2012年12月17日記す
この写真は、今から約8年前、2度目のエジプト旅行で撮影したものです。
カイロ中心部に、ラムセス中央駅という、各地方からの列車が乗り入れる鉄道の駅があり、その周辺をラムセス広場と呼んでいます。
この広場には、エジプト各地に彼の建てた遺跡や石像が多数存在することから「建築王」と呼ばれたファラオ、ラムセス2世の巨大な像が堂々と立っていました。
エジプトには、100年以上もの歴史を持つエジプト考古学博物館があります。
日本や他国の博物館の様に凝ったディスプレイでもなく、収蔵物が多過ぎて館内に収まらず、外庭にまで飛び出してしまっていますが、
私はこのアンティークな博物館が大好きです。
飾り気のない博物館内に、吹き抜けになった天井からエジプトの強い日差しが差し込むと、タイムスリップしたかのような錯覚に陥り、
何度訪れても全て見て回れない程広い館内を、夢中で歩き続けてしまいます。
そして何といっても、その場から動けなくなってしまう程美しいツタンカーメン王の遺物。
少し哀愁を帯びた丹精な顔立ちの少年王の黄金のマスク。
観光オフシーズンを狙って行っては、静かな館内で、彼の正面に立ち、長い時間見つめるのが好きです。
しかし、この博物館の老朽化と収蔵物の多さから、もう一つ博物館が建設されることになりました。
その名も「大エジプト博物館」。
以前お会いした日本人関係者の方が、「発掘した遺物を、また考古学博物館から発掘しなくちゃいけない状況なんです」
とおっしゃっていた程エジプトには貴重な遺物が多いのです。
その新しい博物館に展示するため、ラムセス広場のラムセス像が引っ越すことになりました。
そしてこの写真は、以前私が暮らしていたマンションのベランダから撮影したものです。
引越し後のラムセス2世像が奥に見える箱の中にいます。
借りたマンションのすぐ近くが、大エジプト博物館建設予定地でした。
毎日ラムセス2世像を見守りながら、博物館が完成したら絶対に入りたい!と願い続けていました。
そして遂に先日、長年の想いが通じ、夢が半分叶うことになりました。
博物館建設予定地と、併設されている保存修復センターを、エジプト隊員で見学させてもらえることになったのです。
この博物館プロジェクトは、日本が支援を行っていて、JICAからも専門家が派遣されています。
現地スタッフの知識・技術の向上や、遺物データベース作成、遺物の運搬にも、日本の技術が活かされているのです。
真っ白な部屋で白衣を着て慎重に修復作業をする専門家の方たちを見て、こんな場面映画やテレビでしか見たことがない!と興奮し、
日本の方が行った熱心で誠意のある研修の映像を見て、同じ日本人としてとても誇らしく思いました。
そして最後に、あのラムセス2世像の足元まで行き見上げた時は、やっとここまで近づけた…と大興奮でした。
大エジプト博物館の完成予定は、私の協力隊任期終了後ですが、エジプト人と日本人との共同作業の集大成を見届けるため、
再びここに来たいと思います。必ず!