カイロ市内は相変わらずの渋滞。
もうすっかり慣れてしまって、イラつきも焦りもしない。
渋滞なんだから仕方ない。
いつか目的地に着くだろう。着かないのなら運が悪かった、縁がなかったと考えるようになり、心が軽くなった。
しかし、実際にカイロで生活をしている人々やツアー観光客にとって、時間のロスは苦痛でもある。
交通渋滞対策も今後のエジプトの大きな課題だ。
このような渋滞に はまると、いつも思い出す言葉がある。
「インシャー・アッラー」という有名なアラビア語のフレーズだ。
直訳すると「神の御心のままに」
誤解されて伝えられている場合もあるが、決していい加減な約束や仕事などの言い訳では使われていない。
努力して最善を尽くす。しかし、この世界ではそれでもどうしようもない不条理なことが起こる。
その時は慌てず騒がずその事態を受け入れよう、との意味があると私は解釈する。
エジプトの人々はこの言葉を大切にしている。
とにかくエジプトの人々はのびのび大らかだ。細かいことで、ギャアギャア騒がない。(しかし、おしゃべりはすごい!)
ところがこの道中、なんとギャアギャア騒ぐ人物が現れた!
渋滞の中を走行中のバス。
突然!若い男性がやってきて、すごい剣幕でバスのドアをたたき始めた。
ガンガンとガラスが割れるのではないかと思われるほどの勢いだ。
顔を見ると、なにか烈火のごとく怒っている。
何を言っているのかさっぱりわからない、マシンガントークのようなアラビア語をまくしたてている。
車内は騒然となった。一体何が起ったのか?
娘に通訳してもらおう。
「お前!なに俺を はねてんだ!!!お前のバスが俺を突き飛ばしたせいで、俺の身体はすごく痛いんだよ!!!どうしてくれるんだ!!」みたいなことをまくし立てているらしい。
渋滞で気がつかなかったが、はねたんだ!!
………… ドライバーは何も言わない………さて、どうする?!私たちは固唾を飲んだ。
ドライバーは、やっと口を開いて何かを言った。
怒髪天を突いていた若い男性はその言葉を聞いて、両手で心底呆れた!とリアクションをした!
そしてしばらく呆れたような顔をしていたが、諦めて去っていった???
ドライバーの言葉を、再び娘に通訳してもらおう。
「だって、あんたがいること、知らなかったし 見えなかったんだもん!!!」
娘の訳し方がヘンだが、そんなニュアンスだったらしい。
意外なる一件落着で、車中はドッと爆笑!
え~!あんなに怒っていたのに、こんな理由で納得する~?それでいいの?しかし男性は去っていった。
エジプトのスーパーやショッピングモールが見たいというメンバーの要望で、砂漠オアシスロード沿いのカルフールへ。
モールでアクセサリーや靴をお土産として購入したり、フードコートで一息ついたり、スーパーの食材やお菓子、雑貨などを興味津々で探訪してまわった。
パプニングがいろいろ起こった3日目のツアーは、こうしてやっと終了。
太陽の光が温かいオレンジ色に変わり、カルフールのガラス張りの壁面に差し込み始める頃、私たちはホテルへ戻った。
しかし息子と嫁にはまだツアーが残っていた。
娘のピラミッドエリアのすぐ近く、アブルホールストリートにある下宿先へのお泊りツアーだ。
滞在しているホテルから、歩いてでも行くことのできる距離。
あまり灯りの無い夜道を、ラクダ君たちの○○コを踏まずに歩くのがいかに大変だったかと話していた。
この言葉の意味は、私は娘の下宿へ行ってから理解することとなる。
久しぶりの兄妹、嫁の3人で深夜まで、食べたり飲んだり…語り明かしたようだった。
翌朝、踊り場から見えるピラミッドに、はしゃぐ二人。
息子がエジプトを去ってから、娘が気がついた。
玄関ドアの前の砂漠の砂が溜まったフロアに息子の靴跡が。「お兄ちゃんの置き土産だ!」と娘は笑った。
今回息子夫婦が、苦労してでも仕事の調整をしてやってきたエジプト。
エジプトでの妹が元気でいるのかを、自分の目で確かめたかったのかもしれない。
エジプトとうまくやっている、変わらない明るい妹の姿を見て安心したことだろう。
明日はいよいよ4日目。ラスマイ!一日観光は最後の日となる。静かな佇まいの町オールドカイロへ。
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