落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

檻と鍵

2017年12月08日 | lecture
明治学院大学国際学部付属研究所公開セミナー「憲法が変わる(かもしれない)社会」

3回目のスピーカーは憲法学者で東京大学法学部大学院教授の石川憲治さん。
不勉強で私は著書も読んだことがなかったのだが、どうも世間では天才と呼ばれているお方らしい。最近は日本統治時代の京城帝国大学法学部を研究しておられたという。正直そんなこといわれてもさっぱりわからないのですが。
わからないなりに受講後すぐノートにまとめようと思ったんだけど、ぜんぜん時間がなくて時間が経ってしまったので、理解できて記憶に残った範囲内の備忘録を残しておく。聞き手は高橋源一郎氏。

石川さんは立憲デモクラシーの会という研究者のグループの呼びかけ人にもなっておられるそうだが、ご自身では政治的センスにぜんぜん自信がないとくりかえし口にしておられたが、それでも96条(憲法改正の条件)改正が取り沙汰ときは「このままでは憲法が壊されてしまう」と危機感を持たれ行動されたそうである。先人のように、あとから振り返って「あのときのあれがそうだったんだ」などと後悔はしたくない。まあいま何かしらしなくてはとじたばたしている人の多くがそういう気持ちなんだろうと思う。私も含めて。

Q.安倍政権がやろうとしている改憲が実際にどう生活に影響するのか。

A.まず現憲法は国民主権とうたわれているが、主権者とは至高の存在、いってみれば神のようなもののこと。神は何にも縛られない。そもそもそんなものを決めていいのか、というところを疑うべき。
国民主権=民主主義という認識になっているが、その何にも縛られないはずの主権者を縛るのが立憲主義で、96条で縛ることで既存の権利を守っている。
安倍政権は「憲法を国民に取り戻す」といったような主張をしながら、憲法を壊そうとしている。たとえば集団的自衛権を合憲と閣議決定したのは改正手続きの破壊である。

Q.立憲主義とは、国を縛っているがほんとうは国民も縛っている?
国民主権だから自分でつくった憲法は自分で壊していい?
一回決めたら変えられないのが憲法では。それを変えたら違う国になるのでは?

A.難しい議論だし、時代によって変わっていくし、実際いまも変わっている。
むしろわかりやすく説明する先生はいんちき。
たとえば絶対民主主義と先制主義は何が違うのか、立憲主義とどう違うのか。

Q.詳しく喋り出すと「まあいいや」、わからないもの=いらないもの、という風潮で専門家はきらわれる。

A.難しいから一生かけてるんだけど。

Q.みえないしさわれないのにコントロールされていて、どうしても難しくて説明しづらいのに、生活にダイレクトに結びついている。問いたやさないことが大事。

A.果たして主権者は必要なのか、ひとりひとりが考えるべき。
たとえば自分でつくったものはいつでも自分で変えていいのか。契約は自分で契約したからといって自分で変えていいものではない。
そのもやもやを、おかしいなという疑問を形にするのが法理論。

Q.去年8月8日の今上天皇のおことばについての評価を。
天皇は憲法に書いていない象徴的行為ができなくなってきたからという理由で退位に言及された。
石川さんはこのおことばを高く評価されておられる。その理由を。

A.象徴的行為で論理が一貫している。憲法には書いていないけどなんとなく共通認識としてあったものを、先行して理屈をみつけて形にされた。
退位のシステムだってもたないわけにはいかないのに、制度として存在していなかったことを指摘された。
戦後の天皇は国事行為だけを行う国家機関になったが、それ以前に象徴であることをもとめた。戦前の考え方の代替物でもあるから危険な面もあるのだが、政治的には中道路線をめざし象徴的行為で中道天皇論を確立させることで宮内庁をかためてきた。
象徴とは、この国が目指しているものをわからせるための装置。ふつうの国なら国旗や国歌にあたるもの。
国事行為や宮中祭祀は外からはみえないからそれだけで象徴にはなりえない。
今上天皇にとっての象徴的行為とは努力義務だった。代替の効かない、やりつづけなくてはならない、動けなくなったらできない、寝ていてはできない行為。だから限界があって、退位システムが必要。平和主義の象徴のための努力が、天皇にとっての答えだったのでは。
すなわち、あのおことばで、中道天皇論の形を示した。

Q.すばらしいことだと思うんだけど、説明がつきにくい。
きっと今上天皇は誰よりも憲法をよく読んでる。そして憲法を破壊しようとする人々からまもろうとしたのでは。
法律は明快な完成形ではなく隙間だらけの道具。

A.憲法にはもともと暴走装置があった。
書いてあることだけが法律じゃない。9条には書かれていないことも含めて天皇制はパフォーマンスとして成功してきた。
だからいまの改憲論議は安易すぎる。

ノートに書いたことを拾いだしてみたけど、やっぱり難しい。
石川さんの本読んでもっと勉強しなくては。


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