振り返ればエジプトとの縁は、2003年から始まった。
何度も訪れるたびに、友人や馴染みの場所、店も増え、一期一会の観光国から第二のふる里へと変貌していった。
「エジプトばかり行って飽きないの?」とよく聞かれるが、アナザースカイだと勝手に思っているので飽きることはない。
2003年 初めてのエジプト
2003年、娘にとっては初めての海外旅行、病気をしていた私にとっても久しぶりの旅行だった。
高揚した気分で降り立ったカイロ空港の印象は強烈だった。
乾いた熱気と風にそよぐ椰子。
洪水のように押し寄せてくる早口のアラビア語の渦。
見上げれば、エジプトの空は雲ひとつなく、幼い頃の心弾んだ夏休みのような活気を思い出していた。
2004年
ひっきりなしの車のクラクションはうるさいけれど、どこか滑稽で
恐ろしく上手いドライバーテクニックに、身体を右に左に揺らしているうち、なぜか「この国が好きだー!」と本能が叫んでいた。
2006年
観光バスから外を眺めると、昼下がりをのんびり過ごす男たちが見える。
目が合うと、ニマーッと笑って手を振る。女性も子どもも素敵な笑顔で手を振ってくれる。
穏やかで、親切で、お節介で、押しが強そうに見えても、実はシャイなところもある国民性はかなり魅力的だ。
2008年
砂漠の砂にまみれた町並みも、大らかな人柄も、昭和の香りがする。
日本へ戻って時が流れ、次の旅行の行先を考えようとしても、頭からエジプトが離れない。
エジプトにやられてしまったようだ。
2009年 エジプト在住
エジプト人の大学の先生が、「エジプトはアラブでも、アフリカでも、ヨーロッパでもないアイデンティティの無い国ですよ。」
と自嘲的におっしゃった。
イスラームに凝り固まってもいないが、信心深い。
アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなどの文化を受け止める懐の深さもある。
白黒をはっきりつけない曖昧で底の深い文化の中で育った日本人には、フレキシブルなエジプトは心地いいのかもしれない。
2010年
まあ、そんな面倒な分析は置いといても、日本人にはエジプト好きが多い。
2011年
でも先生は、こうもおっしゃった。
「いや~、エジプトは日本に片思いですよ。日本人がエジプトを好きでいて下さるより、エジプト人は何倍も日本が大好きだから!」と。
私は先生に申し上げた。
「いやいや、両想いの日本人を多く知っております。まず先生の目の前にいる日本人はエジプトにがっちりハートを奪われております。」と。