時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

知っていて損はないコインの話

2006年08月11日 | コイン収集など
政治ネタばかり書いていると疲れるので、この辺で編集長の趣味の一つであるコインのことに話題を転じてみよう。
思えば、日本で切手やコインの収集が流行したのは、東京オリンピック記念の銀貨や切手が発行された頃であろうか。当時は高度経済成長の只中で、生活にも多少の余裕が生まれてきていたこともそれに拍車をかけたかもしれない。しかし、バブルの崩壊、長期にわたる不況を経験して、コインや切手などのコレクションを行う経済的、精神的なゆとりがなくなり、アキバ系などの新たなコレクションアイテムが登場したこともコインマーケットの衰退に拍車をかけているように思われる。
さて、都内の某貨幣商の言葉を借りれば、コインは「手のひらサイズの世界遺産」だそうである。この言葉、言いえて妙であり、なかなか含蓄がある。
コイン(貨幣)は古代から使われているから、考古学上の出土物などにコインが含まれているとおよその年代も推定できる。このような理由から、海外では貨幣学のようなものが歴史学の一分野として立派に存在するらしい。また、美術品の一つとして認知され、サザビーズなどの有名オークションにもたびたび出品されている。
そもそもコインは、商品の交換手段として広く流通するものなので、磨り減ったり、傷が付いたり、錆びたりして、製造当時の状態を保っているものは少ない。したがって、製造後何十年、何百年も経ているにも関わらず、美しい状態を保っているコインがあったら、大変貴重で、高価で取引されることになる。
海外、特にアメリカでは、PCGS、NGCなどの有名なコイン鑑定会社が存在し、広くコインの鑑定が行われている。これは、コインの磨耗や傷の程度を70段階に分類、鑑定し、鑑定結果を記載した特別のパッケージに密封・保管するもので、このパッケージのまま業者間、顧客間を流通する仕組みになっている。最近はYahoo auctionなどでもこの鑑定済みのコインをよく見かけるようになった。ちなみに、この鑑定は、傷の多寡についてのみ鑑定しており、汚れ、錆びの有無は考慮されていない。したがって、同じ鑑定結果でも、製造時の輝きを失っていないコインは、汚れたものに比べて極めて高値で取引される。
一方、日本では、貨幣商のオヤジがコインホルダー(セロファンと紙で作られたもの)にコインを挟み込み、未使用、極美品、美品などと5段階くらいの粗雑な「鑑定結果」を勝手に書き付けて売りさばくのである。
「未使用」と記載されたコインを購入後、数ヶ月して買った店に買取りを依頼すると、「極美品ですね」、「細かな傷がありますね」などと言われて、通常、金銀貨の場合は地金価格、ひどい場合には購入額の2割、3割に買い叩かれるのである。そして、貨幣商は、こうして買い叩いたコインに再び「未使用」のラベルを貼り、高値でコインマーケットに還流させるのである。これが、日本の貨幣商の胡散臭さの原因であり、日本のコインマーケットが閉鎖的で、コレクターが増えない一因であろう。
海外のような客観的な鑑定システムの導入や適正価格での売買の仕組みがコインマーケットで構築されてこそ、コレクターの裾野が広がると思われる。日本のコインマーケットの改革を切に望みたい。