14時間以上のフライトを経て、乾いた暑さと独特の大気の臭いがする カイロ空港に降り立つ。
「ラウサマフト!ワーへド ターベア ビーザ」(ビザをひとつ) と初めてアラビア語を使い、
入国審査で「アッサラーム アレイクム!」とあいさつすると、エジプトにやってきたと実感する。
トランクを探し出し 出口の方を見ると、娘が満面の笑みでブンブン手を振っている。
久し振りだ!元気そう!日にもあまり焼けていない。良かった!!
オーバーにハグしてくる。ちょっと恥ずかしいが 異国の地。 まあ いいか。
外へ出ると 暑さがどっと襲いかかる。空を見上げると 雲ひとつないエジプトブルー。
エアポートロードのアラビア語の道路標識。たくましく立つ椰子の木。
まぎれもなく エジプトだ。
さあ!これから2週間 娘との久し振りの生活が始まる。
あまり 喧嘩をしないように心がけよう。
強烈な太陽をキラキラと映す、ナイルに浮かぶ小さな島。
そのフィラエ島まで舟で行く。
島の輪郭をたどるように、緑が青々と生い茂る美しい島。
まもなく優美なイシス神殿が見えてくる。
古代エジプトの神々の1人で、イザナミノミコトのような存在であるイシス女神の神殿である。
彼女はオシリス王の妻でなんとエスパーだった。
夫オシリスは王権争いで弟のセトに殺され、体をバラバラにされてしまう。
そこでイシスはオシリスの体を集め、包帯でグルグル巻きにして、愛と超能力の力で蘇らせる。
これがミイラ作りのルーツだといわれている。
彼女は聡明で愛にあふれ、能動的で超能力者。卑弥呼のイメージもある。
このイシス神殿は、他のダイナミックなエジプトの建造物と比べると、洗練された都会の女性を思わせる美しさがある。
だからエジプトの人々もこの神殿とフィラエ島を「ナイルの真珠」と呼ぶ。
オシリスを蘇らせるために大変なパワーを要したので、
一夜にして老婆のようになってしまったという一説もあるイシスの愛。
ナイルの真珠の美しさの内に秘めた凄まじい愛情の物語を知ったとき、
感動と同時に少し恐ろしさも感じたのは私だけだろうか。
人なつっこい、よく笑う、スキンシップが好き、外でよく遊ぶ、汚れても平気、兄弟姉妹おもいだが、けんかも派手にする。
親の言いつけを守る、よく食べる、たえず動いている、そして本当に人生が楽しそうである。
仲の良い近所のモニアとノハは、再会したとき飛びついてキスしてくれる。
外出する時は、手をつないで歩いてくれる。
お土産を「オウ!ヘルワ!ヘルワ!」(可愛い!最高!)と心から喜んでくれる。
やたらアラビア語の発音を教えてくれる。
帰国する時は、大きな瞳からポロポロ涙を流し号泣してくれる。
娘がエジプトで頑張れるのも、私の足がエジプトへ向いてしまうのも、彼女たちの魅力によるところが大きい。
もう、会いたくなってきた!
ハン・ハリーリの中にある、鏡のマクハーへ行ってみた。
テレビでハン・ハリーリが紹介されると、必ずと言っていいほど登場する。
被写体としても面白いので、プロのカメラマンもよく姿を現す。
アンティークなアラブ文様の木枠に囲まれた大きな鏡を、店内はもちろん
外の通りにも張りめぐらして、奇妙な空間を作り出している。
この店の一角でシャーイ・ビ・ナーナー(ミントティ)を注文する。
買い物に疲れた体に、ミントの香りと清涼感が心地良い。
お茶を飲みながら、ゆっくりまわりを見わたすと、まさにここはアラブの世界。
見慣れぬ様式の建物が独特の色彩で彩られ、テーブルと椅子が処狭しと並べられている。
アホワ(コーヒー)とシーシャの香りが漂い、アラビア語が飛び交う。
いまさらながら「ここはエジプト!」と感じる。
店の奥に東洋人!! と思ったら、鏡に映った娘と私の姿だった。
いにしえには、テーベと呼ばれていたルクソールへやってきた。
テーベ…そうだ!ドラクエⅢの世界にあったあの町と同じ名だ。
そのテーベの南、ルクソール神殿の入り口に立った。
シンメトリーを信条としている古代エジプト建築。
にもかかわらずオベリスクが1本しかないのは、
エジプトマニアのナポレオンにモハメット・アリが気前良く進呈してしまったからだ。
現在は海を隔てたパリの地、コンコルド広場に燦然とエジプト色を放って立っている。
また、元気印のラムセス2世には、エジプト中どこへ行っても会うことができる。
ここルクソール神殿でも、悠然と鎮座している。
(キリスト教の絵画の跡が見られる) (トトメス3世の胸像)
野ざらしの美術館ともいえるこの神殿にも、永い時が流れていた。
ローマ時代は砦にされたり、砂に埋まった神殿の上にモスクが建ってしまったり、
コプト教(エジプトキリスト教)の教会としても使用されていた。
穏やかなテーベの地、夕日に照らされ逆光の中、この老いた神殿はこよなく優しく美しく見えた。
カイロからルクソールまでの寝台列車の旅に出発!
(駅の売店)
コンパートメント方式の機能的で清潔な車内に心が弾む。
私達だけの贅沢な空間に落ち着くと、まもなく列車はゆっくりと動き始めた。
日干しレンガの家並み、なつめやしの群生、低く広がる岩山が飛ぶように過ぎ去っていく。
夕涼みをしている人、ロバにゆったりと乗っていく人、立ち話しをしている人、
そんな人達を一瞬とらえると、ちょっと降りてその地の風に吹かれてみたい衝動にかられる。
(車掌さんと)
(車掌さんが運んでくれた夕食)
列車は単調に走り続け、やがて外は少しずつ闇に包まれていく。
時折通過するどこかの小さな駅のプラットホームの灯りを眺めているうちに、
心地よい睡魔がおそってきた。
明日は、いよいよルクソールに到着する。
期待を胸に…それでは おやすみなさい。
古代アレキサンドリア図書館が戦火によって燃え上がり、クレオパトラが泣き叫んで悲しんだという映画のシーンがあった。
(図書館の外壁に世界の文字が彫ってある)
そのアレキサンドリア図書館が現代によみがえった。
まるで劇場のようなエントランスを通って階段を降りていくと、膨大な量の書物が目に飛び込んでくる。
この図書館の特出すべき点は、あらゆる国の言語の書物が集結しているところにある。
「コスモス」の著者カール・セーガン博士によると、ビッグバンを1月1日と仮定すると
地球の誕生は9月14日、人類の出現は12月31日午後10時30分ぐらいだそうだ。
この宇宙カレンダーで考えると、人類の歴史はまだ始まったばかり。
にもかかわらず、人類のこの感動的な努力の跡はどうだろう!
私にとっては、なんと多くの未知の知識が眠っていることだろう。
この中の一冊の本ですら満足に理解できずに、この世から消滅してしまうのはあまりに悲しい。
そうだ、もっと本を読もう!
(すぐ近くにあるアレキサンドリア大学)
エジプトへ行けば数々の世界遺産を見ることが出来る。
のみならず世界の英知が集結した遺産にも出会えるのだと感じた。
煙を水に通して楽しむアラブ特有の煙草である。
フレーバーはリンゴ、バニラ、シナモン、ジャスミンなど…
町を歩くと、老人が自分の家の前で椅子に座り、街ゆく人を見ながらプカリ。
マクハー(喫茶店)でも、みんなでまわしてプカリ。
老いも若きも、男性も女性もお茶と会話を楽しみながらプカリ。
アラブ文化には欠かせないアイテムのようだ。
器具の形状が大型の香水ビンのようで美しい。
喫煙するには、なかなかの肺活量を要する。
ひとつのフレーバーで1時間程楽しめるが、タバコ100本分に匹敵するのでご注意を!
エジプトでも嫌煙運動が進んでいる中、シーシャだけは別扱いらしい。
普段タバコを吸わない人も、マクハーでは紫煙を漂わせてくつろいでいる。
シーシャは一息つく、一服するという言葉が似合う。
次のステップのためのひとときの、必須アイテムなのかもしれない。。
埃及(エジプト)の空の下、シーシャの香りは流れる…ってところか。