アラブ人やエジプト人が、いかにラクダを大切にしているかは以前お話したとおりだが、
私の知っているラクダ引きのワリードは、本当にラクダを可愛がっている。
ラクダ引きとは、観光客をラクダに乗せピラミッドを巡ったり、写真を撮ったりすることを生業にしている人たちである。
ワリードはムチをカッコつけて持ってはいるが、使ったところを見たことが無い。
お客を降ろして一仕事したラクダをよしよしと撫でてやる。
ラクダは歯をむき出しにして、泡を飛ばしながらブヒブヒ喜ぶ。
一昨年エジプトを訪れ、ピラミッドでラクダに乗ろうと思った時、一番初めに声をかけてきたのがワリードだった。
その後、多くのラクダ引きの人たちに取り囲まれて大変な事になったので、
「この人のラクダに乗るから!」と大きな声で叫んで、最初から熱心に勧誘していたワリードのラクダを選んだ。
そこでサングラスをとったワリードの顔を見てびっくり!
どうみても東洋人。
笑ってしまった私たちに「本当にこれでもエジプト人だよ!でも日本人に似てるのうれしいさ。」
と言ったワリードをすっかり好きになってしまった。
それ以来、娘もラクダはワリードと決めて、安い料金で友人や知人を乗せてもらっていたようだ。
ピラミッドに芸能人が来たら知らせてくれることにもなっているらしい。
(ラクダにチューするワリードの弟子)
そんなワリードから、まもなく一時帰国する娘に「ママにあげるお土産を渡したい。」と連絡が入った。
早速ピラミッドの近くの喫茶店で待ち合わせることになった。
先に着いた娘がのんびり待っていたら、「チアキ!チアキ!」と上のほうから声が…
何気なく上を見た娘は自分の目を疑った!そこには驚くべき珍百景が!!
ワリードはなんと!ラクダに乗って喫茶店にやってきたのだ!
ラクダと一緒に笑ってビックリする娘を見下ろしていたそうだ。
しかもいつもの砂漠の砂にまみれた営業用のガラベイヤでなく、ポロシャツでパリッと見違えたワリードが。
そしてパピルスと香水を娘にあつらえてくれた。
心のこもったラクダ引きのおじさんの贈り物。
その贈り物を眺めていたら、ピラミッドの前で愛しいラクダとたたずむ
ワリードの東洋人のようなニコニコ笑う顔が浮かんできた。
ラクダを愛する心優しきおじさん。律儀なところもある愛すべきワリード。
娘の大の仲良し。
私も大好きである。