フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

Farewell to Mr. Howard

2007-11-27 11:31:33 | today's focus
先日のブログでオーストラリアの政権交代が起きたことに触れました。

私がオーストラリアに行った1989年は、労働党のホークが長期政権を担っていて、ホークに対してさかんに次の首相になるキーティングが政権委譲を謀っていたものです。ハワードは万年野党の党首でした。労働党の長期政権は、福祉以外にも多文化主義を推進したことで評価されますが、労働組合のストばかりで、メルボルンもどんどん古くさく、新しい建物も道も出来ないという状態になりつつあったことを覚えています。しかも時代は経済的なグローバリゼーションが始まって、保護主義ではやっていけなくなっていたんですね。

ハワードが1996年に首相になってやったことは、そのグローバリゼーション・スタンダードにオーストラリアを合わせていったということだと思います。

では、自由党のハワード首相が11年にもわたる長期政権だったこと以外に何が交代の原因になったのでしょうか?グローバリゼーション自体が曲がり角にさしかかっていると言うことなのでしょうか?専門家でもないのでこのあたりのことはさっぱりですが、BBCの選挙前の記事によると、争点は以下のようなものだったそうです。

1. 株価と失業率の低さという意味での好景気の維持と、高利息とインフレーションによるworking families on home mortgagesの犠牲
2. 環境対策への反対と、継続する大旱魃
3. イラク派兵によるUSAへのslavish devotion
4. 同化主義的な移民政策:難民の排除、移民へのテスト、アフリカ移民の制限、HIV保持者の移民の禁止
5. 長期政権と変化

ここ数年の経験で言うと、(1)の物価の高騰と、不動産の高騰がもっとも目につきます。べつに給料がどんと上がっているわけでもないので、普通の人々はどうして生活をしているのかと疑問に思う位だったわけです。(2)の雨が降らないことは庭好きのメルボルン市民にはじわじわと不安が強まる要因だったかもしれません。庭に水をやれない、もう少しすると車も洗車できない、そんな話しがあちこちから聞こえていました。(4)もまたオーストラリアの多文化主義を損なうような政策ですね。一方で経済的に富裕な移民が増えて、不動産の高騰を支えているという話しもあります。しかし、移民とグローバリゼーションは同じコインの表と裏のはずです。

経済の好況が必ずしも市民レベルの幸福につながっていない、好況や消費の促進が逆に生活の基礎としての自然をそこなっている、そんなことが市民の頭をよぎっていたのかもしれません。上の争点はニュアンスは違っても日本の状況と似たり寄ったりなところも興味深いですね。

さて、中国通のラッド新首相は、中国圏の経済という新たなグローバリゼーションと、人々の不安とに、どう折り合いをつけていくつもりなのか?さて。
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豪州の切迫した問題 (トトロ)
2007-11-27 12:09:08
大干ばつのニュースはしょっちゅう報道されているものの、あの気候の変化は異常気象ではなく、地球温暖化の効果だとしたら、日本にとっても食料受給の面で相当な問題が噴出してきます。たのみの中国小麦は今後豪州に流れる分が増えてゆくでしょうし、日本が小麦を確保するためには、高い代金が必要になるでしょうね。
同時に中国政策を世界が重要視すればするほど、日本のアジア経済圏の主導権は失われ、中国がそれに取って代わる。こうなると日本は何を売って生きてゆくのだ、というと教育しか無い。しかし既に日教組の馬鹿どもが失策したゆとり教育のおかげでどんどん子供の学力が低下し、世界トップを争っていたのが嘘の様である。その間新嘉坡や韓国など教育に国力を注いできた国は台頭しており、世界の土木工事や建設現場でさえ日本は韓国に敗戦する事が多くなっています。もはや今の中流思考での国民生活は終わり、弱肉強食の強いものが生き残る時代へと突入しているとは誰も思わないのだろうか。能力の無い人間は難民化すると細木さんも言っていた。その通りである。国はもはやあてに出来るほどの力はなくなって来ているのにね。どうしてもっと自分を高める努力をしないのかな。国の責任とか誰が悪人とかいって心理的な自分の地位を押し上げて生きている人にその意識は感じられません。
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