阿部ブログ

日々思うこと

スーパーコンピューターの更なる性能アップと新世代フォトニクス技術

2012年03月24日 | 日記

日本における光通信による通信幹線網は、ここ20年の間に約1000倍の大容量化を実現した。
スマートフォンやSNSの世界的普及により、超高精細動画像や3次元画像を含むAR、つまり超臨場感通信の拡大に伴い、ペタ(1000兆)ビットの時代が20年も経ずに到来するだろう。
このようなぺタビット級の通信インフラを構築するには、伝送容量を、現在の更に1000倍にする必要がある。
光増幅器の帯域や光ファイバへの入力光のパワーなど、物理的観点から今の光ファイバ1本で伝送できる容量は限界に近づきつつある中、達成可能だろうか。

1本のシングルモードファイバで伝送可能な容量は、周波数利用効率と信号伝送帯域の積で決まる。
また光通信の信号帯域(約8~10THz)においては、周波数利用効率を極限まで上げるためにデジタル信号処理を、偏波多重技術と多値QAM符号を組み合わせることによって、原理的には10ビット/秒Hzぐらいまで向上させ事で大容量光通信の可能性がある。
しかしながらシングルモードファイバでの伝送容量は、シャノンリミット等、先程と同様の物理的な限界が存在する。これを克服して光ネットワークの大容量化を実現するための研究開発が各国で始まっている。

またシングルモードファイバの限界克服の為には、光伝送媒体にマルチコアやマルチモード光ファイバなどの新しい技術を導入して空間多重が可能な構造として、1条あたりの光ファイバの伝送容量を飛躍的に向上させる事も研究されている。

片や、ネットワークと同様にコンピュータの処理速度も年々速くなっており、ハイパフォーマンス・コンピュータの処理性能は、4年で10倍に達している。現在開発中のIBMのペタFLOPSマシンは、前述のマルチモード光ファイバが5万本も使用され処理性能の改善に貢献している。但し2020年までに実現を目指すエクサ(100京)FLOPSマシンの場合には、マルチモード光ファイバが数千万から数億本必要とされると推測されているので、光ファイバを減らしつつ性能向上を図る事が求められている。

このように、先進的なフォトニクス技術開発は、新世代ネットワークのみならず、ハイパフォーマンス・コンピュータ全体のシステム性能を左右する極めて重要な存在であり、更なるブレークスルーが真に求められている。
ただ、このブレイクスルーの為の候補技術は存在する。それが先ほどの空間分割多重マルチコア光ファイバやモード分割多重マルチモード光ファイバと言う技術である。この技術開発も各国で熾烈な競争が繰り広げられている。

しかしながら、空間分割多重マルチコア光ファイバやモード分割多重マルチモード光ファイバなど新技術による光ファイバの場合、これに関係する周辺技術の開発(光増幅・接続技術や光パッシブ・アクティブデバイス)も同時に行う必要がある。

日本が誇るスパコン「京」の性能UPの為にも新世代のフォトニクス技術の開発に注力する必要がある。CPUやGPUの性能アップだけではなく、システム全体としての性能向上と全体最適化を実現しなければエクサマシンは実現不可能だろう。