京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

スズメ(雀)

2019年06月30日 | ミニ里山記録

 

 

稲雀むらがり飛んで富士を覆ふ   山口青邨 

 スズメ(学名 Passer montanus)。

庭の芝生に来たスズメ。昔は群れになってきたが、最近は少ない。一説によると最近20年足らずで最大80%、半世紀前との比較では90%も減少し、1800万羽の生息数にとどまるという。原因は都市部におけるカラスによる捕食、稲作の田圃の減少、家屋の構造の変化(隙間が少なくなっている)などである。近縁種にニュウナイスズメというのがいるが、これは頬に黒い斑紋がないのですぐ判別できる。

 

 

 

 

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悪口の解剖学 IV フランシス・クリック、おまえもか!

2019年06月24日 | 悪口学

  

 

 遺伝子DNAの二重螺旋構造を解明したジェームズ・ワトソン(1928年 - )とフランシス・クリック (1916年- 2004年)は、「ワトソン・クリック」としてまとめて称せらえるが(一人の科学者だと誤解している人もいる)、アインシュタインとともに20世紀のもっとも著名な科学者である。ワトソンはノーベル賞受賞後、教科書を書いたり、アカデミーのマネジメントに力を注いだ。しかし、Wikipediaの記事を読むと、晩年になって人種差別発言を繰り返すなど、とんでもないジイサンになってしまったようだ(当年91歳)。ノーベル賞受賞後に『二重螺旋』という本を書いた若い頃から、すでに「データー泥棒」とか「セクハラ野郎」とか批判されていた。一方、クリックの方は、意識(脳)の問題に取り組んで比較的まじめに研究を続けていた。マット・リドレーの著「フランシス•クリック:遺伝子暗号を発見した男」(勁草書房)では、クリックも個性の強い人物に描かれていが、ワトソンのような「露悪家」のようではない。庵主も、やはりイギリス紳士はヤンキーとはだいぶ違うと思っていた。

 ところが最近、ドナルド・R・キルシュとオギ・オーガス(この人はライター)が書いた 『新薬の狩人ー成功率0.1%の探求』を読んで、クリックに関してとんでもない悪口が書かれているのを読んで仰天した。以下、その部分を転記する。

 『私(キルシュ)はニューヨーク州ロングアイランドで聞かれた、とある一流の生物学学会に出席したときの出来事を思い出す。その学会はDNAにほぽ的を絞ったもので、ある若い博士研究員が、きわめて長い人間のDNA鎖(長さは三メートルあまりに及ぶが、幅はわずかニナノメートル)が、どのようにして極微の細胞核の狭い空間に詰めこまれるのかについて発表した。その若者は、自信なさげで発表はしどろもどろだったが、今日では彼が得た知見は基本的に正しかったことがわかっている。ポスドクが発表していると、突然、フランシス・クリックが演壇の前に歩いていった。クリックはDNAの構造を発見した研究者の1人で、世界でも特に名高い生物学者だ。クリックは演壇の真ん前に立って、その若者と向き合った。二人の鼻先はわずか三〇センチほどにまで近づいた。ポスドクは、この科学界の伝説的人物の異様な出方に落ち着きをなくしていったが、急いでなんとか話の最後までこぎつけた。発表が終わるやいなや、クリックが大声で言葉を発した。

  「きみの話は本当に終わりましたかね?」

 若者はうなずいた。クリックはゆっくりと聴衆のほうに顔を向け、こういい放った。

  「みなさんはどうなのかわかりませんが、これはまったくアマチュアの話であり、私はこの会議でこれ以上我慢したくありません」。

想像するに、センメルヴェイスも、あの向上心に燃えた若い生物学者と同じような屈辱を昧わったにちがいない』(以上)

  イグナーツ・センメルヴェイスはハンガリーの医師で産褥熱の原因が、分娩中の細菌感染であるという仮説を主張した人である。センメルヴェイスは誰からも相手にされず、最後は精神病院に入れられて亡くなった。19世紀末の話である。キルシュは現代においても、学会の権威者というものが、いかに新規の学説に対して保守的であるかを示すエピソードとして、クリックを登場させたのである。否定は弁証法の魂といわれるので、学説に反論したり否定すること自体は問題ではないが、その非人間的で強圧的な態度である。庵主が学生の頃、分子生物学の勃興期には、ワトソンとクリックは燦然と輝ける星のようであった。年老いるということはまことに悲しいことではある。

参考図書

ドナルド・R・キルシュ、オギ・オーガス 『新薬の狩人ー成功率0.1%の探求』(寺町朋子訳)2018 早川書房 

 

 

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京都盆地は地震でできた

2019年06月24日 | 日記

 

 京都は1830年(天保元年)に死者280名の被害を出した直下型地震のあと、190年余り大きな地震を経験していない。1995年の阪神淡路大震災と昨年 (2018)の大阪北部地震では、場所により震度5強による家屋の破損はあったが、神社仏閣が倒壊するような大きな被害はなかった。印象としては京都は地震の少ない場所のように思ってしまうが、京都盆地は大地震が繰り返した結果できあがった盆地であることを忘れてはならない。京都の地震の記録は鴨長明の『方丈記』にも見られる(https://blog.goo.ne.jp/apisceran/e/9dba69d115d7d00bbfdf801e3d91611a)

 東山や西山に沿って走る何本もの活断層では、大地震の度に岩盤が数メートル以上ずれ、上昇した部分が山地に、下降した部分が盆地になっている。盆地のそれぞれの端が壁のようなはっきりした境界になっている。この断層の山麓は起伏があり、山紫水明で風光明媚な景観のゆえに建築文化が栄えた。東山(月待山)には足利義政の銀閣寺が、西山(衣笠山)には足利義満の金閣寺が建てられた。東京や大阪のようなのっぺらした平野の都市に比べて、緑が多くメリハリがあるのは断層のおかげである。

 

 

 京都を走る最大級の活断層は、北東から市内を走る花折断層である。これは滋賀県高島市の水坂峠付近を北端として、花折峠、大原、八瀬、左京区吉田山付近を南端としている(約46 kM)。京大北部グラウンドの東の土手(上の写真)は活断層の露出面で、これが南に延び、京大植物園を横切り、さらに今出川通りを横断して、吉田神社付近にいたる。花折断層から南部は市内で分岐し、鹿ケ谷断層、清水山断層、桃山断層などと名がつけられている。

 花折断層は中央構造線についで日本内陸部の最大級の断層の一つで、もしここで地震が起こると、市内は震度6強〜7の激震に襲われ、ほとんどの古い木造家屋は倒壊すると予想される。1662年(寛文二年)の京都北東部の大地震は、三方断層と連動した花折断層北部の地震ではなかったかとされている。この震災では町家100軒が倒壊し、死者は200人と記録されている。花折断層中部については歴史時代になってからは活動の記録がない。調査によると、この辺りの最新の活動痕跡は2000-2500年前の地層に見られ、それより前は7000-8000年前という。1200年前にここに都(平安京)を定めたが、将来起こる大地震を考えると、日本で最悪の場所の一つであったと言える。もっともその確率は、おそらく1000年以上先の事のようであるが。

 西山断層系の運動によりできた丹波山地と東端と京都盆地の境も複雑な活断層となっている。西山の辺りで活断層はジグザグに分岐し、そのズレでできた地形を利用して古い寺社がある。山の麓は大雨で崩れやすいので、竹を植えて崖崩れを防いだとされている。おかげで、この付近は美味しい竹の子の産地になっている。断層に沿って特殊な植物が連続して生える例は北アルプスのイワスゲであるが、京都西山の場合は竹薮である。

 京都は南北に高低差があり、東寺の塔の天辺(約55M)が千本北大路の土地の標高と同じである。町名の「上ガル」「下ガル」はこういった地勢による。さらに京都は扇状地で土地の柔らかなところが多く、震源が比較的遠くても揺れが激しい場合がある。秀吉の居た伏見城が倒壊した慶長地震 (1596)では、ここで200名近い圧死者がでた。これの震源は有馬ー高槻構造線ではないかと言われている。京都盆地の地下構造を調査すると、大昔は海だったが、活断層運動で東山などの山地が隆起し、盆地部分が沈降した。海の底だった岩盤には土砂が堆積して南に行く程深くなっている。その深さは二条城あたりで約200メートル。伏見のあたりで約800メートルである。岩盤が沈み込まずに取り残されたのが吉田山や紫雲山(庵主の住居がある)で、この辺は掘るとすぐに固い岩に突き当たる。一説では京都盆地の下には岩盤と堆積層との間に大きな地下湖があると言われる。そのせいか、京都市には水気に関する地名が多い。こうゆう場所では大地震の時に液状化の被害がでる可能性がある。京都で予測できる次回の大地震は南海トラフである。これのおおよその間隔は100-150年なので前回1946年からすると、確率的には射程距離に入っている。これの備えが京都でも必要とされる。

 

参考図書

尾池和夫 『俳景ー洛中洛外・地球科学と俳句の風景』宝塚出版 1999

尾池和夫 続『俳景ー洛中洛外・地球科学と俳句の風景』宝塚出版 2002

増田潔 『京の古道を歩く』光村推古院書店 2006

 

 

 

 

 

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ヒロバツバメアオシャク

2019年06月22日 | ミニ里山記録

 

 

                     ヒロバツバメアオシャク(Maxates illituata) と思える。ガラス窓に止まっていた。

                          成虫は6-7月に出現し、翅の色は薄緑が多いが変化に富む。




 

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悪口の解剖学 III 会話の60%以上は他人のゴシップ

2019年06月20日 | 悪口学

 

 R. M. Dunbar (Liverpool大学)という学者の論文(Gossip in Evolutionary Perspective: Review of General Psychology 2004, Vol. 8, No. 2, 100–110)によると、霊長類における毛づくろいの替わりに、ヒトでは音声言語によるコミュニケーションが発達したという。そして初期の会話の内容の大部分はゴシップ、特にfree rider(ただ乗り野郎)に関する情報交換だったのではなかったかと議論している。

 初期人類の会話情報の多くは、Dunbarの言うような他人のゴシップではなくて、おそらく食糧、外敵、危険に関するものであったろう。ゴシップが会話の主流になったのは、集団が定着して余裕が出来てからと思える。他者に関する情報交換は、個体同士の信頼関係を高め、政治的なグループの形成を促進したと思う。

 現在でも統計によると、人がおしゃべりしている時間の65%はゴシップに費やされているらしい。学会の懇親会に出席しても、学術的な話題よりもゴシップ話が多いのは驚かされる。

『A先生は、苦節30年の研究成果を大学の紀要にやっとまとめたようですな』とかいう地味な話はまれで、『B先生は、どうも秘書とできているようで、この学会にも奥さんに内緒で二人で来てるらしいよ』とかいう話の方が多い。情けない事に、こっちの話題の方が圧倒的に面白い。

 昔も今も、集団やグループ内での他人の情報は自己の行動や方針を決定するための重要な要素である。集団の中に礼儀や規範を無視する乱暴者が出現したとき、そんなのにうっかりつき合って、被害を被らないために情報は重要である。とんでもない奴とプロジェクトを組んで、ただ乗りされたり横取りされてはたまったものではない。

 

参考文献

 小松正 『いじめは生存戦略だった!?』 秀和システム 2016

 ユヴアル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」河出書房新社 2017

 亀田達也 『モラルの起源ー実験社会科学からの問い』岩波新書 1652, 岩波書店 , 2017

 

 

 

 

 

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ヘラオオバコ (箆大葉子)

2019年06月20日 | ミニ里山記録

 

 へらおほばこ咲いて馬堤の高さかな 阿部和子

 

鴨川の河原に咲くヘラオオバコ (Plantago lanceolata)。

江戸時代末期により侵入したとされる。 河川敷や農耕地等で繁殖している。花はお茶花に使えそうである。

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時間についての考察 XIII:宇宙と生命の進化

2019年06月17日 | 時間学

 

 熱力学第二法則によるとエントロピーは増大し、世界は時間の矢の方向に無秩序さが増大することになっている。一方、生命の進化においては、化学進化、原始細胞形成(イブ細胞)、多細胞生物さらに生物社会の形成と、より複雑でエントロピーの小さい複雑なシステムが出来上がってきた。これは大いなる矛盾であると昔から言われてきた。これに対して、生物が存在するこにより地球全体のエントロピーは増大しているなどというもっともらしい説明がされているが、どうしてそんな必然性があるのかは誰にも説明できない。

 『時間の本質をさぐる』(松田卓也、二間瀬敏史著 講談社現代新書 1990)によると、宇宙はビッグバン以来づつと温度が下がり続け、この温度低下が物理的システムの進化の原因になっているそうだ。温度の低下があまり速いと、平衡状態になりきれず、「落ちこぼれ」がところどころに生じて特異な非平衡状態が生ずる。片栗粉をお湯で溶いたときに、均一に混ぜたつもりでもツブツブができるみたなものだ。本来は宇宙は膨張して熱死の方向に向かっているのだが、ダイソンがハング・アップ現象と言った中途半端な状態(オチコボレ)がいくつもできるということだ。

 水素の核融合で燃えている太陽もこの落ちこぼれの一種ということである。この落ちこぼれが発する熱の負のエントロピー(ネゲントロピー)が地球の生命の基になっている。この負のエントロピーが雷の電気エネルギーとなり、別の落ちこぼれである原始地球で化学進化を起こした(Stanley Millerの電気放電実験)。三十数億年前の話である。分からないのはどうして生命の起源である単細胞(イブ細胞)ができたかである? タンパク質や核酸、脂質が原始地球のタイドプールの中で合成されたと、しぶしぶ認めたとしても(腕のよい有機化学者が核酸の1塩基をフラスコで合成するには、収率が悪い何段階もの反応を組みあわせてやっとこさである)、細胞形成の必然性は無論のこと、その偶然性さえも思いつかない。この始源細胞の形成という問題は、再現せよとは言わないまでも(もしできたらその科学者は「神」になれる)、それらしい仮説でも出せるのか? これは物理学における大統一理論と並ぶ科学の最大課題の一つと言えそうだ。

 

 

 

 

 

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時間についての考察 XII:時間の受容器はあるか?

2019年06月15日 | 時間学

 

 ヒトは様々な環境情報を受容しそれに応答する。アリストテレスは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚をヒトの五感を定めた(間抜けな事に温感が抜けていた)。この他に、ヒトには時間に関するセンス(感覚)が備わっているように思える。そうであれば時間の受容器というものがあるかどうかが問題になる。以下の表はヒトのもろもろの感覚の構造を比較したものである。時間感覚は、視覚や聴覚などの1次感覚を経た変化の認知をもとに生じた意識の一種であるといえそうである。

 ここで色覚と時間感覚を比較検討してみよう。色とは物が発したり反射した光(電磁波)を眼が受容し、神経連合を経た情報を脳が処理して得たクオリアの一種である。脳が赤色とか青色とかいう感覚を生み出しているのであって、赤と青といった物は存在しない。存在するのは、それぞれに対応する光波長スペクトルである。しかも眼(受容器)や脳(情報処理機)には個体差があって、ある人の”赤”と別の人の”赤”が違ったりする。極端なケースは色盲の人で、この場合はたとえば”赤”が存在しない。さらに言うなら、紫外線を感ずるモンシロチョウとヒトとでは、同じ花を見ても違うパターンに見えている。ただ重要なポイントは刺激の要因として電磁波という物理的な実体があることだ。一方、時間感覚も脳内でのクオリアのようであるが、これは変化・運動の認知というプロセスを経て感じられるもので、特定の物的実体そのものではないと言う事である。逆に変化・運動が生じ、それを感知できれば物や事にはこだわらない。

  

  感覚    環境要因         刺激の実体        感覚受容器          測定器            備考


  視覚     光            電磁波         眼(視細胞)       ホトメーター、照度計   色は電磁波の特定の波長  

  聴覚     音            物の振動        耳(鼓膜)        ソノグラム、

  触角     物            物の圧力        皮膚           圧力センサー

  味覚     食物           分子          舌(味蕾細胞)      ガスクロ

  嗅覚     匂い           分子          鼻(嗅細胞)       液クロ

  温覚     熱            分子の運動量      皮膚(クラウゼ小体)   温度計

  時間感覚  物・事象の運動・変化    脳における変化の認知    あらゆる感覚器      時計           ある振動体(clock)が意識連続を作る


 

 鴨長明の方丈記の有名な冒頭『行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし』が表すように、視覚による空間変動の認識が時間感覚を生ずる最も大きな要因のようである。それ故に空間概念と時間概念との間には一種の写像関係が成り立っている。視覚による空間映像は瞬間-瞬間のものであるが、それをフィルムのコマのように連続することによって、運動や変化をなめらかに視ている。この”なめらかに視れる”というのは当たり前のように思えるが、これは脳におけるある種のアルゴリズム(ソフト)が働くおかげである。聴覚によっても3次元感覚を得る事を我々は経験的に知っている。音源の位置によって、前後、左右や上下と、その距離を推定する能力をヒトは備えている。ステレオの左右の音は調節すれば、音源が移動するように聞こえる。すなわち音で時間を生成する事ができる。音波はソノグラムで見るとそれぞれ単一の波形ピークであるが連続してメロディーとなる。この「連続感」こそが時間感覚のベースになっている。このアルゴリズムの作動には、おそらくコンピューターに仕組まれているクロックのようなものが必要と思える。 

 このように物の変化を感知して生ずる時間感覚は日周期、月周期、年周期といった自然サイクルによって円環的なものとして強化される。サイクルの経験によって時間感覚が生ずると唱える説があるが、サイクルの時間は連続の時間に上乗せされたものである。それは心理的な時間認識としてだけでなく、生理的な適応機構(概日リズムなど)として遺伝的にわれわれの身体に固定されている。それゆえに外的環境の変化だけでなく、体内環境の変化も意識されることによって、時間感覚を生ずるということである。もっとも卑近な例では腹時計をあげることができるし、概日リズムの体内時計に支配された生理的イベントや睡眠などである。さらに、脳における思考や思念そのものも記憶の内容や量の変化といえるので、これ自身が時間を生み出す要因といえそうである。吾思う故に時間ありというわけである

 時間は文字通りには、時刻Aと時刻Bの間隔を表す。時間を一次元の線分で表すとA点とB点の間の長さである。一方、時刻はある基準における時点(瞬間)を表す。日常では「集合の時間を教えてください」などと時間は時刻と同じ意味で扱われるが、時間学において、時間は「長さ」を、時刻は「点」を表すことにする。ヒトは、時計なしにこの二つをそれぞれ意識下で認知できる動物である。他の動物でこれができることは証明されていない(唯一ミツバチが例外である)。時計や天候をみないでも閉鎖された事務所で時間や時刻をピタリと当てられるサラリーマンは多い。これは仕事量といった物理量の意識的計算による場合もあろうが、多分に体内時計によると思える。

 相対性理論では空間と時間はそれぞれ独立したものではなく、まとまって4次元時空を作る。我々の眼には4次元時空は残念ながら見えない。なぜなら眼は3次元構造だからである。網膜は二次元の膜だが両眼視差を利用し、これも脳内アルゴリズムでもって立体視している。陰影効果(光は上方から、影は下方)、遠近効果(遠くの物は小さく見える)なども立体視に働いている。かくして脳はいわば次元を作るマシーンといえる。我々の脳が3次元を生み出すだけでなく、その方向も指定するという証拠がある。ネッカーの立体視という興味ある現象である。図は透明なガラスでできた立方体である。

    

この図は、立体を底の方を斜め上にみる見方と、蓋の方を斜め下にみる見方の二つがある。この二つの見方は、少し訓練すれば思うままに反転することができる。ただ凝視している内に、まばたきの瞬間にはずみで反転したりする。持続するには「下向き」とか「上向き」とか方向を固定する意志が必要である。これは我々の知覚が刺激次第ではなく、即ち即物的なものではなく、自分の意志が見るべき方向を指定していることを意味している。ところで脳が2次元を3次元に変換できるというのであれば、3次元を4次元にも変換できるのではないか?脳の中で時間の軸を過去にも未来にも移動する事とは何か?眼をつむり過去や未来のシーンを思念することか?あるいは夢(dream)を見る事か?。夢は脳内の疑似的4次元ドライブかも知れない。

 

参考文献

 エルンスト•ペッペル 『意識のなかの時間』(田山忠行、尾形敬次訳)岩波書店 1995

 

 

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ブレーキとアクセルの踏み間違事故防止法ー運転前の簡単脳トレーニング

2019年06月07日 | 日記

   最近、ブレーキとアクセルを踏み間違える自動車事故が多い。とくに高齢者ドライバーが、これで深刻な事故を起こすケースが報じられている。そんなバカな間違いをどうしてと思うが、実は庵主も同じような事故を自宅のガレージで起こした経験がある。十年程前のことだが、バックで車庫入れしようとし、アクセルを踏み込んでしまい後ろの壁に激突した。家人の話ではドーンという大きな音がして、家が揺れたそうである。幸いむち打ちにならず、自分を含めて人身事故にはならなかったが、車の修理に30万円近い費用がかかってしました。

  ブレーキを踏んでいるつもりが、アクセルから足が離れておらず、車が減速しないので、あわててますます踏みこむフィードフォワード運動で、ペダルをいっぱい踏みこんで激突したようである。その時の正確な記憶はないが、ブレーキが効かないという感覚になったことは確かだ。早朝の寝起きで、頭も身体もしっかり立ち上がっていなかった状態だったことが、事故の最大の原因と思える。

  それまでそんな事はなかったし、運転には自信があったので、おおいにショックだった。それ以降、車の運転時には次のような「準備運動」をしている。まずエンジンをかけて、ギアーをパーキング位置のままで、ブレーキ、アクセルと暗唱(呼称)しながら足を交互にそれぞれのペダルに移動する。これを十回程繰り返すのである。いままで、無意識にやっていたことを、運転の前に意識下のもとで足と脳に復習させるのである。

  高齢者の事故が多発しているのは確かだが、統計によると事故率は世代間で有意な差はないという。歳をとると反射神経や身体能力が低下するが、一方で慎重さも増すというトレードオフもある。しかし加齢にともなってリスク要因が限界を越えたときには、どんなに「準備運動」をしても事故の可能性が大きいので免許を返納するのが妥当であろう。もっともその見極めがなかなかむつかしい。

 

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オオキンケイギク(大金鶏菊)

2019年06月06日 | ミニ里山記録

 

 

オオキンケイギク(Coreopsis lanceolata)北アメリカ原産の宿根草。繁殖力が強く、特定外来生物の指定を受けて駆除が行われている。

土手で群生していると結構美しい。近所でこれより強くはびこっているのは、ツルニチニチソウ(ヨーロッパ原産)や

オオバアサガオ (インド亜大陸原産)のような外来種だが、これは駆逐の対象とはなっていない。

 

刈られゆく金鶏菊の不公平  楽蜂

 

 

 

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ノビル(野蒜)

2019年06月05日 | ミニ里山記録

                

名を知りて野蒜を人にをしへけり  右城暮石

    ノビル(Allium macrostemon)。ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属の多年草。花序には開花後あるいは開花前から小さな球根のような珠芽(むかご)を着生し、それを散布体とする。開花前からむかごの肥大が始まり、開花がほとんど認められないこともある。むかごの散布以外にも分球でも繁殖する。食べられる山野草である。東アジアに広く分布する。日本では北海道から沖縄までの畦道や堤防上など、丈の低い草が生えているところによく自生する。古い時代に作物と共に日本へ入ってきた史前帰化植物ではないかとも言われる。万葉集にも出て来る。

                         

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チャミノガ(茶蓑蛾)の幼虫

2019年06月03日 | ミニ里山記録


                      チャミノガ(Eumeta minuscula)の幼虫が外壁を這い上がってゆく。

                     ときどき落下しそうになるが、何故かうまく引っかかって落ちない。

                     最後は壁の上にある樹木の葉にしがみついていた。蓑虫もこの辺りでは少なくなった。

 

                             みの虫や笠置の寺の麁朶(そだ)の中  蕪村

 

 

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ニホンミツバチの巣作り

2019年06月02日 | ミニ里山記録

 

蜜蜂の出で入り出で入る巣箱古り   松本たかし

 

5月中旬に営巣をはじめたニホンミツバチの分蜂群の巣を下から撮影した。

巣盤がかなり大きくなっているのが分かる。

 

 

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セイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)

2019年06月01日 | ミニ里山記録

 

鋸草牛曳き出して村娘    中谷朔風

 セイヨウノコギリソウ (Achillea millefolium) 。隣の空き地に咲いていた。ヨーロッパ原産のキク科ノコギリソウ属の多年草の1種。別名ヤロウ (yarrow) とも呼ばれる。繁殖力が強く、本州と北海道の一部で野生化している。日本のノコギリソウ(Achillea alpina)とは葉を見れば、ハッキリした違いに気付く。属名のアキレア(Achillea)は、ギリシャ神話に登場する英雄アキレスが本種を傷薬として利用したことに由来するともいわれ、古くから傷の治療や血止めに用いられていた。紅色や深紅色の園芸品種がある。

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