練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『愛逢い月』 篠田節子

2005-12-02 | 読書
この人は一度三途の川を渡りかけたことがあるんじゃないか、そんなことを考えてしまった。
生の世界と死の世界、その境目を漂うような、いや、漂うとかいう生易しいものではなく、死の世界に引きずりこまれそうになりながら生の世界にも執着している、そんな恐ろしい心象風景が各々の作品に現れているように感じた。
それがまるで自分自身が体験してきたことを克明に記しているかのようにリアルなのだ。
怖いお話たちである。

最後の作品だけはちょっと趣が違う。
ちゃんとしっかり生きている人のことを書いている。
あとがきに篠田さんご自身が「本を閉じて現実世界に戻っていく読者のために」と書かれている。
あ~、映画のラストシーンと同じだな、と思った。