はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年08月16日 18時33分09秒 | 日詠短歌

2012/7/9(月)
   新システム稼働初日。新しいものは、たいてい評判が悪い。

 峰々のうねりは今も背筋を振るうあの日も金色だった


7/10(火)
   嫌悪の一原因は、羨ましさにある。と断言するのは行き過ぎだが。

 ながすぎる夕日を巻いて銀輪の群れせまり来る青信号は


7/11(水)
   朝、赤くないアカトンボがたくさん飛んでいた。

 青銅の鏡の部屋にとじこめる光線・少女・羽音・分針


7/12(木)
   風音ばかりが耳につく日だった。

 きみだけのきみだけによるきみの待つ女王陛下 風の群がり


7/13(金)
   紺色のうねりが のみつくす日が来ても
   水平線に 君は没するなかれ
   我らは山岳の峰々となり 未来から吹く風に頭をあげよ
        (「紺色のうねりが」(『コクリコ坂から』より)

 このままがいいというならそれもよし鰆をほぐす箸先の濡れ


7/14(土)
   結婚すると綺麗になる。ことも、あるようだ。

 浜風に掘りおこされてミトンには右と左があるということ


7/15(日)
   最近気付いたのだが。
   どうやら俺は、《書く》ことが好きらしい。

 べつになにを知りたいっていうわけでなくエンターキーを打つしあわせに



一日一首

2012年08月03日 18時49分05秒 | 日詠短歌

2012/7/2(月)
   『鏡の国のアリス』が書かれたとき、アリス・プレザンス・リドルは十九歳だった。

  ひたひたと霧の寄せれば姿見のおもてにひとつ投げられる駒


7/3(火)
   冷房は、疲れる。

  ゆるゆると藍の締め木にかけられて搾りとられる月の油は


7/4(水)
   たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき
   (石を投げれば向こう岸に届きそうなのに、まったく……)
        山上憶良

 鉄橋のいくつも架かる川の面を風がみだらに塗りかえていく


7/5(木)
   『鴎外・茂吉・杢太郎――「テエベス百門」の夕映え」(岡井隆)
   文人と言われた人たちの織りなし。

 積もるとも流れるのだというものもいずれは溶けて時の在処に


7/6(金)
   ADSLが故障した。すごく不安に思った自分が、嫌だ。

 電話機に張られる糸の片方をどうかささえてください 坂で


7/7(土)
   「七月七日に降る雨は、二人の涙『催涙雨』と呼ばれます」
   「こんな梅雨時に決めた天帝はいじわるですか」
   「旧暦の七月七日は今の八月ごろだったので、いじわるではありません」
   (『日本人の知らない日本語』(蛇蔵&海野凪子 メディアファクトリー)

 河の面に砂州の産まれるようなきず一夜の雨と風のなかから


7/8(日)
   化繊の浴衣、というのも暑そうに見えるが。

 左掌に ぱしん ぱしん と水は揺れヨーヨーのゴムよじれるばかり