※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
次は表紙シリーズです。
ゆき林檎さんの『玉響』
読み終わってから胸がいっぱいになりました。合縁奇縁で結ばれた主人公2人の容易ならざる恋を大正という哀愁漂う時代を背景に子供時代から晩年までを描きあげた名作。
まず最初に、その美しい表紙に心惹かれました。立っている(と思われる)1人をもう1人が愛おしそうに抱きしめながら片目を覆う姿。それが淡いカラーで彩られ、浮かび上がる『玉響(たまゆら)』の2文字。
美しい漢字ですよね…玉響の意味は勾玉が触れ合った時に鳴るかすかな音、転じてわずかな一瞬という意味だそうで(作者の後記より)、そして主人公ペアの話し方も日本語の美しさを味わわせてくれました。とにかく、何もかも切なげに感じられる表紙なのですが、描かれている物語もまさにそれで、何か一つの文学作品に触れたような、そんな感じもしました。
主人公の1人(麻倉)は父親がよそで産ませた不義の子。異国の血が入っている事を思わせる容姿により(時代が時代なので)子供の頃にいじめを受けています。そんな彼を守ってくれたのがもう1人の主人公(立花)。でも信頼は、立花が女性と不埒な行為に及んでいたことで砕け散ってしまったようで…
…砕け散ったという印象を持ったのは、この時麻倉が抱えていたラムネの瓶が滑り落ちて割れた表現から抱きました。その時、中に入っていたビー玉がタイトルと関わっていて、重要なアイテムとしてその後度々登場します。
で、漫画の冒頭がその不埒な現場を目撃してしまうシーンとなっておりまして、、、これはショックな始まり方でしたね。心が狭小の私のことなので下手したら「(あ、こりゃ駄目だ)」と本を閉じていたかもしれません。でも‘判断するなら最後まで’を(この年で)学んだ私は、ムッとしながらも読み進めました。
…読み進めて良かったです。
なぜ彼がそのような行為に及んだのか、そこに切なくも苦しい理由があることが後に分かります。その後というのが高校での再会時。
目撃した日を最後に2人は疎遠になっていました。なぜなら、麻倉が避けるように留学してしまったから(資産家のお家なのです)。そうした別離を経て再会した2人は寄宿舎で同部屋となります。戸惑う麻倉とどこか飄々としている立花。意識しているのは片方だけか?という雰囲気なのですけど、立花の想いは実は相当に深いようで、冷静に見えるからこそたまに見せる変化が強く生きてくるように思いました。
とはいえ、別れの原因が原因なだけにどう心が通うのかと思わされるのですけど、上級者によるストームというイベントが行われた日、麻倉が全てを告白。この時思い出される、過去から現在に至るまでの流れが切なくも美しくて、映像を見ているようでした。そして、こうしてはっきりと言葉で伝えてもらうというのは読んでいてやっぱりホッとします。以前も書きましたけど、しっかり言葉にしないことですれ違い続けるストーリーってよくありますから。。
それにしても、立花は守りたいという気持ちと共に愛も芽生えていたわけで、でも友人で男同士で…苦悩した末にとった行動があの不埒な行為。彼はそれを「過去のことだ」と言ってのけていましたけど、麻倉の戸惑いは更に深まってしまいました。
で、ここで特筆しておきたいのですけど、麻倉を好きになった理由に‘懐いてきたから’というのがあって、凄く好きな考えだな…と思いました。綺麗とか見た目もまあ大事だとは思うのですけれども私の中で感じる疑問があって、じゃあその人の見た目が変わったり(極端な話し、中身同じでも見た目別人化とか)好きじゃなくなるのかな?と。。カオスが生じてくるのですけど、、、なのでこうして見た目意外の理由が記されているのはいいですね。
そして友人の助言もあり、麻倉も想いを告白することでようやく心が通ったように思えたのですが…交わしたキスを最後に今度は立花が姿を消してしまいました。彼の実家の廃業による学費云々の問題によって。この他にも麻倉の跡取りに伴う結婚問題、震災などなど…会話にも出てきたように合縁奇縁でこの2人は確かに導かれているとは思うのですが、お互いを取り巻く状況があまりにも厳しくて寄り添うことを簡単には許されません。
そうして流れてゆく歳月。でも麻倉は諦めていませんでした。結婚を保留にして探し続けていました。そして、再びの再会。この時のビー玉が擦れる音がきっかけとなるのは素敵な演出でしたね。
でも、まだまだすんなりとはいかない2人。立花には大変な時期を支えてくれた女性がおりました…。この辺はもう複雑な気持ちになったといいますか、心臓に悪かったです。というのも宝井理人さんの『花のみやこで』を思い出してしまいまして(踏み込んでみた8参照のほど)。あちらはひじょ━━に悲しい結末でしたので、こっちもか!?とハラハラドキドキ。でも!こちらは愛する人を選びましたよ。その時の麻倉の“僕は僕の意志で生きたんだと~”の言葉が胸に迫り、茨の道なれどよくぞこちらの道を選んだと感動しました。
あと、ここで2人の濃厚なラブシーンもあるのですが、絵的にあまり想像できなかったので少々驚きつつ、なんだか逆にいい感じのインパクトを受けたような気がしました。しっかりと書いてくれた方が互いを求める気持ちがより伝わってくるような感じがしたので。
そしてここからラストに向けての流れが本当に良いものとなっていました。
互いに色々とけじめをつけるべく一端物理的に離れることを選択した2人。あのビー玉を一つずつ持ち合い“行ってきます”と言って別れます。
そうして…次に描き出される建物の様子や出てきた人物の会話から相当年月が流れたことが分かります。
その後2人がどういった人生を歩んできたのかは、主に立花についての描写でおおよそ分かるというか、作家で成功した彼と、その彼に静かに寄り添う麻倉の姿が写真に収められていたことで共にいたことが想像できました。からの開け放たれた障子の見開きシーンは心に風が吹くようで、とてもいい終わりとなっていました。
でも同時に浮かんできたのは、再会した2人のその後の姿をもう少し見たかったな…という欲。すると残りページに〈餞(はなむけ)〉というタイトルで描かれているという夢のような展開が!
そこで2人は一緒に暮らしていて、いちゃこらしていましたよ。そして更にいちゃこらしてました(主に夜のそれ)。立花の願望に麻倉が応えている感じなのですが、あの雪の日にて絡みがしっかり描かれていたせいか、今回のたった1コマが逆に官能的で、なにより2人が幸せそうで良かったです。
けれ、ども、、、
実はこれ幻とよばれる原稿に記されていた回想の出来事だったようで(立花が麻倉に捧げるために書いたもの)、原稿を手にする麻倉の口元は老い(口元のみの描写)、しかも遺稿ということで、最後の最後でまたショックを受けるわけなのですけれども、でも、悲しみと共に救われたのは素晴らしい言葉がモノローグであったから。
それは麻倉の“瞬く間に過ぎた 愛しい日々”というもの。
再会してからいかに幸せに暮らしてきたかが分かる瞬く間…という言葉。こんな風に苦労して結ばれた主人公の晩年まで伺えて、しかも幸せであろうことを伝えてくれたことがありがたくて、出会えて感謝の作品でした。
巡り巡ってまたこの2人がいつかどこかで再会してくれたらいいな…と望まずにはいられません。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
お次は元ハルヒラさんの『マウリと竜』
1巻と2巻、共に幾つかの短編からなっています。
内容は、いい意味で想像していたものと違っていました。神様と人間の恋のお話しがとてもいい形で描かれていて、好きになった対象と同じ姿形になる...というのが素敵でしたね。
メインとなるお話しでは、主人公の少年?(青年より若く見える)が、神様の子を産み育てるところまで(出産シーンとかはありませんけども)描かれていて、オメガバースとはまた違ったファンタジーならではの不思議&幸せを感じました。
ただ、主人公が女性の代わりに村の男達の慰みものになっていたという設定だけは受け入れがたくて…でもまあ、竜神様によって色々救われたので良かったです。
この作品に登場する竜神様は、字のごとくヨーロッパ系のハリポタに出てくるようなお姿をしています。それが時折デフォルメされるのですけれども、愛嬌があって可愛らしくて、体は大きいのに主人公に逆らえないとかホンワカしました。
この竜神様は巡り神として各地を巡っています。好きな相手を見つけて番となると土地神様になるようで、1巻に登場した竜はその土地神様になりました。で、そちらが善を運ぶ竜だとすると、2巻では真逆の竜神様が登場。そちらはすんなり幸せに~とはいきませんでした。でも、想いを寄せる青年が(とても魅力的)忌み嫌われる神様を追い続ける姿に愛の深さを感じられて救われましたね。いつか、どこかで土地神様になられたらな…と思いました。私はこちらのお話しの方が好きでした。
そして、、、短編の中には涙を誘われるお話しが幾つかあったのですけれども、特に1巻に載っていたものは、なんと私、号泣してしまいました。
(未読の方は読んでからをオススメ)
人さらいの手から逃れ、巡り神様とその恋人に拾われ生きた子の真の姿(この世の者ではなかった)に、全然気づきませんで…それを知った時「(えーっ)」と思いましたし、切なくて切なくて......。
こういう、温かいけれども悲しいというのが本当に駄目で、腕の中でその子が「ああ…あたたかい」と呟き消えていくシーンに嗚咽してしまいました(ほんとの話し)。
ぜひとも生まれ変わってほしいです。
というか生まれ変わって巡り会う姿を見たかったです。。。
というわけで、前記事ともどもBLでファンタジーってどんな感じなのだろう?と思ったのですけど、とてもよく描かれていて可能性が無限に広がっているように思いました。
恋愛だけではなく、様々な物語がそこにある。やはり奥深いジャンルですね…。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
お次は表紙もの…の前にファンタジー作品を挙げておこうと思います。
文善やよひさんの『鴆-ジェン-』
これぞまさにファンタジーの醍醐味、人の想像力の素晴らしさを存分に感じさせてくれる、素敵なお話しでした。
毒を喰らい、その毒素が反映される体を持つ鳥人間の鴆(ジェン)ツァイホンと、将軍で元鴆飼(ジェンスー)フェイのお話し。
まず表紙を見て頂くと分かると思うのですけれど、極彩色の羽根を持つ主人公の姿がそれはそれは美しく描かれております。その色の配分が絶妙で、カラーで絵を描くことの素晴らしさが詰まっているように思いました。更に中もモノクロのペン画の魅力に溢れていて(デジタルやもしれぬが)羽根の表現が秀逸でした。
この鳥人間という特殊設定の主人公の容姿について説明しておくと(鳥って骨が軽くて筋肉隆々なイメージだけどそうではなかった)、顔と胴体は人間、頭は鶏冠つき、肩から先は翼(肩甲骨から生えているタイプではない)、尾っぽもあって(フワフワのポンポンが連なっていて可愛い)。と、全体のバランスは人間に近くいのですが足だけは異様に大きくて不気味。
そして~ここが重要なのですけれども~全身毒持ちで象をも倒す力があります。なので本来は人に懐かず周囲も恐る恐る関わっているという感じなのですが、、、そんな中で良いなと思ったのは、人の言葉による会話で意志疎通ができること。なのでその辺のすれ違いは起きません(夜なきはするけれども←可愛い)。
一方お相手のフェイは将軍なだけあって寡黙で精悍。美しいジェンと将軍という組み合わせもまた良かったです。
全体的には中華の雰囲気を取り入れているようで、服の模様や建物の様式美が独特で楽しめましたし、これらを凝縮させたような扉絵が一話一話の区切りで載っているのですけれども、しばし見惚れてから読み進めるといった具合でした。
...絵ばかり讃えているようですが、ストーリーもこれまた良く出来ています。
主人公のツァイホンはジェンの中でも右に出るものはいないと言われる名鳥。この国ではそんなジェンを飼うことがステータスの一つとなっていて、彼もフェイの上司である大尉の元へ行くことが決まっています。とはいえ、育て上げたのはフェイではなく兄のラン。
実はこの兄弟、かつて可愛がっていたジェンを客に殺されてしまうという悲しい過去がありました。そこにはとある理由があるのですが、、、この出来事がきっかけとなり兄弟は別々の道を歩むことになります。兄のランは最上に美しいジェンを育て上げると誓い、一方のフェイは武人となり二度とジェンは育てないと。
ところが、兄はツァイホンによって殺されてしまうんですね。…この辺りは読んでいて非常にショックだったといいますか、なんて凶暴で恐ろしい生き物だろうと思いました。でも使用人によると親子の様に仲が良かったとのことで、深まる謎…(急に野生に目覚めるアライグマのようなものか?と単純な私は考えたりもしたのですが、ここにも深い理由があったことが後々分かります)。
大尉のもとへ行くこともあって報復できないフェイ。とはいえ、何をすれば苦しみを伴うか知っている彼はお仕置き的な行為を与えます。部屋に行く度襲おうとするツァイホンをサラリと交わしなされるそれは性的なもの。ファンタジーで、しかも人間同士ではないので絡み的なシーンがあるとすればどう組み込んでくるのかと思ったのですけど、こうきたか上手いな~と思いました。この作者の方はそういった場面もしっかり書かれるし、官能的でもあったのですけど、嫌な卑猥さは感じませんでしたね。
その後、大尉のもとで飼われることになったツァイホンですが、餌が合わなかったようで体調を崩します。そのため元ジェンスーのフェイが面倒をみることになるのですが…周囲の心配をよそに距離を詰める姿に読んでるこちらもハラハラしました。
で、ちょっと意外だったのが、ここいら辺りからちょこちょこ垣間見えてきたツァイホンの可愛らしさ。
猫のように提灯にじゃれついたり、あむあむとご飯を食べたり、これがもう震えがくるくらい可愛くてですね(もう可愛いいしかいえない)彼の本当の姿が徐々に露わになるうちに、こんなに可愛い生き物を見た(読んだ)ことがない…と、母性本能を刺激されまくった私がおりました。
推測するに作者の方も可愛らしい方だと思うのですよね(性格なり見た目なり)それが自然とキャラに反映されているのかな~と思いました。
そして、使用人から兄とツァイホンのかつての様子を聞いたり、武人の勘から確証を得たのか、試すように丸腰で飼育部屋に乗り込むフェイ。全てはツァイホンに委ねられているという結構な状況。そこから大きな足での挑発が始まり、牙のある口の中に指を含んだりして、どうなるの!?と思っていたらツァイホンの可愛らしさが発現しました。。。フェイをいたぶるどころか途中でもじもじ盛りがついてしまった可愛らしい鳥人間さんがそこにいました。
そんな時、急な戦が始まります。そこへ向かう去り際、フェイはかつての悲しい出来事(色出しが下手な自分によって育てられた子が、毒素が弱いことで人との距離を詰められたこと、でも価値がないと判断され客に殺されてしまったこと)を告白します。これを聞いてショックを受けるツァイホン。同じように食べ物を絶ち、色褪せ、それが原因で山に捨てられてしまいました。
...この辺りは本当に悲しい展開で、その華やかな姿が丁寧に描かれていたからこそ、色あせつつある姿が痛々しかったです。でも、フェイは見捨てませんでしたね。探し出して介抱する彼に真実を語るツァイホン。家族になりたいという自分の望みを叶え、側にいることで毒素に蝕まれたランを苦しみから解放してやるためにあえて牙にかけたと…。。
「幸せだった」という表情からも分かる通り、描かれているかつての日々が本当に幸せそうで、なのに自身の毒が父のような大切な存在を傷つけていた事実。。。そして何よりこのことを1人抱えて誰も寄せ付けないようにしていたとか、なんて可哀想なのだろうと胸が詰まったのですけれども、先に書いたようにフェイが色々気づいていてくれたことに救われました。
そして、愛情が湧いていたのでしょう。番にならないか?と打診され、とまどいつつも受け入れるツァイホン。その時の「私」という言葉遣いも大きな足で引き寄せる姿もやっぱり可愛らしくて、良かったね~と幸せな気持ちになりました。
とはいえ、そう簡単には結ばれない2人(主に身体的に)。ツァイホンの肉体にはまだ毒素が残っていて…毒抜きを選択し続けます(苦痛を伴う)。結果、その毒が抜けたであろうことが分かる、ラストの真っっ白な姿に、おもわずむせび泣きました。
愛する人を傷つけないために、側にいるために、あれほど美しい羽根を捨てる決意をして成し遂げたツァイホン。フェイも将軍を辞めて寄り添うことに決めたようで…この2人には幸せになってほしいな…と思わずにはいられませんでした。
ありがたいことに、本の終盤には2人のその後が書き下ろしで描かれておりまして、、、ツァイホンがまだ怖がっているのですね。なので先に進めていません。そんな彼をフェイは辛抱強く待ち、ある夜ようやく結ばれます。でも心配でその後も眠らず様子を見続けるツァイホンの様子に本当になんて優しい子なのだろうと、ここでもまた泣けました。
2人が移住したところは辺鄙で、暮らしてゆくには大変そうに見えますけれども、好奇な眼で見られることもないでしょうし、なにより2人が幸せだと実感しているようなので本当に良かったです。過去が過去なだけに、改めてずっと幸せでいてほしいと思いました。
あと、このお話しは基本2人を中心に話しが進んでいくのですけれども、危険な人物が出張ってきたり、どちらかが誰かに酷い目にあうとかではなく、現在進行形的に悲劇が起きないというのは安心できますね。その後何度も再読できました。
と、感想を考えていたら2巻…ではなく、2人のことが載った新刊『極夜』が出るとのことで手に入れて読んでみることに。
3分の2は表題作を描いた別のファンタジーで、後半に2人の姿が短編集として載っていました。
内容は幸せそうなものばかりで、 撫でられてズキューンと目がハートになったりウトウトしていたり、ツァイホンの可愛らしさが無限に広がっておりましたよ…。まあ、卵を産む夢の話しではフェイがどうかしていましたが(本人がそう言っている←でも彼の優しさも増し増しておりました)。子供達も可愛らしくて、なんとか実現(漫画だけど)してほしいものです。
好物である毒の実の種を拒否する話しは、それを食べれば体に反映してフェイを傷つけることになってしまいますからね、愛を感じられる良いシーンで、言葉で語るのもいいですけど(そういえばこの2人は語っていなかったような…)こうした行動で表現されているのは逆に萌えに繋がるような気がします。短編でもいいので、今後もこうして2人を見てゆけたら幸せなのですけれども。
一方の極夜。こちらは昔書いた作品の完全版として出たようなのですが(元のタイトルは「満月の王」いい響きなのになんで変えたのかしら?)
…そうですね、こちらもファンタジーなのですが幼なじみ同士の切ない恋を描いておりまして、相手を想うからこそ自分を犠牲にし、それでも寄り添えている姿に救われはしたのですけれども、結局最後まで真実が明かされず記憶が失われてゆく…という設定が悲しくて苦手でした。
でもいつか(人間界に戻った時の為の手紙があるので)全てが明らかになる時が来るのではないかと望みを抱きつつ、その時離ればなれになっているのではなく、寄り添いあえていたなら…と願うばかり。
というわけで、長々と書いてしまいましたが、色々とツボを刺激されるとても素敵な作品でした。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
さて、タイトルシリーズラストの作品は緒川千世さんの『誤算のハート』と『終わらない不幸についての話し』です。
…改めて見てもインパクトのあるタイトルだなと思います。まずは誤算~から。
なんだか不思議な感覚でツボをおさえてくる絵とお話しでした。内容もさることながら人物の動かし方が魅力的というんでしょうか…。例えば、廊下の窓越しに相手の頭を撫でつつシーっと人差し指を唇にあてたり、涙をポロポロ流す姿だったり。絵も個性的で、主人公たちは痩せた体つきの今時の男子という感じ。
で、話しのもっていき方も上手いんですよね。やんちゃな男子が大人な雰囲気の同級生にあれよあれよと絆されて懐いていく様や、好きになったらお互い一途だとか、やきもちを妬いて暴走しかけるけれど結局素直になるところとか、色々ツボりました。
その中で特にいいな~と思ったのは、気持ちをちゃんと言うところ。
‘俺だけを見て’という言葉は、これを言わないがためにこじれる物語のなんと多いことよ…と、しみじみ。あと全体的にセリフが大人びているのも独特な感じがしましたね。
で、終わらない~の方なんですけれども、前から気になってはいたのですがタイトルがタイトルだけに読むことはないな...とスルーしていました。ところがこちら、誤算のペアのお兄様のお話しで、弟ペアの2人も登場しているとのことで読むことに。
いや、、、読んで良かったです。タイトルで決めつけてはいけませんね…(決めつけの多い私よ…)誤算ではなんだか軽くて少々ヤバい雰囲気だったお兄様が、実はとてつもなく健気で一途であることが分かる内容となっておりました。
中学生の時に同じバスケ部だった自分より身長の低い相手を好きになり、その想いをずっと抱えた挙げ句ひねくれた兄。同級生と再会してからもなかなか素直になれません。決して可愛らしい女の子になれない男の自分をずっと蔑んでもいます。普段はクールで嫌みなのに好きな人に対しては純情で可愛らしかったり、好きだからこそ肉体的に(しかも貞操は守られていたとか)相手を受け入れようと無茶する兄の姿が健気で泣けました。
その中で特に胸に迫ってきたのが告白シーン。実らせるためではなく、自分が諦められるように拒絶してくれだなんて……その時の‘完膚なきまでに’というセリフが辛かったです。なので、結果的に相手の優しさに救われて、弟たちも含めて2カップルで仲良くワチャワチャしている様子に、良かったね~と思いました(冷たくあしらった女子にはちゃんと謝ってほしいけど)。
ちなみに弟ペアの方でも、やんちゃ君が意外にも真剣に先のことを考えていて、この子にしろ兄にしろ、ほんとにいい4人だったなと思います。いつまでも仲良くあってほしいですね。。。
というわけで、色々書いてきたタイトルシリーズ。じっくり読ませてくれる作品が多かったです。
漫画との出会いでは、一冊一冊あらすじが読めていければそりゃいいのですけれども、そうもいかない時はタイトルや表紙のインパクトで手に取ることも多いわけで。
と、考えたところで、こうした選択の仕方ってあまりなかったことに気がつきました。昔は雑誌を読んで、それが単行本化されて読む感じだったので。
なかなか楽しい経験でした:-)
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
さて、お次は青井秋さんの『爪先に光路図』です。
3作品収録されているのですけれども、1つ、人生で出会った漫画全てを合わせてもベストに入るお話しがありました。このジャンルに踏み込んで本当に良かったです。。。
…なんて素敵で幻想的なお話し達なのだろう…と思いました。
繊細な絵の雰囲気と優しいお話しがよくあっていて、まるで童話を読んでいるような印象。
表題作の『爪先に光路図』は、菌類学者とその助手となる大学生のお話しで17歳の年の差があります。ある意味大人と子供...になるのでしょうけれども(設定次第では年の差が苦手)1人で黙々と研究をしている教授と、まあ大学生になっているならば...と抵抗は感じず。
お話し自体は割と淡々と進んでいる感じがします。でも性急に感じないのは人物や植物たちを含む全てが柔らかい雰囲気で描かれ、癒やされながら読んだからでしょうね。研究対象であるキノコや様々な植物の描写は非常に細かくリアルで、ペン画のタッチの魅力というものを改めて感じさせてくれました(...と言いながらデジタルだったらなんともかんともなのですが)。なんとなく質の良い図鑑を読んでいるような印象すらあり、素晴らしい個性だなと思いました。
そんな世界観の中で主人公の青年が恋に目覚めてゆく姿が描かれるのですけれども、自分の想いが足を引っ張るのではないか?と離れていくのが切なく、複雑な恋の感情を菌糸が伸びてゆく姿に例えたのも独特で味わい深かったです。
逆に、離れていった助手のいない日々で無意識に彼の存在を求めたり静けさに違和感を感じ始める学者の様子も良かったですね。想いが静かに積まれていくのが良いなと思いました。それにしても「何を見ても君に話したくなる」って、いい言葉ですね。。。
と、表題作も素敵だったのですが私の漫画史上のベストに入ってきたのが2番目に入っていた〈さかなの体温〉でした。
人は皆、心の分身的なお魚をその身に宿していて眠っている最中にそれが体から抜け出し空中を浮遊するのですけれども、主人公にはそれが可視化されて見えるんですね。なので深夜の街はさながら水族館のようで…爪先~と同じように繊細なタッチでそれらが描かれていて、うっとりとしました。
お話しもとても素敵で、主人公には仲のいい同級生がいるのですけれども、彼がうたた寝をする合間に出てきたお魚とのささやかな交流があってしかもその子が懐いてくるんですね。それがもう可愛くて可愛くて、そして懐くということは、なんらかの想いがそこにあることが予測できるわけで…ドキドキしました。
その後素敵なハプニングも起きまして、主人公のお魚が同級生のお魚についていって吸収されてしまいます。これはもう読んでる側としては両想いを充分に感じさせてくれるもので、人の心の新しい表し方というのでしょうか...もう大好きな雰囲気でした。
そしてお相手の方にも可視化の能力が出たことで互いの気持ちを知ることになる…というのも良い流れでした。最初のキスをとまどいながら受けていた主人公が、その後そっと自分からというのも優しい気持ちになりましたね。
短めなお話しなのに心を捕らわれ、良い作品というものは長短関係ないのだな~と思いました。
ちなみに......私はハタタテハゼに似ていると言われたことがありまして、ハタタテハゼがMy best fishとなっております(いらぬ情報)。
ラストのお話しは、主人公の祖父に可愛がられていた狐が祖父の死後、主人公のもとに人に化けてやって来る...というもの。こちらも童話(民話?)を読んでいるようで、そしてこの狐の少年の姿がなんとも可愛らしくて健気で(寝てる間に耳とか尻尾が出ちゃうとか)対する主人公も優しい青年でいいお話しでしたね。
2人で寄り添いながら田舎のお家でずっと一緒に過ごしていってほしいな~…と思ったのですけれども、途中でふと狐の寿命ってどれくらいなのかしら?と真剣に考えてしまい少しばかり切なくなるという経緯をたどりました。。。
さて、個々の物語の印象はこんな感じなのですが、この本には優しいキスシーンがポツポツと描かれていて、さかなの体温然り、爪先~では蝶が留まった助手の指に唇を触れさせてからのキス...とか、その優しい感じが逆にドキドキしました。。
大人の幻想童話として捉えてもいいかもしれません。なんにせよ本当に出会えて良かったです。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
で、似たような感じでご縁があったのがナナメグリさんの『俺と上司の恋の話し』
1巻を読んでそこで終わりかと思ったら3巻まで続いていたという...(1巻2巻ではなくタイトル変わって続くもの)1巻を読んだ時は特に強く響いてくるというわけではなかったのですが、3巻にやられました。
こちらは上司と部下が登場して、部下がノーマル。タイトル通り恋だなんだとワチャワチャが時に楽しく時にしみじみとやはり丁寧に描かれています。でもこちらは上司のツンデレぶりが凄くて部下がおおらかにそれに対峙している感じ...だったのですが、3巻は出向した部下にシングルマザーとの出会いがあって...という、ちょっと笑えないような展開となっていました。
そこでお相手の子供との交流とか行き違いとか悶々とする流れとなっているのですけれども、まあ、その母親との間で何か話しが進むわけではないので良かったのですが、どーにも納得できないことが多々あって、それは部下が「子供がほしいな」と言ってのけたこと。これの何がいけないかというと(私的に)、なんの悪気もなくポロッと自然と言ったことですね。その後ハッとするでもなく、ということは本当に本心で無意識に言ったということなわけで。。描かれていたのがショックを受けた上司の姿のみなのが辛かったです。
そして更にいけなかったのは、距離を置こうとした上司に会いに行くといって行かない...ばかりか、その後も半年にわたり会いに行かなかったこと。毎日メールはしていたようですがね、メールと実際行くとでは雲泥の差がありますよ(よほどの理由がない限り)。出向してからの上司のツンぶりも良くないは良くないのですけど、相手を傷つけてからの部下の態度は何一つ納得できませんでした。
と、怒りで興奮してきたのでお話し的なことは少し置いておいて、このナナメグリさんの好きなところの一つが表情の描き方でした。上司が部下からの‘行けない’というメールを見た時の表情はショックを受けたことがハッキリと分かって、なかなかここまでしっかり書かれたものを見たことがなかったのでインパクトがありましたね。あと、出向が終わって本社に部下が戻ってきてからも、色々と疲弊した上司の表情がずっと暗いままというのも良かったです。パッと落ち込みパッと立ち直るのではなく、それだけ辛い出来事だった...というのがよく伝わってきました。
そろそろお話しに戻って...2人はその後一緒に暮らし始めます。でもしばらくはただそれだけで徐々に徐々に詰まっていく距離。そんな流れも良いな~と思いました。
でもほんと、親しき仲にもで暴言には気をつけた方がいいですね(私含め)。これで大切な存在を失ったり壊したりした人多いと思うのです(私含め)。失ってからでは遅いんだぞ!(←自分にいってます)と、完結巻に魅せられた作品でした。
この流れで、丁寧にお話しが書かれていたことで例外的にもう一つ上げておきたいのが水城せとなさんの『窮鼠はチーズの夢を見る』と、その続編『俎上の恋は二度跳ねる』
とはいえ、本当によく書かれていてなかなかの名作だと思うので、詳しく書くのはもう少し向き合ってからにしたいと思います...なので今は少し?だけ。
これはBL...ですよね?いや、内容はまごうことなきBLなのですけれども、あとがきにてレディースコミックにて連載云々とあったので。ちなみに私はレディースコミックなるものについてよく知りませんで(踏み込む前に漫画熱が冷めてしまったのですヌググ)。なのでWikiで調べてみました...そして理解。
読んでいた方達はどんな印象を受けたのでしょうか...ジャンル違いな気もして全員にすんなり受け入れられたかは分かりませんけれども、とても良い作品なので指示する方は多かったのではないかな~と思います。
この作品は本当に丁寧に丁寧に心の中を描いていると思います(絵もとても丁寧)。色んな葛藤が詰め込まれていて、読んでいて疲れてもおかしくないくらいなのですが、途中でやめようと思わなかったのは、ひとえにこの作者様の力量でしょうね。総体的に漫画やお話しを書くのが上手なのだと思います。
で、気になったので検索をかけてみたら『失恋ショコラティエ』の方でした。私これ、ドラマで見てました(原作は未読)。この方の書いたものならそりゃドラマの原作にもなるだろうな...と素直に納得(ドラマの内容が好きだったかは別として)。それくらいこの二冊(特に俎上)は魅せてくれる作品でした。
その中で今、特筆しておきたい心に残ったストーリーがありまして、主人公と同じようにゾクリともしたのですけど、、、それはタイミングの描き方について。
入院している彼女の元へ別れ話しをきりだしに行く時足止めをくらうのですよね。それを主人公は何かに止められているような…と考えるのですけど、彼女の元へたどり着くと紹介されるはずだった母親と入れ違いだったという…つまり止められていたのは別れ話しではなく、母親と会うことだった、という...。。こういうエピソードを描く所がなんだか凄いなと驚嘆させられましたし、最後の腹のくくり方にしても、そういう唸るようなシーンがこの作品には沢山あります。
表紙の4つのモチーフも興味深かったです(全て後輩のことを表しているのではないかな)。で、もっとこの方の作品を色々読んでみたいな~と思うのですけど、失恋~を見た限りちっちゃ可愛い女子が出てきそうなので拒否感が(←苦手なのです)。なのでBLでもっと読んでみたいですね…無いみたいですけど..。でもまあ、逆に考えると大変貴重な作品ともいえます。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
まだまだ続くタイトルもの。
お次は秀良子さんの『金持ち君と貧乏君』です。
涙腺が元々弱いというのもあるのでしょうけど(年のせいでもあるのでしょうけど)読み始めると涙が滲んで仕方ない作品です。
主人公2人の一方の貧乏具合とか、彼に恋する金持ち君の不器用さとか。そこに織り込まれる彼らの祖父の戦時中の話しとか、読みながらウルウルウルウル。
孫世代の恋は、そっくりそのまま互いの祖父たちでも繰り広げられていて、ただ、金持ち君の祖父の恋は実質的には実らず...想いは隔世遺伝的にそっくりな貧乏君に向けられます(彼らの学校の理事なので、立場を大いに活用している)。その際ちょっと不思議な演出があって、貧乏君と対峙する時のお姿が若かりし頃に戻るという...。とはいえ魔法とかではなくて、祖父と金持ち君との対比を強めるイメージ変換だと思うのですが、それがいい雰囲気を醸し出していました。でも貧乏君は彼が自分を見ているのではないことにちゃんと気づいているのですよね。同時にツンな態度の金持ち君の好意にも。
ただ、途中までは恋愛的に相手を想う気持ちがなくて金持ち君の片思いの流れでしばらく進むのですけれど、ある時ふと心奪われる瞬間のハートに矢が刺さる姿にこちらまでキュンとしました。..想いが通じ合うってなんて素敵なのでしょうね。両想いって、ほんと尊いです。
そして実りはしなかったけれど、祖父組も実は惹かれあっていたと思うのですよ。戦争という出来事により形にはならなかったけれども...なぜなら夏目漱石の存在を知った上で貧乏君の祖父は「月が綺麗だ」という言葉を言っているわけですから(あの世でも待っているみたいだし)。いずれにしても孫世代で叶えられて良かったです。
そして、最後まで性的に触れ合うことはなく、だからこそラストに唯一あるキスの重みがじんわりと響いてきたのでした(この作品ではその流れがベストに思えました)。
ちなみに、表紙カバーをめくった本体ページに本来読み切りで終わるはずだった箇所について作者が述べられているのですが、友人たちの総スカンによって話しが続いたとのことで、友人グッジョブと思いました。欲をいえば学生時代含めようやく実った恋の先、2人が笑いあう姿とかもう少し見たかったですけれども。。何度読み直しても泣けてくる、そんな存在の作品です。
お次はオオヒラヨウさんの『逃げ去る恋をつかまえろ』
私の苦手な社会人もの(大人は色々抱えているものが多くて面倒ナンダナ)。でも、ネッ図書の試し読みか何かで気になり、紙で購入するという経緯をたどりました。
全体としては奇抜なところは何もなく、凄く変わった事が起きるわけでもないのですけれども読み応えがありましたね。そう思わせてくれたのは、この漫画のストーリーにしろ人物の感情にしろ1つ1つ丁寧にきちんと描かれていたからだと思います。こういう作品って沢山ありそうで実は少ないといいますか(短い私史上の話し)、読み終わった後満足できる作品、ちゃんと書かれたものを読んだな~という充足感を味わえる作品に出会えると嬉しくなります。
主人公は高校の時から同級生のことがずっと好きで誠実な青年。お相手はノーマル(恋愛対象が女性)で、モテる系。なので主人公は10年も側で想いながら相手の恋愛遍歴を見守っていくという、なかなかの鬼畜..ゴホッ試練状態に置かれています。不憫よのう...と切なくなりながらも好感がもてたのは、主人公の貞操感でした。色々ふっきるためにいっそ誰かと...となるのですけど、そこから面倒な展開になるのではなく、いざという時ハッキリ拒絶するのですよね(それこそお相手は不憫よね)。だからこそそれを許すことで、いかに片想いの相手を好きだったか強く伝わってくるように思いました。
所々胸を打たれるシーンもあって、相手の結婚を想像し絶望と共に名を呟くとか‘人はさびしい’と悲しむ姿とか、読んでいて辛くなりました。そしていよいよその時...相手の結婚という形が見えた時、主人公は離れることを決意します。私の好きな一端離れてみないか?展開で、それは色んなパターンがあると思うのですけれど、どんな目にあっても側にいるのではなく離れる...そして残された側が相手の存在の大きさを自覚するというのが好きなものとしては正にきたよこれ、でした。
というか、逃げ去る恋を追っていたのはあなたでしたか~といういい意味での意外性もあり(主人公のお相手視点だった)なんとも秀逸なタイトルだと思った次第。
その後はホンワカで、本当に良かったね~としみじみ思いました。唯一気になったのはお相手の元カノからTELがきた際、別れる気はないと示したところでしょうか...主人公らしくないというか。でもこれ考えてみれば、ずっっと我慢していて、ようやくワガママを言えるようになったんですよね...うん。
辛い片想いが実るお話しというのは読んでいて幸せだな~と思えた作品でした。
つづく
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
次は、井戸ぎほうさんの『夜はともだち』
誤解を承知で書きますと、隠れた名作...というのでしょうか。
“隠れた”というのは、やはりBLというジャンル(における作品)には絡みのシーンが描かれたものが多いので、バンと表立つことがなかなかない…という意味です(上手く説明できん)。そしてこの作品にもそのようなシーンは出てきます。が、人間の持つ複雑な感情というものをとても上手く表現されているな~と思いました。
主人公の大学生2人は歪んだ関係というのでしょうか、元々S気質ではない子がM気質の性癖の子にあわせて関係している感じです。恋人同士でもないし、仲のいい友人でもないけれど冷えた間柄でもない。特にS君は相手を思いやれる優しい子。…なので徐々に感情面で破綻し始めるんですね。
とてもシンプルなお話しだと思います。でも、描き方が上手い。
M君の独特の目つきとか感情を表に出さない雰囲気とか、読んでるこちらとしては彼がそういったプレイ(こちらはスニーキーレッドより描写がハッキリしている※踏み込んでます3参照のほど)にハマった経緯はなんだろう?と思ったりもするのですが、実は本当にただの性癖だったようでどうやら普通の子。逆に健全に見えたS君に作り笑いの癖があるとか、周囲の友人たちとの様子から気を配りすぎる繊細な子なのかなと思いました。
物語はこのS君が淡々と状況を分析していく感じで進んでいきます。なので、M君を本気で好きになってゆく過程や相手にとって自分はただの欲求を充たしてくれる相手でしかない苦しみがじわじわと伝わってきて、終盤に向かうにつれて辛くなりました(こう、終盤に向けて盛り上がる作品はストーリー作成の才のある方だとつくづく思います)。
でも、実はM君はM君なりに好きになっていってるのですよね。その描き方も良くて、例えば夢に相手が出てきたり饒舌になったり大切な宝物をプレゼントしていたり。無口で普段は殆ど感情を表に出さないために生じてゆく誤解。。
事態は行き着く所まで進んで監禁状態にまでなるのですけれども、M君の「もうやめようか?」というシンプルな言葉で目が覚めたようで…そこから普通に抱き合うのですけれども、やはり応えられなかったM君の体。そして別れを決意したS君。一端離れてみないか?が好きな私としてはなかなかにツボな展開だったのですが、ここで意外なことが起きまして、M君の方が、約束してくれるならずっと待ってる宣言をします。これはもう愛の告白のようなものだと思うのですけど素直に受け入れられなかったS君。
そして季節は過ぎ、また意外なことにM君が会いに来てしまいます。ここからの、暑い日の下でのやりとりは心打たれました。特にM君が感情を露わにして涙を見せたシーンは本当に良いシーンで、それまで無表情だっただけにハッとさせられたというか、しばらく魅入ってしまいました。。
でも改めて読んでみると、相手の元に向かう前の、自室での静かな時のもっていきかたとかも上手いのですよね…からのM君の精一杯の愛の告白。それがまた独特な言い回しなのも印象的でした。ラストの方には相手の気持ちを考える姿も少し載っていて照れるS君とかほんわかしました。
絵柄的に癖のある方だと思うので好き嫌いが出るかもしれませんし、内容も内容なのでそちらも人を選ぶかもしれませんけれども、…私としては時々出てくる宇宙な感じとか惹かれる部分があり、こうしてじっくり心の逡巡を描いたものを読むのもいいな…と思わされた作品でした。
そしてお次は、はらださんの『ネガ』と『ポジ』
フェアで半額となっておりまして、そういう機会でもなければ多分読むことはなかったろうと思います。タイトルから暗いお話しを想像させるものはやはり躊躇してしまうわけで。。。
まずはネガの感想から。
個性...というより癖?のある作品でした。絵にしても雰囲気にしても。エロティック色が強い感じもあり、そして話しもよくできていました。幾つかのオムニバスでてきているのですが、タイトル通り切ない内容ともなっていましたね…(最後の作品はちょっと笑えましたけど)。
最初に収録されていた高校生の仲良し三人組、うち2人がくっつくのを1人が阻止するお話しは、人の本音を操作する策略があってとても後味が悪かったです。でも、好きな相手をなんとしてもとられたくない気持ちは理解できましたし、そして狙い通り自分のものにできたとしても騙した事実があるから常に不安で虚しさと共にあるという…。
私としてはやっぱり‘両想い’とは尊く稀有なことであると思うので、騙した子はやはり諦めるべきだったのではないかなと。ただまあ、両想いの2人のうち1人が体面を気にしてしまったのも良くなかったのでしょうし、彼女を作って楽しそうにもしていたので同情しきれないような気も(うーん、でもやっぱり実ってほしかったな)。色々考えさせられましたね。
ボディピアスにまつわるお話しは、痛々しくあるのですけれども綺麗だと思った体中のそれらが実は歴代のつきあってきた男たちによって開けられたものだと分かり、突き放すシーンがぐっときました(特に突き放された方の表情)。その後拡張しなおして納得...という流れは、それでいいのか?と思いましたけれども。それにしても専門家のごとき詳しく描かれていて凄いなと思いました。私もピアスは5つ開けましたけど(耳のみで現在は閉じて3つ)平凡な自分が変わるような…という気持ちは分かりますね、実際変わるかどうかは別として。
そして、一番心にぐっときた作品が、同性同士の付き合いをファッション的に(表向き)楽しんでいるペアの悲しくも切ないお話しでした。
お互い凄く好きだけど世間の目と相手の気持ちを気にした結果、訪れた新しい2人の時間。片方が記憶やら何やら失った代わりに素直な心を手に入れて、もう何も気にすることなく気持ちをぶつけるようになる…というのはなんとも皮肉で泣けました。
記憶を失う前のお話しも描かれているのですけど、こちらが特に切なくて、血とともにあらゆる想いが流れ出る表現、愛する人の姿だけは忘れないように魂が肉体に押し込めようとする表現、指先の描かれ方がとても印象的でした。こちらも隠れた名作だと思います。
そしてラストのお話しは女の子が主人公でした。BLで女の子がメインとなって登場すると違和感を感じるのですけど、ここに登場する子は面白可愛くて良かったです。内容も…色んな意味で凄い展開で(描写も非常にハード)、でもなんだか笑ってしまいました。
からのポジを読んだのですが、、、同じ作者の方ですよね?とツッコミを入れている自分がそこに。絵は確かに同じなのですけどポジティブなお話しというより、はっちゃけ系?なんでもありですよ~的な感じでなんだかしみじみ(色々凄すぎて逆に冷静になるパターン)。
こちらもオムニバス形式なのですが、所々ネガで見た才能を感じる部分もありつつ、ネガで見たストーリーの組み立ての美しさがまったく無い(ような)潔さも...という振り幅の広さを感じましたね。ラストのペアのお互い浮気はしない...という流れは良いなと思いました。
それにしてもBLとは本当に広く深いジャンルだなと改めて思った次第。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
気づいた頃(今年だ)には結構な発展を遂げていたBLというジャンル。
相当数発刊されており、どこからどう手を着けていこうか悩みつつも色んなご縁で作品と出会うわけですが...今回はインパクトを受けたタイトルで選んでみました。それらをギャザリング的に綴っていこうと思います。
まずは山中ヒコさんの『500年の営み』
500年という時のインパクトが大きいですね~。何世代にも渡る愛の話しかと想像したのですけど、まさかの1人の人間の500年でした。
SFのようでもあり(表紙もSFチックで素敵)、ファンタジーのようでもあるお話しなのですが、この子が時を物理的に(冷凍人間的に)駆けるきっかけとなった友人との恋がありまして、悲しい理由で途中からその友人に似たアンドロイドとのお話しが主となっていくのですけれども…ちょっと最初に書きますと、正直そのアンドロイドとのストーリーよりも(そちらがメインにも関わらず)友人との恋が読みたい現象にとらわれてしまいまして、殆ど楽しめませんでした(友人はこの世を去っていてもう会えないのです...)。せめてそのアンドロイド君の一部に少年の一部が移植されているとかだったら良かったのかもしれませんけど...生身の少年の魅力が大きかったせいか、そちらが読みたくて読みたくてという感じでした。
で、、、日を置いて改めて読んでみたんですね(1度で判断しないようにせねば)。そしてようやく素敵なお話しだな~と思うことができました。
なかなかに壮大です。考えさせられる言葉も所々で出てきます。なにより.....愛した存在に対する主人公の一途さに胸を打たれました。愛とはなんて尊くて残酷で不思議な感情なんでしょうね....これは一体何なのだろうな……と考えさせられました。
この作品は確かにBLではあるのでしょうけれども全体的には主人公とアンドロイドとの出会いと別れと再会を長い長い年月と共に見守るという感じで、BLの奥深さを改めて感じさせられる作品でした(絡み無しで魅せる系)。二度目に読んだ時は出来の悪い試作アンドロイド君にも魅力を感じられたので良かったですし、その健気なアンドロイド君と主人公が尾瀬という美しい場所で幸せに暮らして行くであろうラストにも救われました。
それにしても“500年の営み”というのは、やっぱり良い響きのタイトルですね。。
お次は秋平しろさんの『いちばん遠い星』
一途に好きでつくすことをワンコに例えるようですが、この作品に登場するカップルの片方はそんなワンコタイプ。
が、、、私はどうもこのタイプが苦手なようでして(ほんとに私の潜在意識に一体何が...)。なので、キュンとくるであろうツボが幾つかありそうなのは分かるのですけど、なかなか感情移入できないという状態で読むことになってしまいました。
で、なんとなく中村明日美子さんの本を読んだ時のことを思い出したんですよね(初読で殆ど萌えなかったというアレ※踏み込んでみた3参照のほど)、なのでこちらも何度か読み返してみてようやく萌え...となった次第。まあ、無理して読み込む必要もないのでしょうけど1度で判断することの危うさを学んだので...(自分面倒くさい)。
この物語に登場するペアは、お互い両想いです。だけど主人公である一方がトラウマをかかえていて素直になれないことで、なかなか恋人同士になれません。先に進む自信が(主に身体的に)ないようなのですね。好きな相手を想うあまり失敗するのが怖いようなのですけれども…で、じれまくった挙げ句出会い系で経験を積もうとする危うい事態となります。運よく出会ったのが知り合い(かつての塾の先生)だったので悲しい事態は回避されたのですが...
が、私がこの作品で一番気になったのは実はそこではありませんでした(というか上手くいえないのだけれども、気になる点がこの作品にはちょこちょこあった気がする)。
それは、なぜ相手を好きになったのか?というところ(でもストーリー的にはあまり重要な箇所ではないとも思われ)。お相手のワンコ君が好きになる過程はなんとなく分かったのですけれども、肝心の主人公のそれがよく分からなくて...告白された時点ではまだ好きではなかったみたいだけど、酔った勢いでキスしてしまっているとか...なんだか茫洋としている感じがしました。
というかワンコ君について“意外と凄い会社に就職して…”とか“意外と仕事熱心で…”とか語っているタイミングが相手のスペック重視に見えてモヤっとしかけたのですけど(違ったようですけど)、読解力が恐ろしく無いのでもう少しどこに惚れたのかちゃんと読みたかったです。あとワンコ君が主人公のことを綺麗だと指摘するのも気になりました(私自身が見目麗しくないので見た目指摘されると無性にざわつく悲しい習性)。
で、先に書いたように出会い系含めワンコ君が精神的にちょこちょこひどい目にあわされています。でも離れようとしません。この場合、お相手の危うさ&素直になれない具合をみると離れなくて良かったのだろうな~と思うのですけれども、一途というのはとても良いのですけれども、なにがあっても離れません的な感じが私はやっぱり苦手みたいです。好きだ好きだ…とくっつき続けるのではなく、ちょっと一旦離れてみないか?と思ってしまうのですよね。。で、も、出会い系でのことを告白されて一端部屋の外に出てすぐに戻ってきてた流れは意外性があって好きだったので、この辺の考えにもゲシュタルト崩壊が発生しつつあります。。。
そんなこんなで、胸に響く先生の深い助言もあったりでようやく恋人同士となれた2人。その後はほっこりしていて、素直というのはやっぱりいいものだな~と思わせてくれる甘く優しい流れとなっていました。噛んで味わいが増すような作品でしたね。
あと絵に関してですけど目の描き方がとってもシンプルでそれが逆に個性的。もうちょっとこう...と何かが気になりつつもスタイリッシュな感じもしましたし、全体に流れるライトで爽やかな雰囲気は誰もが表現できるものでもないと思うので、この絵で更にライトなお話しを読んでみたい気もしました。
そして次は高野ひと深さんの『「す」のつく言葉で言ってくれ』
こちらはですね...勘違いポジティバーが主人公の明るいお話しでした、一見。
読みながら、なんか、なんか明るくなりきれない何かを感じるな~と思ったんですよね、主人公のお相手の雰囲気が気になったというか。で、読み進めるうちそのお相手にとある過去があることが分かりまして...ペアのお話し云々以前に、そちらに物凄く苦手な表現があり駄目だった...という私的展開となりました。
主人公は繊細ながらも全ての物事を超プラス思考でとらえていく可愛い子。そのお相手が過去にかかえていたものというのが、所属していたサッカーチームのコーチと関係を持っていたというもの。姿ははっきり見えませんが、コーチはだいぶ大人で既婚者であるというのも嫌でしたし(傷ついたコーチの息子も登場する)なにより、いたしているシーンの描かれ方(暗い部屋に点くテレビの明かりと裸の少年と大人の男性の手が見開きページで描かれている)というのがトラウマになりそうなくらい駄目でした。
なんか、男々しい大人に若き少年が汚されるような感じ...が無理みたいです。これがなければ単純に笑って読めたかもしれませんけど、主人公が中心のストーリーの明るさで払拭...とはいきませんでした。でも主人公は素敵な子でしたね。相手に告白をそくす「いいか 最初は「す」だ」というやりとりは新鮮で、そして切なくて良いシーンでした。。
さてさて、タイトルシリーズはまだ続きますが、なんだか自分の萎えポイントの多さに萎え始めるという事態になりつつあります。
※BLについて綴っております。ネタバレも含みますので、ご注意をば。
※できれば踏み込んでます1を読んでいただけると...ありがたいです。
*
作家読みということで、魅力的な絵を描かれる宝井理人さんの『花のみぞ知る』も読んでみました。
セブンデイズ、テンカウントときて、これが一番分かりやすかったような気がします。話しの流れ方とか諸々、2作品を足して割ったような印象...でした。
サバサバしたどこか不思議な感じの大学生有川君と、同じ大学で植物研究の助手もしている御崎君(こちらは悩むタイプ)の2人が主人公。絵の雰囲気から最初は爽やかな恋物語かと思ったのですけど結構ドロドロしていましたね。
いつも飄々とした感じの有川君が御崎君との出会いをきっかけに恋心を自覚して、これまでのように自分を上手くコントロールできなくなるのですが、お相手の御崎君には祖父の教え子で大変癖のある執着型の彼(というかご主人様?主従的な意味での)がおりました。最初は勉強を見る感じで色々支えてくれていたようなのですが、それがいつしか歪んだ関係になってしまったようで(...世間への体裁を気にしすぎる相手の問題が大きい)、でも後に有川君とこの方とのちょっとしたバトルというか心理戦があるのですけど‘自分可愛い’の相手と、まっすぐで正直な有川君とでは勝負になりませんでしたね。御崎君の心はとっくに有川君に向いていました。
なので途中じれつつも両想いとなってめでたし...だったのですが(ざっと言ってますけどじっくり描かれています)、ちょっと気になったのがバトった2人の見た目。なんだか似ているのですよ、髪型といい眼鏡を掛けた姿といい。読解力の無い私としてはこれは一体何を意味しているのだろう?と考えてしまいました。似てしまっては相手にかつての想い人の姿を重ねてしまうのではないかな?と。それとも似ていてもかつての人とあなたは違うということなのだろうか…ううむ..(もしや全部気のせいか?)。一方有川君も彼女との別れ話しとかありました。
で、話しはそれるのですけど...私はどーもこういう‘カップルになる2人に別の相手がいた’という設定がやっぱり苦手でして、このお話しではそこが注目箇所ですし、他にもそういう話しは山ほどあるのでしょうけれども(というか一つの基本形な気もする)。このジャンルへの踏み込み始めの時もサラリーマンもの(つまり大人)には過去に色々かかえているものがあって面倒くさい的なことを書きましたけれど、その頃より多少余裕ができつつも基本やっぱり...な感じです。
その流れで読みながら気になっていたのが御崎君が執着型のお相手と進むところまで進んでしまっていたら嫌だな~という心配。でも大丈夫でした(キスはしてましたけど…うん)。まあ両方ともお相手が悪役になりきれていなかったので、納得できたのは救いでした。
そして心を通い合わせた2人が結ばれるシーン...これはテンカウント寄りでしたね。割とハードでした(テンカウントも続きが出ておりましたけれども潔さに拍車がかかっていましたね...)。というかなんでしょう…この作者の方は絵がお美しいせいか、急にソレ的シーンが来ると上手く思考が対応できませんで、それはたぶん私に少女漫画のような繊細な出で立ちの絡みを読んだ経験が殆どないからかも知れません(←なんだかご縁がなかったんだザンネン)。
全体的にはお話しが3巻まで続いたので、そちらはなんとなくセブンデイズ寄りでしょうな、2人の出会いから共になるまでをじっくり見ることができました。
その中で特に良かったな~と思ったのが後半のあまりデレない御崎君のお話し。2人で暮らすようになって、これまで当たり前だった一人暮らしに違和感を感じるとかシャツにすがりついているところを見られてしまうとか、読んでるこちらが照れました(萌え)。
そして、、、このお話しのスピンオフで御崎君の祖父のことを描いた『花のみやこで』という作品があることを知ったので、そちらも読んでみることにしたのですけれども......
ものすごーく落ち込む内容となっていました。。。
昔の時代ですからね、今ほど色々自由ではなかった頃の恋物語…つまり結果的に別れを選んだ悲恋のお話し。前の2人がハッピーエンドだっただけに悲しみも増幅されて辛かったです。しがらみがあるとはいえ、なぜ?なぜ??そちらの人生を選ぶのか???と問いたくなりました。
で、この祖父のお相手にあたる方が御崎君の研究室の先生にあたる人でして、教え子を見つめる優しい視線の奥に深い想いがあると分かり切なかったです(お年をとってからの印象はだいぶ変わってますけれども...この作者の方の書く大人はなんだか可愛らしい感じになる気がする)。
この切なさを癒やしてくれたのが同じ巻の後半に描かれていた“花のみぞ”ペアの同棲とプロポーズのお話しでした。祖父の代で実らなかった“共に生きる”という形がこの2人で実って本当に良かったです。なにげに子供時代に交流があったとか運命を感じられたのも良かったです。
ところで、タイトルに〈花〉とついている通り作品内には植物が結構出てきまして(研究材料ということもあって)その中に白木蓮があったのですけど、花言葉の意味である[自然への愛]を知って、『僕球』の(※熱く語ろう参照のほど)木蓮さんに想いを馳せ、じんとしてしまいました(30年近く経って知るとは...)。他に花言葉のやりとりで互いの気持ちが分かったり作品内のワンシーンが漫画の表紙になっているというのも素敵でした。
というわけで、いつも以上にごちゃごちゃと書いてしまいましたが(上手くまとまらなんだウウ)お話しもさることながら相も変わらずの美しい絵。養子縁組みのことも出てきてましたし、ずっと寄り添って生きていってほしいな~と思う2人でした。