フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

第14回言語管理研究会定例研究会の開催

2008-01-29 21:32:29 | research
先週土曜日は12月の桜美林に引き続いて上智大学に場所を借りて、第14回の研究会を行いました。上智のリサさんと木村先生に権力研究の重要さと多言語の関係を話してもらいました。

「多言語使用者の言語管理とパワー/権力」
・リサ・フェアブラザー(上智大学)「多言語使用者のインターアクション管理とパワーについて」
・ 木村護郎クリストフ (上智大学)「イデオロギーと権力作用について」

多言語使用者については、これまでの議論を確認したことに意義があったと思いますが、木村さんのマクロとミクロの話はとても興味深かったと思います。彼はもともとマクロな言語政策から始めた人で、ポーランドに国境を接する東ドイツのソルブ人の住む地域をフィールドに、言語的少数派の人々の言語政策と言語使用を調査しているそうです。

そこの教会による教育現場で、神父がドイツ人の子供にすら経験をソルブ語で言い直させるという何度も繰り返される相互作用があり、それを単に言い直し要求というだけでなく、そこに同意に向かわせる権力作用があるだろうと指摘します。そして、言い直しをそうした権力作用として見るとすれば、そこからマクロのソルブ人社会の言語政策とつなげられると指摘するわけです。言い換えると、ミクロとマクロとを結びつけるためには、どちらでも適用できる概念がなければならないのだと思います。

もう1つ彼が言うのは、言語管理理論が有標性をもとにした言語現象の理解である点で、無標性についても取り扱う必要がないかどうかということです。つまり言語使用の生成面あるいは慣習化された用法についても扱う必要があるだろう。なぜなら権力という視点を取ると、その権力が生成される相互行為からまずは観察しなければならないからというわけです。彼はそうした無標性をエスノグラフィーの「分厚い記述」の方法で出来ないだろうかと述べていました。私はネクバピルさんの言語バイオグラフィーはどうだろうと言いましたが、私自身はまだ自信がないのです。

しかし、木村さんとのencounterは今年最初の「事件」でした。
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