革命で避難し、そのまま帰国した娘のマンションの荷物の整理や引き払い、
お世話になった方々へのお礼とお別れをしたいという思いもあって、訪れていたエジプト。
ついに最後の夜を迎えてしまった。
その夜を、私たちは最も大切な家族と過ごすことが出来た。
(サウサンの次女モニアは娘の背丈を追い越した)
日本語ガイドのサウサンとは、ツアーで出会い意気投合。
大切な友となってくれた。
そのサウサンにエジプト留学の間、娘はどれほど助けられてきただろう。
毎朝の食事のお誘い、買い出し、病気の時、レジャーにと、実の娘のように可愛がってくださった。
(サウサンの姉の娘ノハ) (ノハの大切な猫、シムシム)
遠く離れたエジプトの地、この目で見ることが出来なくとも、娘のサウサンに対する敬愛ぶりで良く分かっていた。
彼女のお陰で心配することも無く、エジプトの母に安心して娘を託すことが出来ていた。
サウサンの無償の厚意に甘えた二年間。
その友情に報いるには、彼女のお子達や留学生がいつの日か来日した際、彼女のように母の心でお返しをすることだ。
その日が待ち遠しい。
(サウサンの息子・カリーム) (サウサンの姉の息子アムルと長女マイ)
(サウサンの長女ジャスミン)
サウサンの息子カリーム、娘のジャスミンとモニア。
サウサンの姉の娘マイとノハ、息子のアムルの6人とは、まるで兄弟、姉妹のようだった。
時には、娘のアラビア語とベリーダンスの先生。
時には、娘が日本語と日本の遊びの先生。
パジャマパーティを開き、兄弟喧嘩の仲裁もしていたようだ。
みんなで美味しいケーキをいただき、会話し笑いあった。
そんな宝物のような時間は瞬く間に過ぎていった。
別れの時、あまりの名残惜しさと感謝の念がこみあげて、一人ずつゆっくりハグしてまわった。
女性と男性はハグしないというイスラームのタブーを破って、カリームとアムルにもハグをせずにはいられなかった。
「また来るから…また来るから…」と同じ言葉を繰り返して、息子たちの背中をさすっていた。
娘にとって、この二年間のエジプト生活は、何だったのだろうか。
アラビアンナイトの一瞬の夢だったのか、これからも、まだまだ続く現実なのか。
何を感じとり、何を掴んだのか。これからどこへ向かって何をするのか。
娘自身にも、まだ分かってはいないのかもしれない。
娘の人生は、これからも続いていく。
親として、ハラハラするやら、ワクワクするやら…。
まだ暫く見守り続けるよりないのだろう。