阿部ブログ

日々思うこと

ミサイル防衛と非対称ジメチルヒドラジンによる毒性被害

2011年10月01日 | 日記

ミサイル防衛では、ICBMなど高速飛翔体を撃墜するが、完全に破壊する事が多分に困難であるため、一部の飛翔体に搭載されている推進剤や酸化剤などが地上に降り注ぐ事により深刻な被害が発生する事が懸念される。

この場合に懸念されているのは、非対称ジメチルヒドラジンである。
非対称ジメチルヒドラジン(1,1-ジメチルヒドラジン)は、ヒドラジンの誘導体の有機化合物で、透明な液体。融点-57℃、沸点62℃、密度0.78g/ccで、ミサイル防衛でも懸念されているように毒性が非常に強い。この非対称ジメチルヒドラジンは、皮膚につくと大やけどし、吸い込むと呼吸器官、特に肺がダメージを受け、痙攣を引き起こす。

また発癌性物質と認知されており、国際がん研究機関(IARC)の発癌性評価では「グループ2B」に分類される。毒性が強い為に非対称ジメチルヒドラジンは、防護衣やガスマスクなどを装着し、通常、非対称ジメチルヒドラジンは窒素ガス中で取り扱う。

この非対称ジメチルヒドラジンは、前述の通り大陸間弾道弾などロケットの推進薬として利用されており、テポドン発射事件の時に政府は、日本本土に落下した際の影響を懸念していた。
例えば、テポドンが非対象ジメチルヒドラジンを満載している2段目が、特に都市部に落下した場合の想定を、次のようにシミュレートしている。

(1)日本本土を飛翔中のテポドンが爆発した、半径約700メートルの範囲で家屋や人体に影響が及ぶ。
(2)着弾の際の爆風や破片などの影響は半径900メートル。
   この半径外に30分以内に脱出、若しくは救出されないと、非対称ジメチルヒドラジンにより元の健康状態には戻れない。
(3)着弾地点の中心から健康被害が生じる非対称ジメチルヒドラジンの有毒な影響範囲は半径9km。

非対称ジメチルヒドラジンを使用したロケットエンジンとしては、①ARIANE(米国)、②MGM-52(米国)、③R-36M(ソ連)、④RD-253(ソ連)、⑤YF-20B(中国)、⑥ノドン、テポドン(北朝鮮)などがあるが、きちんと搭載燃料をすべて燃焼させ着弾する分には非対称ジメチルヒドラジンの毒性の心配をする必要がないが、なんらかのトラブルで途中で燃料満載のまま墜落するような場合には、弾頭も問題だが、降り注ぐ推進薬や酸化剤による環境破壊や健康被害も重大な影響を及ぼすこととなる。