『まほろ駅前多田便利軒』
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東京郊外で便利屋を営む多田（瑛太）は、冬のある夜、バスの間引き運転を調べてほしいという依頼主（麿赤兒）のもとからの帰り道、中学の同級生だった行天（松田龍平）に偶然再会する。
中学時代に事故で行天に怪我をさせた弱みのある多田は、つけこまれるままに行天を便利屋に居候させ、離婚歴のある男ふたりの奇妙な共同生活が始まるのだが・・・。
三浦しをんの同名小説の映画化。
続編の深夜ドラマの方は何回か観たことあったけど、原作も読んだことないし映画も初見。おもしろかったです。
何より観ていてすごくリラックスする。気持ちいい。
多田と行天は一見適当なようで実際はひどく真面目で、言葉や態度にあからさまに出さないのに、何事に対してもとにかく可能な限りは誠実でいようとしている。便利屋などというヤクザな商売を営むバツイチ男性という設定にしては、いささか堅すぎるぐらいだし、どうかすると意味不明な自己犠牲まではらう。
物語が進行するにつれて、ふたりがそれぞれに背負った重荷が徐々に明らかになり、その理由が少しずつわかってくる。
どうしようもなく深く傷ついた魂を抱えた人間が、自らを癒し、赦したい、許されたいと心の底から熱望するとき、しがらみや世間体から自分を切り離して、何もかも整理したいと願うとき、とりあえず、真面目に、やさしく暮らすことでしか、人生をリセットする方法はないのかもしれない。
多田と行天はそんなモラトリアムに出会ったさまざまな客たちの依頼を通じて、本来は縁もゆかりもない人々の孤独や寂しさを埋め、嘘や欺瞞を黙って引き受けていく。
彼らは他人から便利屋と呼ばれ蔑まれる。依頼主も警察もチンピラも、なぜか彼らを便利屋だからというだけで嘲る。それも彼らは黙って受け入れている。
でもふたりは「オレはほんとうはこんな人間だ」と相手に理解を求めたりはしない。そういうものは求めていない。無理に求めなくても理解し受け入れてくれる存在が、たったひとりでいい、どこかにいればそれでいいと思っている。意識的に考えなくてもなぜかそう思っていた相手との巡り会いが、この映画でいちばん劇的なところだと思う。
そういう風に泰然自若と構えているふたりが、観ていて清々しく、ほのぼのとあたたかかった。ぜんぜんドラマチックじゃないけど、こういう出会いっていいなあと、いまさらちょっと憧れてしまう。
音楽がほとんどかかってなくて、とても静かな映画だった。カメラワークがとてもいい。落ち着いていて、無駄なところがまったくなくて、画面の完成度が非常に高く見える。
キャストも非常によろしい。瑛太に関してはヴィジュアルがどうしても設定にあってないように見えてしまうところはあるにせよ、クールなようで意外に暑苦しい感情屋というキャラクターが鬱陶しくないという点ではあってるのかもしれない。
松田龍平はすばらしいですね。最近はＮＨＫの朝ドラで活躍してるけど、やはりこの人の最大の魅力は天然の色っぽさ。体温低そうに見えてむちゃくちゃ優しかったり、ほとんどホームレスみたいな風体なのにやけに美肌で手足や指がすらりと綺麗で、どことなく浮世離れしたセクシーさが不思議だ。
続編のドラマもなかなかよかったけど、これはバディムービーとしてまた続けてほしい気がする。
誰かが誰かに、「おまえはこうだ」「こうあるべきだ」と押しつけあうことのバカバカしさと無意味さにいちいちイライラすることの多い世の中、これくらい「だからなんだ」と開き直れればどんなに気持ちいいだろう。
ひとりで開き直って生きていくのはやっぱりそれはそれでなかなかしんどい。けど、このふたりみたいな、仲間？同士？とりあえず隣に立ってる人？がいたら、どれだけラクだろう。
そういうファンタジーとして、楽しい映画でした。
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東京郊外で便利屋を営む多田（瑛太）は、冬のある夜、バスの間引き運転を調べてほしいという依頼主（麿赤兒）のもとからの帰り道、中学の同級生だった行天（松田龍平）に偶然再会する。
中学時代に事故で行天に怪我をさせた弱みのある多田は、つけこまれるままに行天を便利屋に居候させ、離婚歴のある男ふたりの奇妙な共同生活が始まるのだが・・・。
三浦しをんの同名小説の映画化。
続編の深夜ドラマの方は何回か観たことあったけど、原作も読んだことないし映画も初見。おもしろかったです。
何より観ていてすごくリラックスする。気持ちいい。
多田と行天は一見適当なようで実際はひどく真面目で、言葉や態度にあからさまに出さないのに、何事に対してもとにかく可能な限りは誠実でいようとしている。便利屋などというヤクザな商売を営むバツイチ男性という設定にしては、いささか堅すぎるぐらいだし、どうかすると意味不明な自己犠牲まではらう。
物語が進行するにつれて、ふたりがそれぞれに背負った重荷が徐々に明らかになり、その理由が少しずつわかってくる。
どうしようもなく深く傷ついた魂を抱えた人間が、自らを癒し、赦したい、許されたいと心の底から熱望するとき、しがらみや世間体から自分を切り離して、何もかも整理したいと願うとき、とりあえず、真面目に、やさしく暮らすことでしか、人生をリセットする方法はないのかもしれない。
多田と行天はそんなモラトリアムに出会ったさまざまな客たちの依頼を通じて、本来は縁もゆかりもない人々の孤独や寂しさを埋め、嘘や欺瞞を黙って引き受けていく。
彼らは他人から便利屋と呼ばれ蔑まれる。依頼主も警察もチンピラも、なぜか彼らを便利屋だからというだけで嘲る。それも彼らは黙って受け入れている。
でもふたりは「オレはほんとうはこんな人間だ」と相手に理解を求めたりはしない。そういうものは求めていない。無理に求めなくても理解し受け入れてくれる存在が、たったひとりでいい、どこかにいればそれでいいと思っている。意識的に考えなくてもなぜかそう思っていた相手との巡り会いが、この映画でいちばん劇的なところだと思う。
そういう風に泰然自若と構えているふたりが、観ていて清々しく、ほのぼのとあたたかかった。ぜんぜんドラマチックじゃないけど、こういう出会いっていいなあと、いまさらちょっと憧れてしまう。
音楽がほとんどかかってなくて、とても静かな映画だった。カメラワークがとてもいい。落ち着いていて、無駄なところがまったくなくて、画面の完成度が非常に高く見える。
キャストも非常によろしい。瑛太に関してはヴィジュアルがどうしても設定にあってないように見えてしまうところはあるにせよ、クールなようで意外に暑苦しい感情屋というキャラクターが鬱陶しくないという点ではあってるのかもしれない。
松田龍平はすばらしいですね。最近はＮＨＫの朝ドラで活躍してるけど、やはりこの人の最大の魅力は天然の色っぽさ。体温低そうに見えてむちゃくちゃ優しかったり、ほとんどホームレスみたいな風体なのにやけに美肌で手足や指がすらりと綺麗で、どことなく浮世離れしたセクシーさが不思議だ。
続編のドラマもなかなかよかったけど、これはバディムービーとしてまた続けてほしい気がする。
誰かが誰かに、「おまえはこうだ」「こうあるべきだ」と押しつけあうことのバカバカしさと無意味さにいちいちイライラすることの多い世の中、これくらい「だからなんだ」と開き直れればどんなに気持ちいいだろう。
ひとりで開き直って生きていくのはやっぱりそれはそれでなかなかしんどい。けど、このふたりみたいな、仲間？同士？とりあえず隣に立ってる人？がいたら、どれだけラクだろう。
そういうファンタジーとして、楽しい映画でした。
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