ワリードとカフラー王ピラミッドの前で、しばし待つ。
彼の大切なラクダのベブシとドリトスが友人の御者に連れられて
砂漠の向こうから、トコトコやって来た。
ラクダに乗るのも少し慣れてきたが、嫁は初ラクダなので、立ち上がる時と乗った時のあまりの高さに悲鳴をあげた。
さあ、ラクダでサハラツアーへ出発!!
のらりくらり歩くラクダに揺られながら、ラクダの高さから見るピラミッドビューをゆっくり満喫する。
視界の分量が増えて、巨大なピラミッドの石の色と、染みるような青い空、
地の果てまで広がる砂漠の色が目に飛び込んでくる。
しばらくすると、ラクダの横揺れで鞍からお尻がずれてきた。
動物に乗ることに慣れていない私たちは、たまに気合を入れてお尻の位置をたて直さなければならない。
ラクダの高さから落っこちると、怪我ではすまないかもしれない。
と思っていたら、突然!硬い巨石の埋まった下りの坂道をドリトスが走り出した。
「キャーーーッ!」と叫んで、必死に手綱にしがみつく。
ワリードの友人が乗っている馬の耳を、ドリトスが かじったのだ。
馬が「イヤ~ン」と走り出し、追いつくと又かじろうとする。
怒られてやっと走るのをやめたが、も~~、ドリトスは腕白すぎる!!
UAEやカタールでは、ラクダレースがあるが、おっとりしたラクダも本気で走ると結構早い。
40分ほどのウキウキドキドキのツアーを終えて、ワリードとの別れの時が近づいてきた。
エジプト革命直後の新聞で、客の減少によりラクダの餌に困っている御者の記事を読んだ。
愛するラクダを手放すより手段がなかった人もいたとのこと。
失礼だとは思ったが、少し余分に料金を払おうと手渡したが、
ワリードは「いつもどおりでいいから。」と絶対に受け取ってくれなかった。
しばらくワリードと会えない娘も淋しそうだ。
去っていくワリードとベブシを、ずっと見送っていたら、何度も立ち止まって手を振ってくれた。
(おっとりべブシくん)
ワリード、娘と仲良くしてくれてありがとう。
でも又、必ず会いに来るから。
今度はドリトルはこりごり、私は絶対にベブシに乗ろうと固く心に誓っていた。
(マア・アッサラーマ…ワリード)