6月3日からローマで開かれる国連食糧農業機関(FAO)の「食糧サミット」での福田首相の演説全文が判明した。バイオ燃料が「食糧供給と競合する場合があることは事実」と認定し、「原料を食糧作物に求めない第2世代のバイオ燃料の研究と実用化を急ぐ必要がある」と主張するようだ。 バイオ燃料は食糧サミットでの最大の焦点となっており、各国のエネルギー政策にからむ問題だが、福田首相の演説は踏み込んだ表現になっている。
この内容は、重要な提言であり、評価したい。日本でも稲わらからのバイオエタノール抽出の研究などが進められている。
食糧輸出規制については「影響の深さにかんがみ自粛を呼びかけたい」とし、根本的な解決には「各国が自らの農業資源を最大限活用し、農業生産を強化することが重要」と強調しているという。
しかし、この原稿案は、天に唾する内容ではあるまいか。
オースラリア、ブラジルなどが輸出規制を行っているのは、自国の作物が不作であり、自国民の食卓を守ることを第一に考えているからに他ならない。ご存知のとおりオーストラリアでは大規模な干ばつで、小麦生産量が低下し、今までどおり輸出すれば、自国内の小麦価格の高騰を招く恐れがあるからである。
それを、オーストラリア国内の販売価格よりも「高いカネ」をちらつかせて、買い求めようとする態度は浅ましいという他はない。
自国の農家には減反を強制し、従わない農家には青田刈りを行わせ、出荷を強制的に阻止するような農政を行ってきたことに対する反省などはまったく感じられない。自国の食料自給率を39%にまで低下させてきた責任には頬かむりをしながら、「農業生産を強化することが重要」などと真顔で演説するつもりなのだろうか、国民はもちろん、他国の首脳からも失笑を買うことは明らかではないか。
本当に自国の農業を守り育てようとするならば、軍事費や無駄な道路建設、空港や港湾、大規模開発に予算をつぎ込むのではなく、農林業、畜産などに思い切った予算配分を行い、少なくとも自給率を早急に50%以上に戻し、更に高めていくことが不可欠である。
政府も日本国民も、札束さえ積めばいくらでも食料を買えるというような時代がいつまでも続くと考えてはならない。いつか大きなしっぺ返しを受けることは火を見るより明らかである。
最近の食料品の相次ぐ高騰などは、その証左である。
一方、食糧高騰については「(途上国に)技術支援やインフラ整備など中長期的な方策を実施すれば、(農産物の販売価格も上がることから)貧困農民に対して一転して成長をもたらす機会になるのではないか」とも指摘する予定だという。
しかし、農作物の販売価格が上がれば、それを買うのも貧困な国民であることを忘れている。食料という、人間にとって最低限必要な資源は、貧困であっても確実に購入できるような廉価で供給されることが不可欠なのである。まったく逆立ちした提案である。
「食糧サミット」は、フランスのサルコジ、ブラジルのルラ両大統領など約190の国・地域の元首や閣僚らが参加予定で、7月の北海道洞爺湖サミットでの議論の方向性を決めるとみられている。
世界的に見れば食料は足りない。足りなければ、自然に負担を掛けないような方法でどのようにして増産を図るのか?それについて、日本が自国で今後どういう農漁業、食料政策を推し進めていくのか、その視点に欠けた演説草稿と言わざるを得ない。
この内容は、重要な提言であり、評価したい。日本でも稲わらからのバイオエタノール抽出の研究などが進められている。
食糧輸出規制については「影響の深さにかんがみ自粛を呼びかけたい」とし、根本的な解決には「各国が自らの農業資源を最大限活用し、農業生産を強化することが重要」と強調しているという。
しかし、この原稿案は、天に唾する内容ではあるまいか。
オースラリア、ブラジルなどが輸出規制を行っているのは、自国の作物が不作であり、自国民の食卓を守ることを第一に考えているからに他ならない。ご存知のとおりオーストラリアでは大規模な干ばつで、小麦生産量が低下し、今までどおり輸出すれば、自国内の小麦価格の高騰を招く恐れがあるからである。
それを、オーストラリア国内の販売価格よりも「高いカネ」をちらつかせて、買い求めようとする態度は浅ましいという他はない。
自国の農家には減反を強制し、従わない農家には青田刈りを行わせ、出荷を強制的に阻止するような農政を行ってきたことに対する反省などはまったく感じられない。自国の食料自給率を39%にまで低下させてきた責任には頬かむりをしながら、「農業生産を強化することが重要」などと真顔で演説するつもりなのだろうか、国民はもちろん、他国の首脳からも失笑を買うことは明らかではないか。
本当に自国の農業を守り育てようとするならば、軍事費や無駄な道路建設、空港や港湾、大規模開発に予算をつぎ込むのではなく、農林業、畜産などに思い切った予算配分を行い、少なくとも自給率を早急に50%以上に戻し、更に高めていくことが不可欠である。
政府も日本国民も、札束さえ積めばいくらでも食料を買えるというような時代がいつまでも続くと考えてはならない。いつか大きなしっぺ返しを受けることは火を見るより明らかである。
最近の食料品の相次ぐ高騰などは、その証左である。
一方、食糧高騰については「(途上国に)技術支援やインフラ整備など中長期的な方策を実施すれば、(農産物の販売価格も上がることから)貧困農民に対して一転して成長をもたらす機会になるのではないか」とも指摘する予定だという。
しかし、農作物の販売価格が上がれば、それを買うのも貧困な国民であることを忘れている。食料という、人間にとって最低限必要な資源は、貧困であっても確実に購入できるような廉価で供給されることが不可欠なのである。まったく逆立ちした提案である。
「食糧サミット」は、フランスのサルコジ、ブラジルのルラ両大統領など約190の国・地域の元首や閣僚らが参加予定で、7月の北海道洞爺湖サミットでの議論の方向性を決めるとみられている。
世界的に見れば食料は足りない。足りなければ、自然に負担を掛けないような方法でどのようにして増産を図るのか?それについて、日本が自国で今後どういう農漁業、食料政策を推し進めていくのか、その視点に欠けた演説草稿と言わざるを得ない。