落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

窓辺の天使

2015年07月19日 | movie
『ガーディ』

レバノンの下町に生まれ育った音楽教師レバ(ジョージ・カッバス)は、同級生のララ(ララ・レイン)と結ばれ幸せな家庭を築くが、3人めにして待望の男の子だったガーディ(エマニュエル・カイラッラ)はダウン症だった。窓辺で歌うガーディの声に悩まされた近隣住民は、レバに長男を施設に預けるよう迫り・・・。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で鑑賞。

6年ぶりのSKIPシティ。
今年で12回めだそうです。前は毎年のように行ってたんだけどね。ひさびさ行ったら入場料が値上がってた。
あとこれ開始当初は映画の大半がまだフィルム撮影で、デジタル撮影を映画に普及させたいというのも開催目的のひとつだった気がするんだけど、もういまは逆にフィルムで撮る映画の方が少ないくらいになって来てるはず。だからいろいろ事情も変わってるはずだと思うんだけど。
今年は今日一日だけのつもりで行ってみたけど、相変わらず盛況でしたよ。レビューが一本しかないのは単なる怠慢です。

上映後のQ&Aでプロデューサーが語るところによると、この物語のテーマは「多様性を受け入れる」ことだそうである。
レバノンは多民族多宗教の国だが、この映画にも多種多様な人々が登場する。ごく狭い路地沿いの小さなコミュニティーを舞台にしているが、商売人がいて公務員がいて弁護人がいて、娼婦がいていかず後家(っていい方イヤだね)がいて、それぞれに抱えた問題があって生活に不満がある。それを互いになすりつけあったり誤摩化しあったりして、どうにかこうにか肩寄せあって生きている。
彼らは知的障害をもつガーディにそのストレスのはけ口を見いだし、彼さえ排除すればなんとかなるだろうと勝手に決めつける。そのことに決して感情的に反応せず、意識的に冷静に対処しようとするレバやリロ(サミール・ユーセフ)の企みが楽しい。まあ一種のファンタジーである。

設定は奇想天外だが、基本的にモノローグに映像がついていてときどき会話、という紙芝居形式が世界観にマッチしていて、全体にバランスのとれた娯楽作品になってました。プロダクションデザインの完成度が高くて、映像がとても綺麗。小道具の使い方がすごくオシャレで全体にちょっとガーリーなのが意外でした。レバノン行ってみたくなった。
レバノンでは4ヶ月間ものロングランヒットを記録したそうです。うん、いい映画でしたよ。ハートウォーミングで。

Q&Aでも出てたけど、レバノンて日本では馴染みのない国で、どうしても20~30年前の内戦のイメージしかない。前に東京国際映画祭に『ファラフェル』が出品されたときもゲストがいってたけど、レバノンの人にとってそういう国際感情ってやっぱちょっと微妙なんだろうな。
このあとに上映された『モンテビデオの奇跡』のユーゴスラビアなんて内戦で6ヶ国に分離した。そういう激しい内戦を経験した国の人の気持ちなんて、日本にふつうに住んでいるとなかなかわからない。ぐっといろいろ訊いてみたい気分にはなったけど、いきなり訊けるもんでもないし、迷うよねえ。



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