09/18/2012
私とエジプトとの縁は大学一年生の夏休み、母と二人でエジプト旅行に出掛けたことから始まりました。
生まれて初めての海外旅行。
飛行機に乗って13時間、辿り着いたその場所は、文化も言語も気候も日本とは全く異なる魅惑の国でした。
初めてカイロの空港に降り立った瞬間の、強い日差しと乾いた空気、砂とらくだのにおいは、
当時日本しか知らなかった私にはとても強烈で、今でもはっきりと覚えています。
圧倒的な存在感のピラミッド、摩訶不思議で美しいアラビア文字、幾重にもなって響いてくるムスリムに祈りを呼びかけるアザーン、
人懐っこく朗らかで逞しい国民性、砂にまみれた埃っぽい町並み。
全てが新鮮で、その全てに私は魅せられました。
旅行から帰っても頭の中はエジプト一色。まるで遠距離恋愛でもしているように気付けばエジプトのことばかり考えていました。
カイロの喧騒や賑やかな人々の声が聞こえてくるエジプト。これはもうエジプトに住むしかない。
大学を卒業し、2年働いてお金を貯め、片道航空券を買ってカイロへ。
もういいや!と思うまでいようと決めていました。
ギザの三大ピラミッドが見えるマンションで始まった念願の生活。
人生初の一人暮らし。
アラビア語を勉強し、現地の旅行会社で働き、沢山の友人ができました。
もちろん日本の便利で快適な生活とは違い、苦労することも沢山あったし、
アラビア語が分からず悔しい思いをしたこともありました。
それでも毎日、笑顔を絶やさない彼らから数え切れない程の親切を受け、
苦労なんて忘れてしまう。
そしてその度思う、
「あー、だからエジプトって好き。」
エジプトは、決して裕福な国ではないけれど平和な国だと思っていました。
貧しくても、笑顔で逞しく、みんな楽しそうに生きている。
みんなそれぞれ幸福なのだと。
そんなことを感じながらカイロでの生活も間もなく2年を迎えようとしていました。
そして2011年1月25日、突然起こった大規模デモ、エジプト騒乱、そして革命。
ようやくそこで私は、初めてエジプトの人々の叫びを聞き、
本当の苦悩、問題を目の当たりにしました。
30年にも渡る前大統領の独裁政治。
政府の汚職、不正に行われる選挙、止まらない物価の高騰、悪化する失業率。
反政府組織は警察から酷い拷問を受け、罪のない若者が沢山命を落としました。
エジプト国民は苦しみながらも、声を出すことも許されず、
ただ我慢するしか生きる方法がありませんでした。
しかしついに、若者たちが意を決して立ち上がり、
フェイスブックやツイッターを使ってデモを呼びかけ、
過去最大規模の反政府デモとなったのです。
エジプトの若者のパワー、自分たちの力で自分たちの国を変えられるという
強い気持ちと信念に心を打たれました。
しかし私は退避勧告が出されたため日本へ一時帰国。
帰国後もパソコンに張り付き、祈るような気持ちでエジプトの様子を見ていました。
そして、私はまだエジプトのほんの一部分しか見てなかったのだと感じました。
嫌な部分や辛い場面から目をそらし、見ないふりをして暮らす方が楽しい、
でもそれじゃあ本当にエジプトが好きだとは言えない。
今回は協力隊として出直し、今までとは違う方法でエジプトと接し、
違う視点で、エジプトの隅々までこの目でしっかり見てこようと決めました。
エジプトが新しい国に変わろうとしている今、
再びそれをこの国で感じられるのはとても幸せです。
エジプト史上初民意で選出された大統領が決まりました。
時間はかかるかもしれないけれど近い将来、
全てのエジプトの人々にとって良き政治が行われる日が来ることを、強く願います。