アナザースカイ エジプトをご覧いただいていた皆様。
諸事情も重なり、長い間 留守にしておりました。
先日 通院する病院の先生より「アナザーはもう書かないの?」と言って頂き、読んで下さっていたのだと、驚き感激いたしました。
ぼちぼちの更新になるとは思いますが、再開いたします。また、よろしかったらお付き合いお願いいたします。
エジプトをアナザースカイだと思っている家族が、実はもう一人いた。
母は79歳で初めてエジプトに渡り、80歳過ぎてからも精力的に旅をし、生涯3度エジプトの地へ降り立った。
エジプトの上天気の中、アルバムの中の母も上機嫌で楽しそうだ。
90歳を迎えようとしていた昨年、名古屋で一人暮らしをしていた母が突然体調を崩した。
母は高齢になっても父のテーラーの看板を引き継ぎ、大好きな洋服直しの仕事を続けていた。
私の家で療養生活が始まったが、仕事が出来ないことが寂しいのか元気がない。
幼い頃、わんわん物語のレディちゃんなどをスカートにアップリケしてくれた事を思い出した私は、それを勧めてみた。
母は、嬉々としてエジプトモチーフのアップリケを完成させていき、フェルト生地を何度も買いに走った。
完成したアップリケをフェイスブックに投稿したら、
翠微洞(すいびどう・古代文明グッズの通販店)さんが、母を励ますためサイト上で展覧会を開いてくださった。
母はそのサイトを嬉しそうに何度も見て、見舞いに来た叔父叔母達に自慢していた。
それがご縁となり「エジプト世界駅」編集長ご夫妻のご厚意で、東京プロムナードの展示品に加えて頂けることとなった。
母はお申し出に驚き、稚拙な作品だとしきりに恐縮していたが、心から嬉しそうだった。よく笑うようにもなっていった。
そして、その後また驚くべきニュースが!
エジプトの有名新聞アル・アハラーム紙 英語版に作品の写真が掲載されたことを知った。
エジプトのお陰で嬉しいことが次々と起きる。
しかし母は6月20日 約半年間の療養生活に終止符を打ち、私達の元から旅立っていった。
最後まで朗らかで穏やかな母のままで逝ってくれた。
すべてを終え、母のことをゆっくり思い出す。
とても母に会いたい。
そんな時、心に区切りをつけ、穏やかに母の死を認めることができるきっかけとなったのは、「エジプト世界駅」からの母の思い出の投稿依頼だった。
依頼というよりも、編集長夫妻のお心遣いだと有難くお受けして、明るかった母にふさわしい一文を書かせて頂いた。
載せて頂いた自分の記事を何度も読んだ。
読むたびに、思い出してクスッと笑える。
楽になった。
母は良き人生を送ったのではないかと。
母の遺品を整理していて手帳が見つかった。
2006年のエジプトの旅のメモ。日本語ガイドさんの話を一生懸命メモしていたのだろう。
私達よりも、よほど丁寧な良い旅をしていたのだと感心した。
疲れをしばし癒すため 休んでいる母の背中と 列柱の間から漏れる夕日が、美しい。
確かに こんな瞬間が、私達の時間の中で存在した。
今、はっきりと 愛おしく 思い出している。