田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

良質のエンタメ~葉室麟著「散り椿」

2012年09月15日 | 読書三昧

小説を読む面白さを満喫させてくれる直木賞作家の近作。
2010年5月9日から11年12月6日まで、岩手日報など地方11紙に連載された355頁の大作です。

物語~藩上層部の不正を糾弾したとして故郷を追われた瓜生新兵衛は、流浪先の京都で最愛の妻を亡くす。妻は「一度故郷へ帰り、実家の庭で散り行く椿を眺めて欲しい」と遺言するのだが・・・

史実を元にした小説が多い同氏の作品にあって、これは純然たるフィクションですが、藤沢周平氏の一連の作品のテーマだった「武士の一部(いちぶん)」が主題となっていて興味深い。

ただ、「橘花抄」でも述べたように、そこに血なま臭い支配階級の権力闘争は描かれていても、同時代を生きた庶民の暮らしがほとんど描かれていないのは寂しいかぎりです。