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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

オウム事件は、今なお「未解決事件」である

2015-03-21 07:30:31 | コラムと名言

◎オウム事件は、今なお「未解決事件」である

 昨日三月二〇日は、一九九五年の地下鉄サリン事件から二〇年目を迎えた日であった。そのためであろうが、本日の日本経済新聞「社説」には、「オウム事件の教訓学ぶ努力を」と題する文章が掲載されていた。
 その後半部を紹介してみたい。

 地下鉄サリン事件は大都市で初めて化学兵器が使われた無差別テロで、世界中が衝撃を受けた。米国は事件発生当初から専門家を送り込み、いまなお研究者が死刑囚からの聞き取りを行っている。
 肝心の日本では、一連の事件について警察や政府がどのように対応し、その後問題点をどう改善したのかといった検証がなされていない。これも、2001年の米同時テロを受けて第三者機関が勧告を出し、政府がそれを政策に取り入れた米国との違いが際立つ。
 89年に坂本堤弁護士一家殺害、94年には松本サリン事件と、教団による凶悪な犯罪が続いていた。どうすれば地下鉄サリン事件を防ぎ、被害を軽減することができたのか。いまからでも当時の経緯を検証し、失敗の経験を含めた情報を開示することが風化を防ぎ、教訓を得ることにつながる。
 イスラム過激派「イスラム国」が日本をテロの標的とするなど、テロの脅威は高まっている。オウム事件を問い続けることが、こうした新しいテロの問題を考え、備えていくことにもなる。

 指摘は妥当であり、鋭いところを衝いている。しかし、具体性と説得力に欠ける。これを言うのであれば、「特集」を組むなどして、具体的に、徹底的に、執拗に、問題を「検証」すべきである。もちろん、その検証には、「メディアの報道姿勢」に対する検証も含まれなければならない。
 昨日は、NHKテレビが、「未解決事件」と銘打って、オウム事件の特集番組を放映していた。「どうすれば地下鉄サリン事件を防ぎ、被害を軽減することができたのか」という問題意識に立つ特集であることは理解できたが、結局のところ、当時の警察関係者にインタビューし、その「弁解」を紹介するだけの番組になっていた。もちろん、「当時の経緯を検証し、失敗の経験を含めた情報を開示する」番組からは、ほど遠かった。【この話、続く】

*このブログの人気記事 2015・3・21

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戦時学徒自戒五條(1942)

2015-03-20 06:11:42 | コラムと名言

◎戦時学徒自戒五條(1942)

 中等教育会編纂『夏季鍛錬日誌』(文信社、一九四二)の紹介をしている。本日は、同書の本扉に置かれている「戦時学徒自戒五条」、およびその次のページにある「休暇の心得」を紹介してみたい。

 戦 時 学 徒 自 戒 五 條
一、学業研鑚ニ精励シ国家ノ負荷ニ応フベシ
二、質実剛健ノ風ヲ養ヒ気節ヲ尚ブ〈とうとぶ〉ベシ
三、規律節制ヲ重ンジ礼儀ヲ正シクスベシ
四、感謝奉公ノ念ヲ持シ進ンデ勤労ニ服スベシ
五、保健摂生ニ留意シ勉メテ身体ノ練磨ニ励ムベシ
右ノ條々常ニ陸海空ニ奮戦力闘スル将兵ヲ思ヒ率先躬行〈きゅうこう〉以テ之ヲ貫クベシ

 休 暇 の 心 得
 興亜の大業、大東亜新秩序の建設、大東亜共栄圏の確立等尊い輝かしい聖戦下の我等である。我等同胞の戦士はこの聖戦遂行の為に炎熱酷塞に堪へて命を的に戦ひぬいて居る。我等の父兄、母姉〈ボシ〉は銃後を守るに汗みどろに悪戦苦闘してゐる。
 今や我〈ワガ〉政府は戦時下高度国防国家体制を整へるため、食糧増産を計画し、勤労奉仕作業を行ひつゝある秋〈トキ〉、全国青年学徒は進んで之に参加し、この挙を援護するは将来の日本を背負ふべき青年学徒諸子の義務なることを自覚すべきだ。
 時 局 対 処 上
) 出征軍人の家庭訪問と其援護
) 戦歿遺家族訪問と其救援
) 戦歿者の墓参
) 慰問文、慰問品の発送
 行 事 上
)人的資源の充実と体位の向上に資する為に
 (イ) ラヂオ体操の参加
 (ロ) 深呼吸の励行
 (ハ) 冷水摩擦の実行
) 勤労奉仕の作業
) 心身鍛錬に資するため登山、海水浴及び見学旅行
 〝十分の研究と周到なる用意の下に〟

*このブログの人気記事 2015・3・20

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1942年(昭和17)の『夏季鍛錬日誌』

2015-03-19 05:09:12 | コラムと名言

◎1942年(昭和17)の『夏季鍛錬日誌』

 先週の金曜日、神田神保町の古書展で、『夏季鍛錬日誌』という粗末な冊子を入手した。一九四二年(昭和一七)の夏季休暇中にしたためるための日誌で、これは中学生用であった。実際に、富山県立高岡中学校の五年生の某君が使用していたものであって、日記欄には、ほぼ全ページわたって、ペン字による書き込みがあった。古書価は二〇〇円。
 はるか昔の昭和三〇年代前半、まだ自分が小学生だったころ、夏季休暇の直前、教師から『夏休み絵日記』といった名前の冊子を渡された記憶がある。戦争中、中学生を対象に、同じような日記帳が作られ、市販されていたことを、初めて知った次第である。これに日記をしたためていた某君が、この冊子を、個人的に買い求めていたのか、それとも高岡中学校から配布されていたのかは、判断がつかない。
 中等教育会編纂、文信社発行、B六判六四ページ。「昭和十七年六月廿三日発行」、初版発行部数二〇〇〇〇部、売価二三銭。
 本日は、その「はしがき」を紹介してみよう。

 は し が き
一、中等学校に於ける夏期休暇の利用法としては従来各種教科の宿題や練習問題を課したが最近時局に鑑み心身鍛錬、勤労奉仕作業等の立場から之を排する傾向にある。本日誌はこの新傾向を汲んで一面練習ともなり、他面には修養ともなる資料を選択してこの両思潮を折衷することに努めた。
二、上欄には時局の認識を新にし、学生生徒の本分を識らしめるため、主として最近の発表になれる名家の論説、歌詩等の文献を輯録して修養読本とした。
三、作文欄を設け慰問文を作つて前線将士を慰問し、感謝の意を表すると共に出征将士の武運長久を祈る資とした。
四、日記の末尾には夏季休暇日誌反省録及び小遣帳を附した。之によりて日々の行事を確実に実行したるや否やにつき指導者又は保護者の監督を受けるやうにし、他日の修養の資とした。
五、附録として「殉忠軍神九柱の偉勲」、「大東亜戦争作戦主要地面積人口便覧」、最近国勢グラフの発表にかゝる「大東亜重要物資資源統計」並に大東亜共栄圏要地図等を附して学習の資に供した。
 昭和十七年五月   編 者 識

*このブログの人気記事 2015・3・19

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『外人の観た日本人』(1946)の「はしがき」

2015-03-18 19:21:26 | コラムと名言

◎『外人の観た日本人』(1946)の「はしがき」

 洋洋社が刊行した「新日本建設叢書」の第一輯、武野藤介著『外人の観た日本人』(一九四六)の「はしがき」を紹介してみよう。
 これを読んで、戦前の日本人は、外人の「お世辞」に、「ながい間馴らされて」という見方があったことを知った。

 は し が き
★外人の観た日本。「お世辞」ならもうたくさんである。また、敗戦国日本に今更らお世辞でもあるまいではないか。このお世辞に日本人はながい間馴らされても来てゐた。今、我々の非常に知りたいのは外人の観た日本の「悪口」である。悪口ではないまでも、日本及び日本人に対する真実の批判であり、「ほんとう」のことである。新日本の建設は我々がこれを知ることから出発しなければならない。
★日本には現在、社会全般、あらゆる部面に根本的に改むべきことが余りに多いからである。敗戦仮借なくそれを我々に訓えた。我々はこれを知るためにまことに高価な取返しのつかない犠牲を支払つたのである。
★由来、我々の政府は、歴代、外人の観た日本の「悪口」を余りにも我々に知らせな過ぎた。知らせることを欲せないかに思はれた。その理由とするところは、恐らく、日本を「侮辱」してゐるが故に、彼我の「親善」を阻害するものとしたからであらう。日本の真実を語つたこの種の活字を伏字にした。日本人を盲目にしたやうなものである。輸入映画なども同様で「国辱」といふ合言葉によつて、輸入禁止、上映禁止。
★その結果はどうであつたか? 実力が伴なはなくして自惚ればかり人一倍に強い日本人にしてしまつたのである。存外、敗戦の由々敷き〈ユユシキ〉素因はこんなとこにあつたのではないか。而も、親善を深うするどころか、日本は、ただ一国で、遂に世界中を「敵」にしたのである。
★そのくせ、日本には昔から「良薬は口に苦し」といふ俚諺がある。外人の観た日本。いろんな書物の中から、断片的に、その「薬」を拾ひあげたのがこの小冊子である。観光的に一瞥した思ひつきのやうな批判は敢て執らなかつた。いづれも今日では絶版ながら、矢吹慶輝氏の監修になる『外人の観たる日本国民性』からも得るところ多く、また、拙著『謎の日本』からも執つた。「日本学」の研究。否、この小冊子の目的はかかる学研的のそれではないのである、また、一頁から読む必要もない。どこの頁をひらいて呉れてもよろしい。要は、一項目づつ、考へながら読んで貰ひたいことである。新しき日本及び日本人を建設するために。
★民主主義とは何ぞや? これも今日、日本人にとつては最も重大な主題である。この小冊子はその「具体的な事例」をもだいたい拾ひつくしてをりはしないかと思ふ。

*このブログの人気記事 2015・3・18

 

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「新日本建設叢書」の刊行予定書目(1946)

2015-03-16 05:05:48 | コラムと名言

◎「新日本建設叢書」の刊行予定書目(1946)

 昨日の続きである。武野藤介『外人の観た日本人』(洋洋社、一九四六)のウラ表紙見返しの上段には、「新日本建設叢書」の刊行予定書目、下段には奥付が印刷されている。本日は、前者のほうを紹介してみよう。

 新日本建設叢書 各冊一円七十銭
第一輯 外人の観た日本    武野藤介著
第二輯 日本とアメリカ    木村 毅著
第三輯 東條軍閥の罪悪  長谷川芳三郎著
第四輯 子供に聞かせる 科学小話集 本田南一著
第五輯 デモクラシイの勝利  中野五郎著
第六輯 宣伝敗れたり     武野藤介著
第七輯 今日の言葉 小辞典  柏原一雄著
第八輯 日本人なら誰にも判る 禅の話 内田新八著
第九輯 人間の権利      松下正寿著
第十輯 食物の政治      新居 格著
第十一輯 芸能の行道     木村 毅著
              (以下続刊

 実際に、こうした本が、こうした順に刊行されたわけではない。そのことは、第五輯の予定だった『デモクラシイの勝利』が、第二輯『デモクラシーの勝利』として、刊行されていることでもわかる。ちなみに、洋洋社の「新日本建設叢書」のうち、国会図書館で閲覧できるのは、中野五郎著『デモクラシーの勝利』一冊のみである。

礫川ブログへのアクセス・歴代ベスト30(2015・3・16現在)

1位 14年7月18日 古事記真福寺本の上巻は四十四丁        

2位 15年2月25日 映画『虎の尾を踏む男達』(1945)と東京裁判 
3位 15年2月26日 『虎の尾を踏む男達』は、敗戦直後に着想された
4位 13年4月29日 かつてない悪条件の戦争をなぜ始めたか     
5位 13年2月26日 新書判でない岩波新書『日本精神と平和国家』 
6位 15年3月1日  呉清源と下中彌三郎
7位 14年1月20日 エンソ・オドミ・シロムク・チンカラ     
8位 13年8月15日 野口英世伝とそれに関わるキーワード     
9位 13年8月1日  麻生財務相のいう「ナチス憲法」とは何か   
10位 15年2月20日 原田実氏の『江戸しぐさの正体』を読んで

11位 13年2月27日 覚醒して苦しむ理性             
12位 15年2月27日 エノケンは、義経・弁慶に追いつけたのか 
13位 15年2月28日 備仲臣道氏評『曼荼羅国神不敬事件の真相』
14位 15年3月4日  「仏教者の戦争責任」を問い続ける柏木隆法さん
15位 14年7月19日 古事記真福寺本の中巻は五十丁        
16位 15年1月8日  伊藤昭久さん、田村治芳さん、松岡正剛さん
17位 14年8月15日 煩を厭ひてすべてはしるさず(滝沢馬琴)   
18位 14年2月1日  敗戦と火工廠多摩火薬製造所         
19位 15年2月4日  岩波新書『ナンセン伝』1950年版の謎
20位 15年1月14日 このブログの人気記事(2015・1・14)

21位 15年3月7日  イスラム教がアジアを結ぶ(有賀アフマド)
22位 14年3月28日 相馬ケ原弾拾い射殺事件          
23位 14年1月21日 今や日本は国家存亡の重大岐路にある        
24位 15年2月19日 「日本われぼめ症候群」について
25位 14年8月14日 滝沢馬琴が参照した文献(その2)      
26位 15年1月9日  寺尾宏二の『日本賦税史研究』(1943)
27位 15年3月11日 『横浜事件と再審裁判』(2015)を読む
28位 15年2月5日  家永三郎教授と山折哲雄講師
29位 15年1月1日  海老沢有道と「ごまかされた維新」
30位 15年1月4日  現代にタイムトラベルした必殺仕事人

次 点 15年2月9日  山折・新田論争における争点のひとつは「国家神道」

*明日から数日間、都合によりブログをお休みします。

*このブログの人気記事 2015・3・16

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