はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 028:おたく

2006年05月09日 20時14分59秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
遊廓の女のごとく身をかわすおたくさまには存ぜぬことと
                   ねこまた@葛城 (ねこちぐら)

  「おたく」が本来の意味で使われていて、気持ちがいいです。
  「あちきは嫌でありんす」(里言葉)の世界ですね。
  「身をかわす」ほど余裕がある「遊郭の女」というと、花魁クラス
  でしょうか。
  相手への媚びは残しつつ、冷たさと拒絶を相手に示す。
  高等技術ですが、本能的にこの技を身につけている人も、時々
  います。
  いますよねー。

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布ソファーをおたおたくんくん鳴く犬の毛並みのような月が照らせり
                    行方祐美 (やまとことのは)

  こちらは「おたく」がちょっとはずして使われています。
  「布ソファーを」「月が照ら」している。その月の説明を2・3・4句
  でしているわけですね。
  心細げな犬の毛並みのような月。
  笠がかかっているようなおぼろ月、それも半月くらいを思い浮かべ
  ます。
  不安げで、ちょっと暖かそうな月光。それに照らされるのは、やは
  り皮より布のほうが似合います。

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市町村人口動向気になるは我も一種のおたくなるべし
 西中眞二郎 (しなやかに、したたかに、無責任に…西中眞二郎雑記帳)

  知人に、「今日の琵琶湖の水位」を毎日ホームページで調べている
  人がいます。純粋な趣味として。
  主体も、仕事や生活や利害に全く関係なく、自発的に折れ線グラフ
  かなんか作っていそうです。
  マニアの意味での「おたく」というと、ちょっと不気味な雰囲気が
  ありますが、このヒトはさっぱりした性格なんじゃないかな。
  ツボにはまると、話は長そうですが。

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突き抜ける情熱持てず おたくにもなれないボクラの凍った視界
                   愛観 (ひ と ひ ら こ と ば)

  「ボクラ」のカタカナが、とても冷たく感じます。
  この歌を読んでいると、「おたく」という言葉の持つ意味は本当に
  難しいなあと思います。
  熱すぎると気味悪がられる。冷めていると蔑まれる。中庸を行こう
  とすると、調子がいいと言われる。
  考え方によれば、情熱が持てない、というのも生き方のひとつかも
  しれない。
  むしろこの歌を肯定的に読んだ自分がいました。