練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

若冲と江戸絵画展

2006-08-20 | アート
東京国立博物館・平成館で開催中の『プライスコレクション 若冲と江戸絵画展』を見に行ってきました。

小原流のいけばなを学ぶ私にとっては琳派、狩野派などの江戸絵画はなじみ深いものでしたが、伊藤若冲の名前ははっきり言ってあまり聞いたことがなく、彼の作品もよく知りませんでした。

確かに知る人ぞ知る、という玄人好みの画家であった若冲も、近年アーティストのプロモーションビデオにイメージが使用されたり(宇多田ヒカル)、お茶のペットボトルにコラボされたりして徐々に知名度が上がってきていたようです。

館内はさすがに話題の展示だけあってものすごい人でした。
特に若冲の例のタイルのような白い象さんや動物達の巨大画の前は人だかりがすごくてじっくり鑑賞するのは不可能・・・。

でも、なんとか人ごみを掻き分けて膨大な量のコレクションを見てまわって感じたのは、若冲という画家の独創性のすばらしさでした。
琳派絵画などにも見られるような構図のおもしろさ、現実世界ではありえないような面白い世界を描く、ありきたりでない発想の意外性。いったいこの絵はどうなってるの?みたいなだまし絵を見るような楽しさが若冲の絵にはいっぱいあるということが感じられました。
そんな発想のおもしろさだけでなく、絵を描く技術においても次々と新しいアイディアを思いついて作品に生かしていた、というのがよく分かり、そんな職人的研究心も旺盛な人だったんだなぁ、と思わされます。
薄墨のにじみを生かした「筋目描き」というのは特に有名で若冲の専売特許ともいえる技法だそうですが、薄い絹に描く上で絵の具の発色をよく見せるために裏からも絵付けしていた、とか、なんと言ってもあの象の絵のような巨大な絵を細かい升目の集団ととらえ、その升目をひとつひとつ埋めてゆく、なんていう描き方は、ブラウン管テレビの技術に通じるものもあって、どうしてこんなことを思いつくのだろうと感心してしまいます。

それにしてもこんなに面白い若冲の作品を(もちろん日本に保管されているものもたくさんありますが)アメリカ人のプライスさんが安い値段のときに買い占めて大事にしていてくれた、というのも不思議な話・・・。お目が高かったんですね。ミスター・プライス。

話は展覧会にもどりますが、最後のお部屋はそのプライスさんのアイディアで、ガラスの仕切りなども全て取り払い、作品が完成したときの雰囲気を出来る限り再現できるようにと、なるべく自然の光のなかで作品を鑑賞できるような工夫がとられています。
そこは若冲以外の作家の作品が主でしたが、薄ボンヤリとした光のなかで巨大な屏風絵が浮かび上がって見えるさまは迫力でもあり、幻想的でもあり、素敵でした。

上野公園東京国立博物館・平成館にて8月27日まで。