コラム(242):トランプ報道から見えるメディアの未来
メディア報道の転換期
先日、日本の外交・国際問題に関するシンクタンクのシンポジウムに参加しました。
各セッションの基調報告をされた学者の発表内容は既存のメディア情報から一歩も踏み出していませんでした。彼らの発言内容は海外メディア情報に頼っているため、そのバイアスにとらわれているからです。
席上、彼らの意見を評価する立場の大宅映子氏が、内容とは無関係に、「トランプ政権が崩壊に至るとの報道ばかりが目に付くが、アメリカの友人に聞けば絶大な人気がある」と発言をしていました。大宅氏もメディア報道と現実には大きな乖離があると感じているようで、メディア報道だけを基準に物事を考えると真実が見えなくなると指摘していました。私も大宅氏のご指摘には同感です。
異常なネガティブキャンペーン
トランプ氏が大統領選で注目されるようになってからというもの、全米メディアはこぞって反トランプキャンペーンを始めました。大統領に就任した今でもそれが収まることはありません。
ハーバード大学公共政策大学院の調査によると、トランプ政権発足後から3ヶ月の時点で、7つの主要メディアの記事の8割がネガティブで、ポジティブは2割に過ぎないと発表しました。オバマ政権はネガティブが41%、ブッシュ政権は57%、クリントン政権は60%、そしてトランプ政権の80%は異様に高いと発表しています。
米メディアをそのまま追随報道する日本のメディアも同様で、人事の交代やロシアゲートが話題になるたびに「政権に重大な危機」と報ずるため、今にもトランプ政権が崩壊するかの印象を抱いてしまいます。
そのため今回の米大統領のアジア歴訪がアジアの安定化という重要課題解決のためであるにもかかわらず、「ゴルフ接待」だとか、「貿易赤字の削減圧力を通して延命をはかろうとしている」といった皮相な見方をするメディアや評論家が後を絶たないのです。
トランプ大統領のツイッター発言がメディア報道を無効にする
米メディアや日本のメディアが、トランプ大統領の極端な発言だけを取り上げて報道することは報道の自由ではありません。
アメリカにせよ日本にせよ、メディアが国民に対し事実を歪曲した内容を垂れ流すことの罪は大きいのです。嘘や捏造は言論の自由ではありません。
トランプ大統領がこれまで実施した政策の効果や結果についての報道がほとんど無く、報道のあり方として不適切です。
実はトランプ大統領のツイッター発言がメディアの存在意義を無効化しているのです。大統領がツイッターを通して国民に語りかける行為は、メディア報道が不要であると宣言していることと同じです。トランプ大統領のツイッターがニュースの発信源になっており、結果的にバイアスのかかったメディアの存在が終わろうとしているのです。
メディアはそれを苦々しく思い、なりふり構わずトランプ大統領への攻撃を強めるわけです。
メディアがツイッターに負ける日
トランプ氏対メディアの情報発信をめぐる主導権争いはまだまだ続きそうですが、情勢はトランプ氏の「リアルニュース」が、メディアの「フェイクニュース」を凌駕しはじめています。@realDonaldTrumpのフォロワー数は11月4日0時現在で41,752,459名となっており、ニューヨークタイムスなどの新聞購読者数を超え、テレビ視聴率さえ超えようとしていています。
米国民はメディアの報道に関わらず、トランプ大統領の考え方や政策のすべてを否定しているわけではなく、実績を正当に評価し始めていることも事実なのです。
メディアはなぜ信用されなくなったのか
ところで、メディアと政権の戦いはアメリカの現象だけではありません。この動きは自由主義世界ではどこでも起きている現象で、日本も例外ではありません。
本質は、「政府 VS 反政府」というイデオロギーの問題ではなく、メディアの精神態度が果たして公共の幸福に寄与しているのかが問われているのです。
現代のメディアは第四権力と持ち上げられ本来の意義や使命を忘れ去ってしまいました。本来、速記者であるべき存在が、自分の考えを世の中に押し付けることが正義であると錯覚しています。なかには事件や騒動を大きく報じ、世の中の混乱を面白がる者もいます。こうしたメディアが社会に悪影響を及ぼしているのです。
メディアの仕事には、人びとが様々な判断や選択をする基準となるよう情報に嘘を混ぜることなく、メディアの主観を排除し、真実をありのままに伝えることが求められます。したがって、現在のすべてのメディアに「報道する資格」はありません。
新聞メディアの凋落はすでに顕著になってきましたが、テレビも例外ではありません。視聴者に自分たちの価値観を強引に押し付けている報道番組は、やがて廃れていきます。メディア各社はこの真実に早く気がつき、自己変革に取り組んでいただきたいと思います。
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