落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

落とすはずのない涙

2017年08月14日 | movie
『海辺の生と死』

太平洋戦争末期の奄美・カゲロウ島。
小学校教員のトエ(満島ひかり)は父(津嘉山正種)の蔵書を借りたいと訪ねてきた将校・朔中尉(永山絢斗)に心惹かれるが、朔は資材も尽きた海軍が開発した新たな特攻の任務を待つ身だった。
それはベニヤ製のモーターボート・震洋で敵艦に体当たりするという捨て身の作戦だったが・・・。
震洋の搭乗員だった作家・島尾敏雄の小説『島の果て』と妻・島尾ミホの『海辺の生と死』を原作に映画化。

戦争映画なんだけど戦争のシーンが(ほぼ)まったくないという、珍しい日本映画。
セリフがとても少なく、全編に奄美の民謡がふんだんに流れる、一種のミュージカル映画ですね。これは。
時代背景は終戦直前、舞台はあの激戦地沖縄に近い離島、主要登場人物は軍人、だけど戦闘シーンはなくて歌や音楽や踊りがたくさんでてくるという、意外性満載の作品です。

ただしやはりそこは戦時中の物語なので緊張感だけは最高です。
誰も思っていることを口に出せない。いいたいことがあってもいえない。なにもかも常に我慢に我慢の連続。
静かでのどかで緑がいっぱいで、それこそトエがいうように戦争なんてどこで起きているのか、毛ほどの現実感もない風景のもと、人々は戦時下の目に見えない緊迫感に満ち満ちた空気のなかで息を殺して暮らしている。声に出さずとも常に死は隣にいて、いつその手が背中に触れるかを待つばかりの生活。
その世界観がものすごく独特。

原作者が夫婦という時点で完全にネタバレなんだけど、実をいうとたまたま空いた時間に通りかかった映画館で偶然観たので、そういう背景も事前情報もいっさい知らずに鑑賞してしまったのが不勉強でちょっと恥ずかしい。
だから勝手にひとりでめちゃめちゃ緊張して劇場に座ってたんだけど、途中大雨のシーンでうっすら読めるよね。展開が。読めてくるとまたますます緊張する。もうこんな戦争間違いなく負ける、負けるんなら早く終わればいいのに。早く、早く、出撃命令がでない前に、一日でも早く、という朔中尉の気分にめちゃめちゃ共感する。
大学出というだけで将校になったという、単に勉強が好きなだけのふつうの若者のクールな感覚だから、共感するのも簡単です。

もともとはアイドル・ボーカリストの満島ひかりの民謡がたっぷり聴けるのが楽しい。
しかし彼女も永山絢斗もプロポーションがスゴイ。頭の小ささ、手脚の長さが異常です。ヤバい。むしろちょっと不自然なくらい。あと井之脇海がおっきくなってて驚き。
原作も機会があれば読んでみたいです。



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