシア軍は2週間ほどで片がつくと考えて装備、弾薬、食料をその分しか準備してなかった。その結果は目にみえていた

 

彼を知り己を知れば、百戦危うからず。彼れを知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず危うし。

これは有名な孫子の命題なので解読は略す。プーチンは、どうもウクライナのこともロシアのことも分かっていないらしい。

 

亡国は以って復た存すべからず、死者は以って復た生くべからず。

<亡んだ国を再興することはできない。死んだ人を生き返らせることもできない>

亡びるのはウクライナかロシアか?あるいはその両方か?なんのためにスラブ人同士戦うのか?大義のない不思議な戦争だが、いままでアメリカがベトナム、南米やイラク侵攻などで、さんざんやっきた手本をもとにロシアがまねているように思えてならない。いま世界の正義の基軸が問われているが、ロシアが悪いからといって、米国やNATOが正義とは言えないのだ。

 

追記(2022/0523)

[呉子]も戦国時代の軍人呉紀の言葉をまとめたものだ。

国の和せざれば以って軍を出だすべからず。

死を必すれば即ち生き、生を幸すれば即ち死す。

三軍の災いは狐疑より生ず。

近きを以って遠きを待ち、いつを以って労を待ち、飽を以って餓を待つ。

など銘記すべき文章を残している。

 

追記(2022/11/20)

クラウゼウィツ語録(加藤秀治郎翻訳一芸社

 

名将は精神的教養の高い国民の中からしか生まれない

敵に勝つには、敵全体の重心を目指し、全力で突進せよ。

防御して反撃しないものは亡びる。

 

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エダシャクの一種?

2022年05月06日 | ミニ里山記録

エダシャクの一種と思えるが正確な種名はわからない。

 

 

 

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マツバウンラン(松葉海蘭)

2022年05月06日 | ミニ里山記録

 

マツバウンラン(松葉海蘭) Nuttallanthus canadensis。ゴマノハグサ科の1年草。葉の形が松葉、花がウンラン (Linaria japonica) に似ていることからこの名がついたそうだ。北アメリカ原産の帰化植物。日当りの良い場所に生える。買ってきた芝生に種が紛れ込んでいた。

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ベニウツギ (紅空木)

2022年05月06日 | ミニ里山記録

 

 

卯の花のこぼるゝ蕗の廣葉哉     蕪村

 

ベニウツギ(スイカカズラ科タニウツギ属)

 タニウツギの園芸種で、花の紅色が濃く、花冠の内側も紅色である。買った園芸店でタニウツギとして売られ、札の写真もタニウツギだし「花はうすい紅色」と書かれれていた。しかし実際花が咲いてみると、色の濃いベニウツギであった。なんとなくだまされたような気がするが、こんな場合は返品可能なのだろか?比叡山で出会ったタニウツギは品の良い紅色だったような気がする。

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