ひょうきちの疑問

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第2次大戦 イギリスがドイツと戦った理由は? 3

2015-01-10 08:48:16 | 第一、第二次大戦

通貨発行権を国が持つか中央銀行が持つかという問題は、近代になって発生した問題である。
この当時もそして現在も、通貨発行権は中央銀行が握っているが、それ以前は国家が握っていた。

ヒトラーはナチス党に入党した当初から、中央銀行が通貨発行権を握っている世界の現状に疑問をもっていた。
ヒトラーは政権をとった1933年から通貨制度の改革に努めている。それも6年の年月をかけてかなり慎重に事を運んでいる。それは独裁者とのイメージとは異なるもう一つのヒトラーの姿である。それが完成したのが第2次大戦が起こった1939年のことである。この年にドイツの中央銀行は『帝国銀行法』によって合法的に国有化されている。
このことによってナチスドイツは通貨発行権を握ったのである。

このことの意味は何か。
ドイツが、イギリスのシティやアメリカのウォール街を中心とする国際金融資本から独立して通貨を発行する権限を手に入れたということである。
イギリスがドイツと戦った本当の理由はここにあるのではないかという指摘もある。

20年前の第1次世界大戦の終了から、ドイツが賠償金の支払いのために、アメリカからの融資に頼っていたことは周知の事実である。
ヒトラーはこのアメリカ金融界からの独立を図っていたのである。
もともと通貨発行権は国家が持つものであった。しかしこの当時、通貨発行権は中央銀行が握っていた。
ヒトラーは通貨発行権を持つ中央銀行を潰すことをせず、中央銀行を国有化することによって、通貨発行権を国家の手に戻そうとしたのである。

今でも中央銀行は国家資本によって成り立っていると考えている人がいるが、これは間違いで、実は中央銀行は民間資本の出資によって成り立っている。このことを理解しておかないとヒトラーのとった行動の意味は分からない。
ドイツ経済はこの当時アメリカウォール街の国際金融資本からの融資によって成り立っていた。
ヒトラーは中央銀行を国有化することにより、自前でそのことを行おうとしたのである。
そうなればヒトラーは思うように中央銀行から融資を受けることができ、その資金を使っていくらでも公共投資をしてドイツ経済を上向かせることができる。
実際ヒトラーの首相就任以来、ドイツ経済は高速道路アウトバーンの建設に代表される公共投資をさかんにすることにより、みるみるうちに回復していった。

その方法は、国家のダミー会社をつくって、その会社に『雇用創出手形』を発行させ、その手形を公共事業の支払金にすることによって実質的には通貨と同じ役割をさせる、という多少今の方式とは違った方法をとるが、要は中央銀行が政府の要求に従って、通貨を発行しているのと同じことである。
これによってヒトラーは莫大な額にのぼる公共投資を行い、その結果ドイツ経済を立ち直らせたのである。

しかしそのことは、世界の金融を支配しているアメリカのウォール街やロンドンのシティの国際金融資本家たちの地位を、低下させるものであった。
彼ら国際金融資本家たちは、そのことを恐れた。

紙幣は富との交換券である。
その紙幣発行権を国家が握ることができれば、国家はあらゆる富を手にすることができる。ヒトラーはそれを公共投資という形で行った。アウトバーンなどの国家の公共財としての富は増え、同時に公共事業に従事して賃金収入を得た国民の富も増えた。
1920年代前半に経験したハイパーインフレにも陥らなかった。
このことはドイツに紙幣が不足していたことを物語っている。
第一次大戦の敗戦国であるドイツは、賠償金という形で国家の富を吸い取られていた。ドイツ国内に潜在的な富はあるが、紙幣が吸い取られていたため、その富を有効活用する手段がなくなっていた。

紙幣がないのなら、別の形で紙幣をつくればよいと気づいたのが、『雇用創出手形』である。この効果は絶大であった。

しかしこれと同時にアメリカは不況に陥っていく。1937年のルーズヴェルト恐慌と言われるものである。ルーズヴェルトについては初期にとったニューディール政策の成功だけがいわれるが、実際にはアメリカはこの政策によって不況を脱してはいない。むしろナチスドイツの経済復興とほぼ時を同じくして、逆に不況に陥ったのである。アメリカが本格的に好景気を取り戻すのは、第二次大戦に入ってからである。

ルーズヴェルト恐慌から2年後の1939年に、それまでドイツに対して宥和策をとっていたイギリスとフランスは、ドイツとソ連のポーランド侵攻をきっかけとして、突然矛先を転換して、ドイツに対してだけ宣戦布告をしていく。

ドイツとアメリカ間で繰り広げられているのは、植民地戦争ではなく、金融戦争である。



ところで日本で今行われているアベノミクスなる金融政策についてだが、安倍政権は、中央銀行を国有化しようとしたナチスドイツと一見すると非常によく似た動きをしている。
今の黒田日銀は、ほぼ安倍政権の思うとおりの動きをしている。
これは日銀が国有化されたのと同じ動きである。
そしてその黒田日銀によって量的金融緩和が行われているのも、ナチスドイツと似ている。日本銀行券という紙幣のバラマキである点では、ナチスドイツよりももっと直接的である。

ではその違いは何か。
ナチスドイツがアメリカの中央銀行からの独立を目指したのに対して、安倍政権はアメリカの思うとおりに動いている。その安倍政権が日銀をなかば国有化するのと同じ動きをしているということは、日銀がアメリカ政府によって取り込まれるのと同じ効果をもっている。
昨年10月末に、アメリカが金融緩和を終了するのとほぼ同時に、日銀が逆に追加緩和に踏み切ったのも、日銀がアメリカ金融界を補完するために使われているということである。
金融緩和によってナチスドイツがめざましい経済復興を遂げたのに対し、今の日本が金融緩和によってもまったくその効果が上がらないのは、金融緩和は同じでもその目的がまったく違っているからである。

アベノミクスとは、日銀の国有化ではなく、日銀の米国化である。日銀を国有化しているのは日本ではなく、アメリカである。
これもアメリカが得意とする金融戦争の一環である。
今、安倍晋三をヒトラーになぞらえるパロディをよく見かけるが、その違いは、ヒトラーが金融戦争に対して自覚的であったのに対し、安倍晋三が無自覚である点である。
ヒトラーは資本主義に対する金融の持つ意味を深く理解していた。この理解があったからこそナチスドイツは経済復興に成功した。しかし安倍晋三がそのことを理解しているかは疑問である。
(私はヒトラーが政治的に正しかったかどうかには一切触れていないことを申し添えておく。)


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