赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

イギリス、EU離脱の影響 コラム(177)

2016-06-27 00:00:00 | 政治見解




コラム(177):イギリス、EU離脱の影響


6月23日に行われたイギリスの国民投票は、「離脱」が51.9%、「残留」が48.1%という結果になりました。このニュースに世界市場が激震し、リーマン・ショック以上の世界同時株安に襲われました。日本の市場も直撃を受け、円は一時99円台、日経平均株価の終値は、1,286円安の14,952円となりました。

このような情勢に対して、識者は次のような見解を述べています。

・世界の潮流が少々変化してきました。
・自国の経済や安全を守るために、外の世界との交流を拒絶する動きが活発になりそうです。
・ヨーロッパのほかの国々にも波及するかもしれません。
・また、アメリカ大統領選挙にも影響が出そうです。トランプ氏を推す動きが活発になる可能性もあります。
・世界の国々が自国を守ることに専念するようになります。

・中国も例外ではなく、さらに景気は低迷します。
・ロシア経済も低迷します。
・ヨーロッパの主要国であるドイツやフランスも困っています。この二カ国ではEUの秩序の維持をささえることができません。他の加盟国の経済状況が決して良いわけではないからです。

・日本は一部の企業は打撃を受けますが、すでに円高や景気低迷は経験済みなので、国家全体の経済は安定しています。
・こんなときなので政治のリーダーは政権経験の豊富な自民党に委ねようとする国民が増えます。



保護主義への懸念

イギリスのEU離脱は「外の世界との交流を拒絶する動き」、すなわち、各国に保護主義の動きを加速させる流れを形成したようです。保護主義とは、海外からの輸入や投資を制限し、自国の産業を育成するために国家主導の産業育成政策を意味します、同時に、貿易摩擦を引き起こす元凶となり、国際紛争の種になります。しかも、経済のブロック単位で保護主義を鮮明にすると、他の経済ブロックとの軋轢が大規模な戦争を誘発します。これは人類の歴史の中で繰り返されている事実です。

注意しなければならないのは中国とロシアです。両国とも海外からの輸入に頼る国ですが、経済ブロック的には孤立しています。ロシアはEUと、中国はTPP諸国と対立の構造にあり、しかも両者は軍事大国です。食料輸入などで制限がかかると、暴発する可能性があります。イギリスのEU離脱により、各国が保護主義の色彩を強くするのです。


日本への影響

急激な円高は、日本経済の信用の高さを表していますが、円高はデフレの原因となります。

デフレは商品の値段が下がるために、景気に左右されず所得が一定である公務員にとってはいいことでした。しかし、企業の業績の悪化は、勤労者にとっては賃金カットやリストラの原因となり多くの国民を苦しめることになります。

安倍政権が打ち出した経済政策は、今迄の政権や野党がなし得なかったもので、単に経済政策の提示だけでなく、国家の未来ビジョンを国民に提示していました。そのため、アベノミクスの始動から日本経済は明確に再生されてきました。

先ごろ、消費税10%の延期を決定したことで、急激な円高圧力によるデフレ懸念は避けられると思います。


野党の認識度

今回の問題は、政治家としての資質を暴露する結果となりました。

日本の野党の政治家は、イギリス政府のEU対応に対し国民がNOを突きつけたことを、自分たちの立場と重ねて喜んでいるようです。保守や右派層が勝利して、首相が辞任したことは、むしろ悲しむべきことのはずなのですが、彼らは、世界の大局を見失うほど、目先だけの狭い視点で発言しています。

世界的な経済危機を前に、対策を論じることなく、話をアベノミクス批判にすりかえています。内心では日本の経済状況の悪化を喜んでいるようです。彼らは、豊かな日本や国民の幸福などを考えもせず、ただ政権を倒すことだけを目的にしています。民進党岡田代表の「アベノミクスの宴は終った」との発言に象徴されるような精神性が、ますます野党共闘に対する国民の支持低下につながるのではないかと思います。


危機に対処する能力と勇気

国家のリーダーの重要な責務の一つとして、国家にとっての危機を察知し先手を打つことが出来るか否かが挙げられます。これが国家と国民に強い責任を抱いている政治家の仕事なのです。

G7・伊勢志摩サミットにおいて、安倍総理は世界経済の危機を予見し、各国首脳にそれを説いていました。また、国内政策においても消費増税が経済に深刻な影響を及ぼすことを予見してこれを取りやめました。そのことを野党やマスコミは「アベノミクスの破綻」と嘲笑しましたが、今になって見れば、安倍総理の先見性と対比されて、逆に彼らの無定見さが暴露される結末となりました。

経済政策の是非を短期間で評価することをやめねばなりません。わずかな期間での評価、安易な方針変更は国家の経済を混乱させる元凶になるだけです。


世界的な経済の危機は一国の力だけでは解決できない時代です。

情報は一瞬にして国境を越えるので、政治家には的確な判断力と強いリーダーシップが求められます。

世界的な経済危機の時、今こそ、安倍総理の手腕が発揮される時ではないでしょうか。



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