赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

国家機能の限界-近未来予想図③ コラム(321)

2020-01-23 12:00:00 | 政治見解



コラム(321):国家機能の限界-近未来予想図③


前回の「IT革命がもたらす新しい世界を受けて、未来の社会がどのように変化していくのかを何回かにわけて述べていきたいと思います。


トランプ大統領の役割は世界中の国家機能の体系的廃棄

世界の国々の状況を眺めると、国家や政府の崩壊現象が世界規模で起きております。

このままでは、いま私たちが当然のこととしている国家や政府の機能は意味のないものになると思われます。信じられないことだとは思いますが、すでにその動きは出始めているのです。

例えばアメリカは、トランプ政権によって経済は好調に推移していますが、実際には南北戦争以来の大きな国論の分裂に見舞われています。トランプ大統領の国家を強固にする方針が、逆にアメリカの建国の理想を破壊させる方向につながっていることを意味します。

こうした現象を善悪の観点ではなく「体系的廃棄」という視点で見ると、トランプ大統領はその実践者として新しい価値観を生み出すための地ならしの役割を果たしているように見えます。

トランプ大統領の行動は、国内だけにとどまらず、中国、韓国、北朝鮮、イスラム世界にまで影響を及ぼしています。強い軍事力を背景とした圧力によって、それぞれの国家の隠されていたエゴイズムまでも暴露してしまいました。

トランプ大統領に敵対する勢力や国家にとっては破壊者に見えるかもしれませんが、イノベーターの先駆者という視点で見ると、トランプ大統領は価値観に変革をもたらす傑出した人物であると言えます。


あらゆる国家が機能不全に陥っている

トランプ旋風によって最も苦境に立っているのが中国です。米中貿易摩擦を通して、中国が虚構の経済大国であることを世界中が知ることになりました。中国はプライドを捨ててまでトランプ政権に妥協せざるをえない状況に陥っています。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミック化によって中国の国家機能が不全に陥っていることが明るみに出てきました。かつての中国であれば春節であっても全国民に強制的に国内移動禁止措置を発令することができたはずですが、政府は武漢の公共交通機関を一時閉鎖するにとどめる程度で、その場しのぎの対応しかできなくなっています。

また、中国の国内経済の低迷は深刻さを増し、見かけとは違い脆弱な国家体制であることを露呈しています。このままでは2022年の冬季五輪後には国家として存続できているかは極めて疑問があります。

一方、近隣諸国も、朝鮮半島の韓国、北朝鮮は経済破綻状態で、それぞれの政府は事態打開への方策が見出せません。また、広大な領土をもつロシアは深刻な経済状況を抱え、プーチン大統領も手詰まりの状態が続き、国民の不満が鬱積しています。

いずれの国もかろうじて国家としての体面を取り繕っているのです。

こうした国家の不安定な状況は、イギリス、EU諸国、イスラム諸国、アフリカ諸国、オーストラリアなども同様で、国家が健全に機能しているところを探すほうが難しいと言えます。

これは日本とて例外ではありません。現状の安倍政権は野党の無能さゆえに政権を維持できていますが、内政面での失政や相次ぐ不祥事は国民の政治不信を増幅させ、頼るべき柱を失っているようです。


国家とは

国家が機能しなくなった原因は、人びとの暮らしの向上のために必要とされた国家が、人びとために何も貢献しないどころか国民の生活を苦しめる存在となってしまったからです。

そもそも国家変節の起点は、それぞれの国家が「国民国家」の体裁をとりはじめたことにあります。

国民国家は一般に国旗の掲揚、国歌斉唱、使用する文字や言葉の標準化などの統制を通じて、国民的アイデンティティを強制することで成り立ち、国家の三要素といわれる「領土・国民・主権」を守るため国民から税金を徴収することで国家機能の維持存続をはかっています。

そのため、どの国家も国民の安全や領土を維持するために安全保障に膨大な費用をかけているのです。

いま私たちが当然と思っている国家の在り方を根本的に変えない限り、私たちの世界は限界にきているのです。

これからは国家観を含めてすべての価値観の見直し迫られるのは必然で、冒頭の結論部分である「国家や政府機能は意味のないものになる」との見解に誰もがたどりつくことになります。


筆者は学生時代から民族派学生運動に参画して、日本なるものに回帰することこそが世界を救う原理であると主張し、学内に「日本文化研究会」というサークルまでつくりました。また、自分の結婚披露宴は、国歌斉唱で始まり、「天皇陛下万歳」で締めくくるという典型的な右派に属していた人間でした。

しかし、長年にわたって世界の現状を分析し、日本の政治にかかわるうちに、実はナショナリズムの考え方こそが偏狭な思考を生み、排他主義の元凶となって世界平和の最大の障害になっていることに気がつきました。

国家や国民を愛することは当然ですが、そのレベルにとどまることなく、世界中の様々な国の人びとが仲良く調和して暮らしていけるには何が必要なのかを考えている過程で、あらゆる価値観を白紙に戻し見直すべきと思い、今までとは違った思考で物事を考えるようになりました。

まだまだ未完ではありますが、引き続き読者の皆様には近未来予想図として新しい価値観とは何かをお届けしていく所存です。

つづく




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