アナザースカイ エジプト

もうひとつの故郷のように感じるエジプト。たびたび訪れるエジプトのフォト旅行記をご覧下さい。

2.エジプトと革命と協力隊 娘のJICAレポート

2016年11月18日 | 日記

09/18/2012

私とエジプトとの縁は大学一年生の夏休み、母と二人でエジプト旅行に出掛けたことから始まりました。

                           

生まれて初めての海外旅行。

飛行機に乗って13時間、辿り着いたその場所は、文化も言語も気候も日本とは全く異なる魅惑の国でした。

初めてカイロの空港に降り立った瞬間の、強い日差しと乾いた空気、砂とらくだのにおいは、

当時日本しか知らなかった私にはとても強烈で、今でもはっきりと覚えています。

         

                             

圧倒的な存在感のピラミッド、摩訶不思議で美しいアラビア文字、幾重にもなって響いてくるムスリムに祈りを呼びかけるアザーン、

人懐っこく朗らかで逞しい国民性、砂にまみれた埃っぽい町並み。

全てが新鮮で、その全てに私は魅せられました。

旅行から帰っても頭の中はエジプト一色。まるで遠距離恋愛でもしているように気付けばエジプトのことばかり考えていました。

カイロの喧騒や賑やかな人々の声が聞こえてくるエジプト。これはもうエジプトに住むしかない。

         


                        

大学を卒業し、2年働いてお金を貯め、片道航空券を買ってカイロへ。

もういいや!と思うまでいようと決めていました。


                        

ギザの三大ピラミッドが見えるマンションで始まった念願の生活。

人生初の一人暮らし。

                       


アラビア語を勉強し、現地の旅行会社で働き、沢山の友人ができました。

もちろん日本の便利で快適な生活とは違い、苦労することも沢山あったし、

アラビア語が分からず悔しい思いをしたこともありました。

それでも毎日、笑顔を絶やさない彼らから数え切れない程の親切を受け、

苦労なんて忘れてしまう。

そしてその度思う、

「あー、だからエジプトって好き。」

エジプトは、決して裕福な国ではないけれど平和な国だと思っていました。

貧しくても、笑顔で逞しく、みんな楽しそうに生きている。

みんなそれぞれ幸福なのだと。

そんなことを感じながらカイロでの生活も間もなく2年を迎えようとしていました。

そして2011年1月25日、突然起こった大規模デモ、エジプト騒乱、そして革命。

ようやくそこで私は、初めてエジプトの人々の叫びを聞き、

本当の苦悩、問題を目の当たりにしました。

           

30年にも渡る前大統領の独裁政治。

政府の汚職、不正に行われる選挙、止まらない物価の高騰、悪化する失業率。

反政府組織は警察から酷い拷問を受け、罪のない若者が沢山命を落としました。

エジプト国民は苦しみながらも、声を出すことも許されず、

ただ我慢するしか生きる方法がありませんでした。

 

       

しかしついに、若者たちが意を決して立ち上がり、

フェイスブックやツイッターを使ってデモを呼びかけ、

過去最大規模の反政府デモとなったのです。

エジプトの若者のパワー、自分たちの力で自分たちの国を変えられるという

強い気持ちと信念に心を打たれました。

 

                     

しかし私は退避勧告が出されたため日本へ一時帰国。

帰国後もパソコンに張り付き、祈るような気持ちでエジプトの様子を見ていました。

そして、私はまだエジプトのほんの一部分しか見てなかったのだと感じました。

嫌な部分や辛い場面から目をそらし、見ないふりをして暮らす方が楽しい、

でもそれじゃあ本当にエジプトが好きだとは言えない。

 

今回は協力隊として出直し、今までとは違う方法でエジプトと接し、

違う視点で、エジプトの隅々までこの目でしっかり見てこようと決めました。

エジプトが新しい国に変わろうとしている今、

再びそれをこの国で感じられるのはとても幸せです。

                   

エジプト史上初民意で選出された大統領が決まりました。

時間はかかるかもしれないけれど近い将来、

全てのエジプトの人々にとって良き政治が行われる日が来ることを、強く願います。

 

 

 


JICAワールドレポート 1.自己紹介

2016年11月04日 | 日記

1.自己紹介

09/04/2012

私は2012年3月26日よりエジプト・カイロに派遣され、子ども・青少年・女性支援活動など幅広く行っている現地のNGOで活動中です。

この事務所で働くスタッフは25名。平均年齢36歳(推定...)、女性と男性の割合は半々、

イスラーム教徒とコプト教徒(エジプトのキリスト教徒)の割合も丁度半々くらい、知的で優しく楽しいスタッフばかりです。


                                                                                      

                           

このNGOは、私の活動している事務所以外にもカイロ市内に2ヵ所、ファイユーム(カイロからおよそ車で2時間程の県)に1ヵ所、計4つの事務所があります。

事務所内は、経理や広報など担当やプロジェクトごとに部屋が分かれています。

私にも大きいデスクとパソコンが用意されていました。なかなか立派な事務所です。

                                                                              


私の仕事は、女性の収入向上・自立を目標に、エジプト各地の女性たちが作っている商品を集め、それをカイロで販売することです。

エジプトの観光地でお馴染みの商品から、地元の人が行くスーク(市場)でよく見るエジプト綿のベッドカバーや洋服など、取り扱う商品の種類も様々。

エジプトには、現地の女性たちと一緒に商品をデザインして作っている先輩隊員がいるので、オリジナルの商品も沢山あります。

これから活発にPRし、販売の機会を増やしていきたいと思っています。


                                                                           

 

また週に二日、事務所の近くに住む子どもたちを集め、

歌やゲーム、サッカーで遊んだり、エジプトが抱える問題(交通マナー、ごみ、宗教など)について子どもたちに考えてさせ、話し合う場を設けています。


                        


この活動には、事務所のスタッフ以外にも、カイロに留学している外国人ボランティアが参加することもあり、

子どもたちにとっては、ちょっとした国際交流の場でもあります。

先月、2ヶ月ほどこの活動に参加してくれていたフランスの学生ボランティアが帰国しました。

「英語を学ぶことは大切だと思う?」という私たちスタッフの問いに対し、子どもたちから「将来の仕事に繋がるかもしれないから」「世界中の人と話せるから」

という様々な意見が出たので、彼に週に2回英語教室を開いてもらっていました。


                         

 

 帰国する直前には、生まれ育った国について写真を見ながら話してもらいました。

教科書や本から知ることも大切ですが、友人から教えてもらうことの方が、より印象深く子どもたちの記憶に残るのではないかと思います。

 

                                                                           


あるスタッフが「英語とアラビア語、どっちが母国語だとよかった?」と子どもたちに質問したところ、

「アラビア語の方が難しいって聞くからアラビア語!」と答える子どもがいましたが、

中には「クルアーン(イスラームの聖典、コーラン)の言葉だからアラビア語」と答える子どもも数人いました。

幼いとはいえ、既に厚い信仰心を持って生きていると感じます。

 

イスラームとは、ムスリムの人々の心に深く関わり、生き方の指針をしめす大切なものなのだと、

エジプトにいると宗教について考えさせられる時間も多くなります。