落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

Waterloo

2016年03月21日 | movie
『キャロル』

1950年代のニューヨーク。
百貨店店員のテレーズ(ルーニー・マーラ)はクリスマスプレゼントを買いに来た人妻キャロル(ケイト・ブランシェット)が忘れた手袋を、伝票に書かれた住所に郵送したのをきっかけに彼女と急接近する。恋人リチャード(ジェイク・レイシー)との結婚にも踏みきれないでいたテレーズだが、瞬く間にエレガントで妖艶なキャロルの魅力の虜となり・・・。
『太陽がいっぱい』や『見知らぬ乗客』で知られるパトリシア・ハイスミスの実体験に基づく小説の映画化。

大ヒット映画になった『太陽がいっぱい』も『見知らぬ乗客』も同性愛を暗示的に描いたミステリアスなミステリーとして、いまも人気の作品ですが。
この『キャロル』はそのものすばり同性愛の話です。発表当時も同性愛読者を中心にかなり人気があったらしいけど、映画化はされなかった。当時のハリウッドにはヘイズコードという倫理規定があって、同性愛はそのまま映画では描写することができなかったのだ。
この作品の映像は色彩構成も照明もクラシカルだし、登場人物の挙措動作まで50年代の映画のようなリアリティがあるけど、それはある意味でヘイズコードというメディアの自主規制による人権侵害の暗喩表現なのかもしれない。
なぜなら、この物語そのものは同性愛への差別を糾弾したり、不倫を賛美したりはしていないからだ。それ以前に、人が己の人間性を認め受け入れ、自立したうえで互いに尊重しあうことの難しさと美しさと大切さを、奇を衒うことなく淡々と静かに、しかし力強く描いている。そういう映画としての本質ではなく、倫理という名のルールで表現を縛ろうとしたヘイズコードはいまは過去のものだが、それでも人の意識の中にはまだ、差別は生きている。

終始おどおどして主体性のないテレーズを演じたルーニー・マーラには最初から最後まで超イライラさせられっぱなしでしたが、ケイト・ブランシェットは例によってものごつゴージャスでした。この人の声いいよねえ。低くてソフトでさ。ただ綺麗なんじゃなくて、なんだかイケイケドンドンな感じがかっこいい。好きな女優さんです。
メロドラマといえばメロドラマなんだけど、この二人の熱演に最後まで引っ張られてとても楽しめました。印象的な映画とまではいかないけど、力作なんじゃないでしょうか。はい。



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