阿部ブログ

日々思うこと

地球深度探査船「ちきゅう」の成果 その2

2010年11月10日 | 日記
地球深度探査船「ちきゅう」は6月まで横浜・三菱重工のドッグで定期検査を行い、7月には南海トラフ、9月には沖縄トラフの掘削を行なった。今年後半の11月には南海トラフでの掘削を実施し、年明けからは外部資金による掘削を3月中旬まで行なうスケジュールとなっている。

南海トラフにおける掘削は、特に巨大地震発生帯を中心に行なっており、今回は和歌山県新宮市の南東沖60km~120kmの洋上で実施した。
南海トラフの海底下では「地震津波観測監視システム(DONET)」を構築しており、海底下地殻活動を様々なセンサーで観測・分析する事により地震発生予測の高精度化、及び津波の早期検地などを実現するために、世界最大規模の海底ネットワークを構築している。
特に今回の航海では、世界でも最先端の海底大深度長期孔内観測システムと呼ばれる、リアルタイム孔内計測センサーテレメトリー装置を、海底下1000mに設置した。この装置は、他に類のない装置で、広帯域地震計や歪み計、温度計、水圧計などを実装しており、最先端の技術を駆使して作られたセンサーである。この装置で観測精度も飛躍的に向上すると思われる。

青森県八戸市沖では、海底下の石炭層にある生命圏の調査を目的とする掘削が行なわれた。八戸沖には、海底下に石炭層があり、これは北海道から南は沖縄を経てベトナムやインドネシアにいたる長大な石炭層の一部で、この石炭層に肥沃な生命圏が存在する事が確かめられており、角砂糖1個あたり、105個の微生物が存在する。特にアーキアと呼ばれる古細菌が多く、八戸沖で採取されたアーキアを培養して二酸化炭素からメタンを生成する実験に成功した。ここで重要なのは、海底下の石炭層では、地上とは逆のプロセスが存在するという事である。二酸化炭素からメタンが生成されるが、地上ではその逆。

このアーキアは天然環境下でのメタン生成速度の10億倍と言う高い代謝活性能力を有しており、今後、海底石炭層に二酸化炭素を注入してメタンを発生させ、それを資源として活用できるのではないかと考えており、地球生命工学技術により100年以内にバイオマス・エネルギーとしての資源利用を目指している。この基礎研究の為、来年春に八戸沖で掘削を行い、保圧コアの試料採取を行なう予定であると言う。

後は特に海洋開発プロジェクトのマネージメントを担う人材の育成が急務であり、海洋開発人材育成が急務といえる。