落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

クリスマスなのに

2008年12月24日 | diary
【飯島愛さん死亡】ブログでエイズの怖さを訴え続け

飯島愛とぐりはちょうど同世代。
彼女がTVに登場したころはバブル経済の末期、AV嬢からタレントに転身し生き馬の目を抜くというTV業界をチャラチャラとサバイブしている彼女の姿は、毎日汚れたツナギを着てもくもくと力仕事をしていた学生時代のぐりの目にはちょっとイタい存在だった。あのころ、若さをひけらかして楽しむことをためらわず時代の波に乗っていった彼女のような子がいわゆる「ジュリアナ世代」なんて呼ばれる表の女の子たちだとすれば、本音ではそんな思いきりのよさを羨みつつもマネはできないししたくもないわとつっぱらかっていた「文科系女子」なんて裏の女の子たちもいた。ぐりは後者である。同じ大学の少し後輩にあたる辛酸なめ子も後者だろう。

TV業界でアルバイトをするようになって枕営業なんて言葉を知り、2時間ドラマの世界の話が事実だと知って、飯島愛のようなAVやポルノやグラビアなどセクシュアルなジャンルからタレントや俳優に転身していった人々を見る目が変わったことをよく覚えている。
TV業界とはほんとうにほんとうに厳しいセクハラの嵐が朝から晩まで常に吹き荒れる業界である。その当時のぐりは若いだけで色気のカケラもないぼんくらだったけど、初対面の挨拶が「初めまして。ねえ、あんた処女?」なんていう照明技師とか、毎朝「おはよー。どう最近、ヤッてる?」というのが決まり文句の車輌部とか、仕事の合間の雑談が毎日毎日夜の武勇伝とか、もう会話の相当な割合が下ネタというのがごく当たり前の職場環境だった。とにかく寄ると触るとエロ話ばっかしやってる人たち、というのがぐりのTV業界人の印象である(この時点でエロを口に出さない業界人=ムッツリということに勝手に決定)。最初は面食らったけど慣れれば猥談ぐらい何ともない。
そんな環境で、自らの肉体やセックスを商品にした経歴がどれだけ過酷な重荷になるかというのは、実際その環境に触れて初めて気がつく。ただでさえ社会からの心ない偏見や誤解にさらされながら働く彼女たちを、誰よりもひどい偏見や誤解で苦しめるのは紛れもなくTV業界だと思う。それに堪えぬき、はねのけて頑張っている彼女たちの強さは、到底ぐりのような根性なしにはそれこそ絶対にマネはできない。

飯島愛は入れ替わりの激しいTV業界で10年以上にわたって一線で活躍した。その彼女が去年引退を発表したときの「夢も目標も見出せない」という言葉はぐりの胸にはかなり痛かった。
30代半ば、若いころから必死に突っ走り続けた女性も強くしたたかに見えて寂しさに疲れてしまうことがある。自分が何をやってるのか、何がしたいのか、どこに行きたいのか見失ってしまうこともある。その気持ちはおそらく多くの女性が容易に理解できるのではないだろうか。だから辞める、という彼女の決断は勇気でもあったと思う。ただ、辞めてどうするという明確なビジョンがなかったのは苦しかったろうと思う。

STDとHIV予防啓発活動に力を注いでいた彼女。ひとりで亡くなって何日も経っているのがよりにもよってクリスマスイブに発見された彼女。悲しすぎる。
まだ死因や詳しい状況はわからないけど、せめて自殺でなければいいなと思う。事故でも病気でも自殺でも死は死に変わりはないけど、自殺なんて結末だけはあまりにも悲しすぎるから。


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