田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

船戸与一著「流砂の塔(上下)」

2009年02月01日 | 読書三昧

今日から2月です。
つい先日、新年を迎えたばかりと思っていましたが、光陰矢のごとし、ですね。

大型の低気圧が通過して、当地は、昨日からこの時期本来の寒さに戻りました。終日零下の真冬日です。

今朝は寝坊して、7時過ぎに起きましたが、部屋の温度は19℃ほど。そう低い室温とは思いませんが、身体がこのところの暖かさに慣れてしまったせいか、とても寒く、久しぶりに朝から薪ストーブに火を入れました。

先にご紹介した船戸与一氏の「満州演義」や「蝦夷地別件」が、そのスケールの大きさや物語性が抜群だったので、引き続き、「蝶舞う館」と「流砂の塔(上下)」を読みましたが、これらは同氏の劇画作家としての面が強すぎて、楽しめませんでした。

どちらも社会主義国家における少数民族問題がテーマとなっていますが、それが諜報機関や宗教団体とのからみでのみ描かれています。加えて、暴力とSEXに麻薬と、お定まりのメニューで、そこには、毎日を精一杯生きる生身の人間も生活も登場せす、暴力活劇に終わっています。これでは、万人に感動を与えることはできません。

ご存知のように、同氏は、外浦吾朗という筆名で、大ヒットした「ゴルゴ13」という劇画の原作者としての長いキャリアがあります。一方、週刊誌への連載(流砂の塔~週間朝日)で、締め切りに追われるためか、また、史実に裏打ちされた物語性がないためか、どうも話の辻褄合わせに終始し、人間描写が類型的になっているように思いました。

直木賞を受賞した「虹の谷の五月」に描かれたフィリピンの農村に生きる地を這うような農民の生活や、悩みながら劇的な結末を迎えるあのたおやかな物語を書いた船戸氏の作とは思えない不出来で惜しまれます。

 


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