10月25日(火)大井町の「きゅりあん」と言う愛称で知られる品川区立総合区民会館で「トリウム熔融塩炉を考える会」が開催された。
基調講演は、財団法人キャノングローバル戦略研究所理事の湯原氏が「3.11以後の新しい原子力の潮流」と題して講演され、ついで齢85歳である古川和男氏が「トリウム熔融塩炉の歴史と新しい役割」で話をされた。
古川和男氏は、株式会社トリウムテックソリューション代表取締役であり、長年にわたりトリウム溶融塩炉の研究に携わってこられた方である。
但し、この古川氏の存在そのものがトリウム原子力の我が国における研究開発の最大の障害であった事も、これまたまた事実である。
休憩を挟んで「チェコの持つ熔融塩関連要素技術」と題してチェコ原子力研究所・チーフサイエンテストであるミロスラフ・ローン氏が講演し、引き続き「トリウム熔融塩原子炉のループ技術の開発」でチェコEVM社の代表取締役オルドリッヂ・マタール氏が講演した。
最後は「トリウム原子力の国際動向-熔融塩炉を中心として」財団法人電力中央研究所・原子力技術研究所特別嘱託である 木下幹康氏が講演し、閉会の挨拶は古川和夫氏の実弟である「トリウム熔融塩炉を考える会」事務局代表・古川雅章氏が行った。
この挨拶の中で「トリウム熔融塩炉を考える会」の活動をさらに発展強化する為、「日本トリウム協議会」を設立する旨の宣言を行い、会場参加者はその賛意を拍手で示した。また「日本トリウム協議会」の初イベントは来年3月15日に開催されるとも発言されていた。この古川雅章氏であるが、昨日26日、渋谷駅で携帯電話で話をする姿が目撃されている。「これから会議があるんだ云々~」。
この「トリウム溶融塩炉を考える会」であるが、開始時間が30分以上遅れ、さらにはプロジェクターは準備されているものの、肝心のPCが準備されていないと言う、まあ、こんな間抜けな事務局は、世界広しと雖もこの考える会だけだろう。次回の協議会設立のシンポジウムでは、手抜かりの無いようお願いしたいものだ。。。
それと最後。
冒頭に㈱ボルテックス代表取締役・渡部博興氏が、元東京大学総長で現在は武蔵学園学園長である有馬朗人氏のメッセージを読み上げたが、これを掲載する。
『人々に原子エネルギーが受け入れられるとすれば、厳しい条件があります。それは過酷な事故が起きてしまっても放射能の放出は無く放射性廃棄物の発生量(最終残存量)が最小限でエネルギーが低コストで発生できてエネルギー発生手段として持続性のあるものが求められます。
現在、原子力の最大の課題として、推進するも、反対し廃絶するにも、後始末と言う共通の課題があります。
それは放射能であり、放射性廃棄物です。
具体的には、残されている放射能、すなわち溜まっている使用済み燃料の始末であり福島第一原発の事故で炉心が溶けてしまった原子炉の廃棄(廃炉)です。
廃炉で出てくる多量の使用済み燃料の始末は、現実のテーマとして切羽詰まった課題です。特に前者では、溜まってしまったプルトニウム、すなわち核兵器への転用が可能な、余剰なプルトニウムの始末があります。
特に、現在の原子力発電を廃絶するべきであると主張する方々は、廃炉の処理をどうするかをまず実行に移す方策を決めて頂きたいと思います。その中でも特に放射性廃棄物の処理所を決めなければなりません。
ところで、トリウム溶融塩炉はこれらの技術を、いま、ここで役に立つ具体的な形にすること。ここは、日本の残された技術が、国内で生かされる唯一の場です。この国の中で、放射性廃棄物の処理と言う緊急のニーズがあります。この「緊急に求められている後始末の仕事」で、人も育つし、原子力に関わってきた多くの人達の職場も維持されます。また、現在の原子力発電を続けていった場合、以上の問題以外にウラニューム235の涸渇に対処しなければなりません。
その時代にトリウムは重要なエネルギー資源ですから、今のうちに研究しておくべきです。
2011年10月5日』