練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『間宮兄弟』 江國香織

2006-10-30 | 読書
以前にも書いたことだが、一時期、江國さんの小説はあまり読まなくなってしまっていたのだが、この『間宮兄弟』はなぜかちょっとイケていない兄弟が主人公ということだけ予備知識としてインプットされていて、気にはなっていたのだ。

読後の感想としては・・・これは私の好きな部類の江國作品だった。
なんだかいろいろなことは起きるには起きているのだが、全体は淡々としていて、そもそも主人公の兄弟がもちろん喜怒哀楽にさいなまれながら日々暮らしてはいるのだけれど、どうも(いい意味で)現実感が薄いというか、もうすっかり完成されてしまっているので動じないのだ。周囲の人物達、女性たちには様々な変化が訪れて彼女たち自身も変化してゆく。しかし、間宮兄弟は日々を丁寧に丁寧に生きてゆく。

ストーリーを楽しむ、というよりは、兄弟の暮らしぶり、大事にしていることのこだわり、お約束、会話、そんなものを楽しみながらゆっくりと読んで行きたい小説だ。
だって「読書の日」、ジグゾーパズル、花火大会の日の浴衣・・・などなど・・・そんなある人にとってはどうでもいいような、でも自分にとってはとても快適なものにこだわって暮らしてゆけたらどんなにいいでしょう。しかもそのヨロコビを分かち合える人がそばにいるなんて、なんというしあわせ。
ただ、彼らにとってのヨロコビを分かち合える人、というのが女性ではなく、兄弟同士であったということが哀しいような、幸せなような、つまりいつまでたっても間宮兄弟に恋人ができない原因なのだろうなぁ。