落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

産業風景

2008年07月18日 | movie
『いま ここにある風景』

「Manufactured Landscape」と題して、産業がもたらす地上の“風景”の変容をモチーフにした写真を発表し続ける作家、エドワード・バーティンスキーの旅と作品を映像化したドキュメンタリー。『ダーウィンの悪夢』ではアフリカ、『いのちの食べかた』では欧米を舞台に描かれたグローバリズムの現在を、この映画ではアジア─というかほとんど中国─に代えてとらえている。

正直な話、観ていてとくにそれほどインパクトは感じなかった。
この映画が作られたのは2006年、2年も前のことだ。今年やっと日本で公開されたのはやはり北京五輪のおかげだろう。
だがこの映画に出てくる現象のうちのいくつかは、既にアジアにいるわれわれにとっては目新しくも何ともない。冒頭の異様に広大な工場と似たようなシーンは賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の『無用』にも登場するし、三峡ダムは同じく賈樟柯の『長江哀歌(原題:三峡好人)』でもテーマになっている。中国の急激な都市化・工業化を映画にしたのは何もこの作品が最初ではない。中国のインディペンデント映画では既に何度もテーマになっている。

それでもこの映画が評価され注目されるのは、やはり監督や語り手である写真家がカナダ人、もっというなら白人で、ナレーションやモノローグが英語で語られている、つまり視点がグローバルスタンダードに近いところに設定されているからだろう。非常に皮肉なことだが、そうでもしないと届かないメッセージというものが世の中には存在する。映画には直接描かれない、人間のもっとも人間らしい業でもある。
もしかしたらこんな批判はあるいはただのいいがかりなのかもしれない。それでもいわずにはおれない。その無関心さこそが、この地球を、環境をここまで荒廃させたのではないのかと。

ぐりは個人的には、この映画もっと時間をかけてお金をかけて大規模につくってほしかったですね。中国だけじゃなくて、バーティンスキーがこれまでに撮った世界各地のいろんな風景もまとめて、『いのちの食べかた』の工業版みたいな感じにしてほしかった。中国だけじゃちょっとね。
環境音をサンプリングしたOSTがすごくかっこよかったです。CDになってたらほしいかも。

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