赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

日本の対中外交戦略 コラム(246)

2017-11-29 15:04:04 | 政治見解




コラム(246):  日本の対中外交戦略


中国経済の低迷は深刻

中国による一帯一路構想は中国の軍事的、経済的覇権確立が目的です。

安倍総理はAPEC首脳会議(ベトナム)では習近平国家主席と会談し、ASEAN首脳会議(フィリピン)では李克強首相と会談しました。中国の二人の首脳が安倍総理と立て続けに会談した背景には、ひっ迫した中国経済があります。そのため中国が柔軟な姿勢を示すことで、日本の支援を取り込みたいとの思惑があります。

中国経済は中国政府のプロパガンダにより実態以上に巨大視され、中国のGDPは実質数値よりも遥かに低いものとなっています。中国では不動産投資と地方政府の莫大なプロジェクト投資によりすでに2015年から経済は深刻なマイナス成長に入りました。


国際社会からの信用を失いはじめた中国

中国との政府間協定(2011年)を結んでいるドイツは、メルケル首相が9回もの訪中をしていますが、2016年7月以降の訪中実績は無く、最近では首脳会談の席上メルケル首相が「市場開放の進展が必要」などと厳しい発言するようになっています。

さらに欧州諸国では、中国市場での外国企業に対する差別的取り扱いなどへの不満が高まっています。
また、2015年に習主席がイギリスを訪問した際の「7兆円投資」の約束はいまだに実行されておらず、欧州諸国は中国幻想からようやく目を覚ましつつあるようです。

このことは、米政府も十分に認識しており、本年11月の米中首脳会談では、中国が2500億ドル(約28兆円)の商談や投資を行うとの発表も、すでに空手形であるとの観測が広まっています。

当ブログには識者から、米中首脳会談後のアメリカの本音について、以下の情報が寄せられました。

米中首脳会談は、お互いの面子を保つことができただけで、実質的な経済的効果はありません。
トランプ大統領は先刻承知の上で、改めて中国に対する経済制裁や圧力を強める考えです。
今回の北朝鮮にかこつけた中国企業への制裁措置はほんの手始めに過ぎません。
中国経済は想像以上に逼迫しており、今後のアメリカからの圧力によりさらに疲弊することが予想されます。



「AIIB」「一帯一路構想」は国家的詐欺

中国の夢は世界に覇を唱えることです。その手段として、AIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路構想を立ち上げましたが、実行するための膨大な長期資金が無いためすべてが構想倒れの状況になっています。

AIIBは、実際に払い込まれた出資金は定款上の資本金の数%にも満たなく、単独融資はほとんどありせん。

「一帯一路構想」は、例えば、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車(中国28都市から欧州11カ国・29都市を結ぶ)の運行では中国からの日用雑貨の貨物は埋まっていても、欧州からの積み荷は少なく、欧州にとっては中国にマーケット価値が無いことになります。

さらに、一帯一路の沿線国家では中国側の慣習で賄賂や口利きなどが常態化しているため、正当な商取引が出来ず構想自体が崩壊する可能性があります。

また、もともと沿線の中央アジア諸国はロシアの影響を強く受けているため、ロシアの意向次第では中国排除に向かう可能性があります。

さらに、一帯一路構想では東南アジアを対象としたインフラ整備がありますが、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアに至るまで、資金力の無さと当初の約束を反故にするずさんな計画のため一向に工事が進まず、中国に対する不信感が増しています。


日本の外交戦略

このような情勢下での日本の取るべき姿勢としては、「中国の顔を立てつつ、日本が援助する地域や国家と連携を密にすること」が重要となります。

日本が支援する国家への経済協力は、1)省エネ・環境協力 2)産業の高度化 3)物流網の利便性向上など、いずれも日本の得意分野での協力内容です。これらは、中国による軍事力や経済支配とは根本的に異なり、各国と日本との結びつきと信頼関係は一層強くなります。

先般、日中経済協会(会長・宗岡正二新日鉄住金会長)と経団連、日本商工会議所の合同訪中団が李克強首相との会談は、当面民間レベルの協力関係を維持するという観点からは意味のあるものだったと思います。

しかし、日本は決して中国の国家戦略に迎合することなく、かと言って、無理に敵対することなく、着実にアメリカ、オーストラリア、インドと連携するダイヤモンド構想を実効性のあるものとして力強く推進していくことが大切だと思います。




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